『戦乙女が送る聖夜の奇跡』

(by 来刻龍弥)

【前編】

例に因って……かは、ともかく、間借りしている家のリビングで俺達のやりとりから始まった
「ねぇお兄ちゃん、今年のクリスマス・イブは皆でパ-ティ-でしょう?」
フィアラは兄である俺に聞く
しかし俺は
「え、いや、すまん。その日は別の用事がある」
と、言った
「そう…なの?」
寂しそうな顔をするフィアラ。つい、情に駆られるがここは堪えて
「ああ。だからザウエル達と一緒に楽しんでくれ」
と、なだめるような感じで言う。だがフィアラは
「何でその日に限って用事があるの? 前々から知っていたじゃない。それに何の用事?」
切り返してきた

「と、とにかく用事は用事だ。すまんが解ってくれ」
「私、お兄ちゃんと一緒じゃなきゃ、嫌」
「あのなぁ、我が儘言っても駄目だ」
「お小遣減らしても良いの?」
「ぐ……別に構わん」
観念したのか、黙るフィアラ
少しの沈黙の後……
「耳、貸して」
そう言われ、素直に耳を近付ける俺
「お…」
「お?」
「お兄ちゃんの馬鹿ぁ!!」
ダッダッダ……バタン!
耳の傍で思いっきり怒鳴り、そのまま家を出た
その大きな声の直撃を喰らった俺は
「ぐぁ…あんの馬鹿妹…」
耳鳴りする耳を押さえ、呻いた

一週間後。クリスマス・イブを迎える二日前
食堂『銀聖樹』にて
「で、一週間も口を聞いてナイと?」
フィアラは堪り兼ねて、ターマラに事の顛末を話し、相談していた
「だって、私悪くない」
「それもそうでしょう。ですが、大切になさっている貴女を差し置いて用事を優先…それを貴女には言いたくない。不思議な話、気になりますね」
「うん」
そこへ
「何、深刻そうな話をしてんの?」
話をぶち壊しそうな男、スィンが現れた
「誰だ、話をぶち壊しそうな男って、言った奴は」
「気のせいです」
「あ、そう。ところで、何の話をしてんだ?」
ターマラ達は、スィンにその話をする
「ふぅん。そういや、さっき一人で剣を片手にぶつぶつ話している所を見たんだよ。嫌われて壊れたか?」
その話に青ざめるフィアラ。しかしターマラは
「多分違います」
冷静に答えた
「じゃあ何?」
フィアラは聞く
「そこまでは解りかねますが、気になるなら、兄の行動を調べてみては?」
「…それも面白そうだが」
スィンは何かを考える様な物言いで答える
「そうだ、フィアちゃん。ティア達が新曲の事で話があるってよ」
「いっけない、忘れてた!ターマラさん、ありがとう!」
言うなり、猛スピ-ドでこの場から離れる

残った二人は呆然と見ていたが
「なぁ」
スィンが口を開いた
「本当はシグがフィアラに言いたくないのか。何か知っているんじゃないのか?」
そのスィンの問いに
「さあ?」
と、答えるターマラ
「まぁ、良いけど。今からさ、酒飲みに行かない?」スィンの誘いにターマラは
「お断りします」
丁重に断った

<続く>

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