第21話 “空に星輝きて"
(by 戯言士皐月)
―――魔宮に赴く途中、目の前に見えた影に彼女は声をかけた
憐「セラ!こんなところで何をしておる?危ないから帰っておとなしくしておれ」
四足の獣…騏麟…に乗った人影が振り向く
憐「居ても立ってもおれんのは解る…じゃがな…」
セラ「がぶりんが…起きたの」
憐の言葉を遮ってセラが言葉を発した
憐「なっ!」
予想外の出来事に絶句する…が、それも束の間。セラが声を失ったそもそもの理由を知り、彼女の言ったことに心当たりのある憐は怒りに声を震わせて叫んだ
憐「くぉぉらぁシリウスぅ!これはどういうことじゃぁ!」
空気がびりびりと震え、足下の瓦礫ががらがら崩れる
セラ「…五月蝿ぃ」
耳を押さえて呟くセラ…
声「そんなに叫ばんでも聞こえる」
夜闇に浮かぶ紅月が一瞬揺らめき、シリウスが現れる
憐「これが叫ばずおれるか。何故奴を解放したのじゃ?」
シリウス「何を勘違いしているか知らんが、私はまだ何もしてないぞ」
セラ「…まだ?」
憐「そんな筈なかろう!お主の古代呪法(エンシェントスペル)が破られたとでも言うのか?」
シリウス「遺憾だが…そうらしい。おそらくは魔宮の発する気に呼応したのだろう」
憐「それを信じろと?」
シリウス「…我が父の名に誓って」
ふん…と面白くなさそうに顔を背け一人ごちる
憐「だから妾は反対したのじゃ!詳しく分からぬモノを人に降ろすなど…」
セラ「ぁ…ごまかした」
シリウス「…今更だな。それより今はアレの処遇だろう?」
彼方に見える魔宮を視線で差し言葉を続ける
シリウス「先程、ウルの影の面々の侵入を確認した」
憐「秘石は?」
シリウス「彼女達の手のなかに…」
憐「な・ぜ・に!止めんかった?それでは貴奴等の思う壺ではないか!」
セラ「…はい、騏麟、耳栓」
シリウス「神無もアルトもいるのだ。そう簡単にもいくまい」
アルトの名前にセラの肩がぴくん!と跳ねる
セラ「アルト、あそこに…いるの?」
シリウスが頷くやいなや騏麟を魔宮に向けて走らせる
憐「あ!こら!…ぅぅ…何故に妾の周りの連中はこうも…」
シリウス「お前も大して変わらんぞ」
取り敢えず殴っておく
憐「時に…何故セラは黙示天使が目覚めて声を取り戻した?普通に考えれば精神を乗っ取られてもおかしくないのじゃろう?」
シリウス「眠らせている状態の神霊は彼女の精神領域中に圧縮封印されているのだ。奴等の容量が大きすぎてセラ自身の領域が圧迫され人間本来の機能を抑制されるに至った。ここまでは13年前に調べがついている…ここからは私見になるのだがな。黙示天使はセラの領域に存在空間を“確保"しているのではなく、セラの意識と“共存"していると考えられる…」
半眼で睨む憐からシリウスは自然に視線をそらす。それより今の話、共存と言えば聞こえはいいが…
憐「それは混ざりかけている、というのではないか?」
シリウス「…そう言えなくもない」
もう一発殴る
シリウス「心配ない、魔宮に喚ばれて“もう一方"が起きない限りは、な」
憐「…もういい、疲れたわ」
セラを追って飛び立つ憐、残されたシリウス…
シリウス「あんな“我"の強い連中が混ざりあうことなどありえんよ。頭の中は五月蝿いだろうがな」
―――セラに追い付いた憐は…
憐「妾とシリウスの話に茶々ばかり入れおって。お主のことじゃぞ?自覚はあるのか?うん?」
取り敢えず頬をつねっておく
セラ(?)「うゆひゃい、りゃまえお(五月蝿い、黙れよ)」
セラの口から先刻までと別の、凛とした、威厳のある…というには幼い(し、頬をつねられたまま喋ってるから何か可愛い)…声が出る
憐「そうじゃった…こやつら、揃いも揃って目上への態度がなってない奴等ばかりじゃった…」
頭をかかえて唸る。そんなのお構いなしに、それは話を続ける
セラ(?)「でだ。セラはあの気持ち悪い所に行きたいらしいんだが?」
憐「ああ、“だいじなアルトのぴんち"という奴じゃ。もう止める気も失せた…セラを宜しく頼むぞ、“がぶりん"」
横についてきながらも、あまり好きではない愛称で呼ばれ「ぐぬぬ」と唸るセラの体を借りたそれを笑顔で見ながら彼女には聞こえないよう…
憐「セラを“喰う"たら妾は全力でお主の敵に回るぞ」
…そう呟いた
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