intermission
《永遠に続く明日を信じて》
by 皐月
自分を呼ぶ声に闇の底から意識が浮き上がるのを感じ、ゆっくりと目を開ける
憐「神無…全く、お主は無茶しか出来ぬのか…」
呆れながらも心の底から心配そうな雰囲気を消しきれてない声。彼女の目にはうっすらと涙さえ浮かんでいた
そしてその後ろに立つ長身はシリウス
身を起こそうと肩に力を入れた途端、両腕に激しい激痛
憐「あ、こら馬鹿者。まだ動くな」
押し戻してくる小さな力に逆らわずに身を横たえる
そこにシリウスの声が掛かった
シリウス「私は“生きる事"に絶望していない者は生者であると思っている。それが如何なる存在であっても、だ。意味は…解るな?」
黙って頷く
シリウス「なら、良い。刄は力でしかない。そこに意味を見出だすのは意志だ。《滅びの獄炎》、そのまま預けよう」
神無「…はい。“世界の滅び"ではなく、姫様のいる…姉様の好きだったこの世界の敵の滅びの為に」
その言葉に満足そうに頷くシリウス
シリウス「では、こちらは任せる。どうやら宿舎の方に招かざる客があるようだ」こちらが答える前にシリウスは溶けるようにその場から消えた
―――――
憐「あとはアルトじゃな。全く、あんな小物に肩入れしおってからに…」
神無「アルト様が交わした契約の内容…ご存じなのですか?」
その言葉に憐は意外そうな顔をした
憐「何じゃ?知らされてないのか?…あのな…」
憐が次々と語る内容を聞くうちに次第に顔が強ばるのを自覚する
神無「そんな…それでは既にアルト様が影と戦う必要なんてないではないですか…早く止めないと…っ痛っ!」
無理矢理起こそうとした身体にまた激痛が襲ってくる
憐「馬鹿者。そんな身体で何をしようと言うのじゃ…符を貸せ」
言うが早いか胸元から二枚の符を掠め取る
憐は額に符を当て一瞬念じ、それを投げつつ叫ぶ
憐「久遠!刹那!」
符は激しく煙を立てながら燃える。煙が晴れたところに立っていたのは双子の少女
久遠「お仕事了解!行ってきます」
念によって顕現する彼女達に、いちいち言葉による命令は必要ない。顕現された時点での主人の意志を読取り、返事を待たず片割れは奥に向かって走りだした
刹那「…ぁ、姉さん…忘れ物」
もう片方も床に転がる聖鎌を抱えると、憐と神無に向かい頷き、きびすを返す
神無「刹那…」
刹那は足を止めて振り返る。思わず呼び止めたが、やはりこれだけはきちんと言葉で伝えたいのだ
神無「絶対に生きて還りなさい」
刹那「貴方は貴方の大切なものをお守りください。貴方とセラ様は私達がお守り致します…必ず」
いつも殆ど表情を出さない彼女にしては、珍しく柔らかな笑顔を浮かべてそう答えた
その横から憐がにやけながら横槍をいれる
憐「ぬ?刹那。アルトはお守りせんのか?」
途端に刹那の笑顔が引きつり蒸気でも出そうな勢いで顔を真っ赤にしたかと思うと、慌てた動作でお辞儀をして駆けていった
神無「姫様…あまり刹那をいじめないで下さい」
憐「…むぅ…どうせなら奴も“ふぁんくらぶ"に入れば良いものを」
神無「姫様…アルト様のファンクラブ勝手に作って追い回しているという噂…本当だったのですか?」
少し呆れ気味の質問に誇った声が返ってきた
憐「ふっ…他の“にわかふぁん"共と一緒にするな。妾の“アルトすとおかぁ歴"は13年ぞ?」
神無「…ぞ…って姫様、そんな誇られても…ストーカーは犯罪ですよ…」
思わず嘆息がもれる
暫らくして、まだ力の入らない身体に何かの重みを感じた。見ると憐が覆いかぶさってきていた
顔を胸にうずめたまま先程とは打って変わって甘えた声で呟く
憐「倒れて動かないお主を見たときは辛かった。また妾は一人になってしまうのかと思うと怖かった。お主が“こちら側"に絶望していない、“こちら側"に残ると言ってくれた時、凄く嬉しかった。神無…これからも、共に居てくれるか?」
神無「…姫様?照れておられるのですか?」
優しく頭を撫でながらの言葉に「違うわ馬鹿者」と返ってきた
あくまで顔を上げずに
その姿に微笑み、頭を撫でるのを続けながら言う
神無「…姫様がこの世界に在る限り、姫様が私を必要と仰る限り、私は貴方様の傍で永遠に往きましょう…」
第33
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