第22話 “現世の獄に旋風は舞い"
(by 戯言士皐月)―――魔宮上空まで到達した憐とセラ…夜闇にそびえ立つ塔とそれを取り囲む幾つかの建造物が蜃気楼のようにゆらめいて見える
憐「空間を捻曲げておるのか…入口を探すのもひと苦労じゃな…」
セラ「…そんな時間くれたらいいのにね」
憐「全くじゃ…」
二人して盛大な溜息をつく。彼女達の周りには何時の間に湧いて出たのか、無数の影がゆらめいていた

憐「どうしたものかな…」
セラ「相手してて…先行くから」
憐「(溜息)…大丈夫なのじゃな?」
無言で頷くセラ
憐「妾のぶんは残しておかんで良いぞ」
セラ「ん」
短く答えて魔宮に更に接近していった―――

憐「さて、と。妾の力で傷つく友もおらんし…少々本気を出させて貰うぞ?」
そう言って袖から左右6枚ずつ計12枚の札を取り出すと、それを天に投げた
憐「青龍、朱雀、白虎、玄武、勾陳、六合、騰蛇、貴人、天后、太陰、太裳、天空、出番じゃ!」
声に呼応して札は12色の風になり影に襲いかかる。風がすれ違った影は呆気なく消えていく…それでも影は次々と現れ減らない
憐「ふむ。中々にやりおる。昔、暇潰しに覚えたやつ使ってみようかの…どれ程の力か…ふふふ…楽しみじゃ」
新しい玩具を貰った子供のように笑ったのも束の間、笑顔が消え真面目な表情が浮かぶ。手には1枚の札があった。先程のものよりふた回りほど大きい。憐の声が響く

憐「普く諸金剛に帰依し奉る暴悪相忿怒をなせる金剛尊よ。願わくば我が敵を尽く討ち滅ぼし給え…ナウマク・サマンダ・バサラダン・カン!」
札が燃え、代わりに現れたのは金色に輝く三叉戟…
憐「…むぅ…セラの四天王みたいなの期待してたのにの…」
そう言いながらも振るう
(がご!)
地面が横凪ぎに抉られ、憐と地上の間にいた影の尽くが金色の光に灼かれ消滅する。影が怯む。が、一番驚いているのは使った本人だったりする
憐「…はぁぁ?いや、これは…いくら何でも…のぅ?」
本日何度目かの盛大な溜息をつきながら三叉戟を送還する。いくら街が破壊されていても自分の手で止めを刺すのは流石に躊躇われる。これを勝機と見たのか幾つかの影が憐に殺到する。
しかし…(べしべしっ!)水の塊に撃ち抜かれ消滅する影…何時生み出したのか憐の周りには沢山の水の塊が漂っていた

憐「誰じゃったかの…式神使いは本体を狙えなぞと宣っておったのは…それでは妾が弱いみたいではないか…」
愚痴を零している内に影の増援は止まり、12色の風…憐の十二神将…によって少しずつその数を減らしはじめていた
(べちっ!)
更に一つ、影が水弾に討たれる。と、虚空から12色の風へ向かい黒い触手が伸びる…疾い!回避は間に合わない

憐「戻れ!」一瞬の差で風を送還するが一つが触手に貫かれる
憐「痛っ」額から血が流れる。式神は使用者と精神的、肉体的に同調しており、式が傷つくとそれが使用者に跳ね返ってくる。これを「返りの風」という。返りの風の大きさは式の強さに比例する。今回は破壊された式が一つだったから良かったものの、12式全てとか先刻の三叉戟…不動…を折られたりしたら、結構ぞっとしない結果になったであろう
触手の主が姿を顕す。蝙のような翼を持ったその姿は神無達の戦った炎皇に酷似していた。が、憐はそんな容姿などもう見ていなかった

憐「貴様…妾の顔に…」
怒りの声と共に周囲の温度が急激に下がる。大気中の水分が凍結し、氷の粒が舞う。憐を取り囲む水塊も凍結しながら彼女の手に集まり…身の丈の2倍を裕に越える刄を形作った
憐「ルルイエの氷刃…傷の礼じゃ…受け取るがよいわ」
底冷えするような冷たい声が紅い月の夜空にこだました…

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