<第4回>
“影苔”を手に入れることが出来たディアーネとソルレヲンは、ホリィアックスを返してもらうべく泉の精霊のもとへと急ぎます。果たして、ホリィアックスは返してもらえるのでしょうか?
ディ「さあ、泉の精霊!約束の“影苔”を持ってきたわよ!」
ディアーネが泉に向かってそう声を掛けると、光とともに美しい女性が姿を現しました。

精霊「まあ、それは確かに“影苔”です!ということは、あの森に住み着いていたオークを退治してくれたんですね!」
ソル「してませんよ。というか、無理ですって」
ソルレヲンの言葉に、泉の精霊の浮かべていた笑顔がピキッと音を立てて強張りました。
ディ「だって、約束はこの苔を取ってくることだったんだもの。余計な危険を冒すわけないじゃない」
続くディアーネの言葉に泉の精霊はヨヨヨと泉の上に崩れるように座り込んでしまいます。
精霊「“影苔”が唯一生えているところはオークが集落を作ったあの森だけ。そうと知れば必ずディアーネ姫ならオークを退治してくれると思ってたのに…」
ソル「いや、退治して欲しかったんなら素直にそう言わないと。あと、ついでにホリィアックスを先に返すべきだったかも」
ディ「そうね。ホリィアックスがあればオークの集落くらい蹴散らしてあげたのに」
精霊「でも、人間はこういった取引でもしないと願いを聞いてくれないじゃないですか」
ディ「それは偏見よ。確かに約束を破るような卑劣な輩がいないとは言わないけど、全員がそうというわけじゃないんだからね」
ソル「そもそもオーク退治をしてもらいたいのに相手の武器を取り上げても仕方ないでしょ。それなら『この斧に呪いをかけた。オークを退治しないと呪いは解けない』とか言った方がまだマシですよ」
このソルレヲンの言葉に、ポンと手を打つ泉の精霊。そして、満面の笑みを浮かべてこう言いました。
精霊「この斧には呪いがかかっています。それを解くにはオークの集落を潰し、森からオークを追い出さなければいけません!」
ソル「うわ。とってつけたように言われても全然説得力がないし。というか、こっちが言ったまんまをそのまま言われてもね……」
ディ「まあ、何でもいいからとりあえず返して」
そう言うと、ディアーネは躊躇なく泉の精霊が取り出したホリィアックスを取り返しました。
精霊「の、呪いがかかっているんですからね!?オークを追い出さなければ解けないんですからね!?」
必死に訴える泉の精霊に、ディアーネは笑顔でこう答えました。
ディ「ホリィアックスには呪いなんて効かないの。残念だけど」
精霊「そ、そんな!」
ガックリと肩を落とす泉の精霊。やはり人間は信用できない…と思ったその耳にディアーネの意外な言葉が飛び込んできました。
ディ「じゃあ、オーク退治に行くわよソルレヲン」
ソル「了解です。ロリエーンとルフィーアにも協力してもらいましょう」
ディ「結構大きな集落みたいだったし、金羊亭で協力してくれる人をもっと募りましょうか」
ソル「やれやれ…。報酬とかどうするんですか?」
ディ「私を誰だと思っているの?どーんと私に任せなさい!」
精霊「え…?どうしてオーク退治に行ってくれるんですか?」
ディ「どうしてって、困ってる人がいたら助けてあげるものでしょ?」
ソル「そういう人ですからね、ディアーネは。だから素直にお願いすればいいのにって言ったでしょう」
そう言い残し、二人は泉の精霊のもとを去りました。その後、金羊亭に集う冒険者たちとともにオークの大集落へと戦いに赴くのですが、それはまた別のお話。
〜とりあえず、完結〜
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