第23話 “宵闇の太陽は輝く"
(by 戯言士皐月)
―――魔宮を取り囲む空間の揺らぎに触れてみる
セラ「…む」
陽炎のように揺らめいているだけに見えるが、確かな圧力をもって押し返される
セラ「どうしようか?」
その問い掛けに答えたのはセラ自身…いや、セラの精神領域の中に棲む何か
セラ(?)「どうすると問われてもな…精神封鎖は解かれている。好きなようにするがいい」
精神封鎖…人間にあるまじき精神力を持つセラにシリウスが施した古代呪法。これのお陰で人並み少し上程度の精神力となった彼女に色々詰め込んだせいで精神領域が圧迫され声を失っていたのだが…
セラ「…考えて」
…それにしてもこの画、傍から見ると彼女が一人二役で喋ってるように見えてかなり恐い
セラ(?)「時間が勿体ないのだろう?選択肢は殆どないぞ」
セラ「…ウリエル…かな」
セラ(?)「起きて早々、人使いの荒い奴だ」
言葉に反して声はどことなく嬉しそう。今、セラの口を借りて喋っているモノこそ、彼女の夢に度々出てきた白い人影の正体、セラの精神が内包する十二神将序列2番の聖霊・ガブリエル(愛称がぶりん)
セラ「…汝、声なき口で唄う。自由の唄…」
ガブリエル「汝、口なき声で唄うは勝利の唄」
セラ「汝が意、我が力となりて…《同位多重意識体(ドッペルゲンガ-)》起動」
ガブリエル「意識体並列起動(リンク・モ-ドβ)確認…何時でもいけるぞ」
セラ「ん…」
短く答え、遥か後方で風の舞う音を聞きながら両手を天にかざす…
セラ「幸いなれ義の天使。大地の総ての生物は汝が支配をいと喜びたるものなり…されば、ありとあらゆる災い我に近付かざるべし。我、何処に居れど聖なる天使に守護されたる者故に…」
立体展開された多層の魔法円陣が彼女を包み込む…地上に平面構成される通常の魔法円陣より強力に構成、圧縮された魔力を行使する際の結界である
セラ「斑の衣を纏う者よ、AGLA…来たれ太陽の統率者…《神の炎(ウリエル)》」声に応じるかのように、かざした手に火球が出現する。火球は少しずつ、だが確実に熱量と質量を増大させながら成長していく
《神の炎》…古代に信仰された神に仕えたと言われる聖なる者の力を行使する術式。司る属性は見た目通りの火と、聖霊が本来持っていたとされる地。最大の欠点は構成起動から攻撃発動までのタイムラグが異常に長いこと
…成長した炎はまさしく太陽。宵闇に突如出現した太陽は紅月と共に廃墟を明るく照らしだす―――後日、「災厄の日の夜中に突然、太陽が現れた」と王宮以下の機関に問い合わせが殺到する―――と、魔宮を覆う蜃気楼の向こう側に何かが現れる…蝙の翼の黒い影…そんなものはお構いなしにセラは膨張した太陽を解き放つ…(……ぉぉぉぉぉん)人間の可聴域を遥かにこえた音が振動となって鼓膜を揺るがす…放った太陽は蜃気楼のように見えていた空間の歪みはもとより魔宮本体の壁面、魔宮内に構成されていた空間歪曲の一部を、現れたばかりの影もろとも吹き飛ばしていた
ガブリエル「まさか…これほどとは」
人間の肉という枷を受けても(魔力容量強化式を使用したとはいえ)これだけの力が発揮できる…自分の宿主が持つ人並外れた能力に彼女は片手で数える程しか覚えたことのない恐怖を感じた
セラは躊躇いを微塵も見せずに空けた穴に向かっていった―――
ガブリエル「なぁ?何故に一番高いあそこに当りをつけた?根拠があるなら聞きたい」
セラ「…何とかと煙は高いところが好き」
真顔で答える彼女の後ろで空間の歪みが再構成されていった
セラ「…ぴくち」
ガブリエル「ん?風邪か?」
セラ「…寒い」
<続く>
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