『悪夢は雨の夜に』
(by 魔剣士フォルガ)
土砂降りの雨が降り続いたある日の真夜中、王立歌劇団宿舎に盗賊団が押し入った
総勢50名を越える一団は、豪雨の中なら大人数でも気づかれにくく、街の衛士の警備も薄いと踏んでいた。それは間違いではなかったが、一つ重要な事を見落としていた
歌劇団員の多くが場慣れしており、実力も並ではない事である
言うまでもなく、盗賊たちはあっさりと各個撃破され捕らえられた。対して、団員に人的被害は皆無に終わった
男性陣が賊を官憲に引き渡しに行っている間、女性陣はスラストの指揮の元、物的被害の確認に動いていた
賊の足跡から侵入経路の割り出しをしていたポチリーナは、一階北西の角部屋に辿り着いた
本来は空室であるが、扉が開き、外から吹き込む風に揺れている。そして、入り口の前にはユノが立っていた
ポチリーナ「ユノさん、どうしたんでちゅか?」
ユノ「困ったわ。次の演目に出そうと思って、この部屋で飼ってた子たちが、逃げてしまったの」
ポチリーナが中を覗き込むと、窓が破られ、室内は木枠とガラスが散乱していた
ユノ「ケースは窓の真下に置いてたから、侵入された時に誤って壊されたのね」
ポチ「じゃあ、早く捜さないと! 私もお手伝いするでちゅよ」
ユノ「でも、それじゃ悪いわ」
ポチ「私もユノさん程じゃないけど、動物とお話できるんでちゅよ。任せてくださいでちゅ」
ユノ「なら、お願いしようかしら」
ポチ「それで、何を飼ってたんでちゅか?」
ユノ「カエルとナメクジを50匹ずつ」
ポチ「……え゛?」
ユノ「やっぱり無理かしら。数が多いし」
ポチ「何でそんなの飼ってたんでちゅか!?」
ユノ「もうすぐ梅雨でしょう。芸を仕込めば面白くなると思って。でも、団長は反対したのよね」
ポチ「当たり前でちゅよ!」
ユノ「カエルとナメクジだけじゃ、すぐナメクジが食べられるから、ヘビも入れて三すくみにしなきゃ駄目だ、って。だからヘビも50匹追加したわ」
ポチ「団長ってば最悪…。あ、そうじゃなくて! 早くみんなに知らせないと!」
その時、宿舎のあちこちから女性団員の悲鳴が響き渡った
ポチ「…遅かったでちゅ…」
ユノ「……こうして。外敵には難攻不落の歌劇団は、内側から脆くも崩壊したのでした」
ポチ「してません! 変なナレーション入れちゃダメでちゅ!」
-終わり-
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