『戦乙女が送る聖夜の奇跡』
【中編】
(by 来刻龍弥)
そしてクリスマス・イブ当日
劇団の仕事が終わった後
「シグ、とうとう変態になりましたか?」
俺に持ち掛けられた相談を聞いて、神無が口にした台詞だった
「神無、違う…これは用事の相手がその恰好で来てくれって、言われたんだ」
一応、冷静を保ちながら言った
「誰かとまでは聞きませんが……そう言えば、あの時、声が自然と変わりましたけど、あれは何故です?」
「…昔、亡き恋人に掛けられた声変わりの魔法が、変な形で依存しているせいだろう」
「大変ですね-」
他人事の様に言う神無。…当たり前だが
「とにかくお願いして良いか?」
「良いですよ」
……一時間後
「シグ…新春隠し芸大会までは、後一週間も先ですよ」
俺…いえ、私の女装した姿を見て、ザウエルが口にした言葉だった。…失礼な。
「ほっといて下さい。とにかく、後は任せましたから…それとザウにシリウス、ハメは外し過ぎないように」
そう私は釘を刺した。今の私の声と仕草では、説得力はないけど
「大丈夫だ、きっとな」
シリウスは真面目な顔で答えるが、少し信用出来ない
「本当かしら?…じゃあ、行ってきます」
そう言って、私は出掛けた
……そして
「お待たせ」
私は広場で待っていた女性に声を掛けた
その女性は、青く長い髪に黒い瞳の少し大きな目を持っており、童顔にも大人の顔にも見える、不思議な雰囲気をした女性だった
「そんなに待っていないわよ。しかし…ふふ…久々に見たけど似合うわね」
「はぁ……もう」
私は二日前に剣を媒体にして彼女と話し合っていた時、うっかりと女装騒動の件をしまった。こればかりは、彼女のお茶目な心に火をつけてしまったみたいで、このような結果になった
「この様な形で逢うのはちょっと嫌だったけど…」
「気にしない♪さ、行きましょうか」
「ええ」
と、言いかけたところで
「お兄ちゃん…」
私達に話し掛けて来たのは、フィアラだった
「来て…しまったの?」
動揺を抑えながらもフィアラに聞く。
「誰、この人。私の知っている懐かしい面影を持った人……」
フィアラは私に聞き返した。
「私の…友人よ」
「へぇ…どのような人?」
「話すと長くなるからまた…」
「今すぐ!」
フィアラは何故か怒りながら言う。
これでは、彼女との数少ない時間が潰されてしまう。そこで
「…あ、あんなところに人気アーティストの『ツヴァイハンダ-』がゲリラライブをしてるわ!」
私はあさっての方向に指を差し、叫んだ
「え!?何処何処!」
見え透いた嘘に容易に引っ掛かる妹。情けないと思いつつ、私達はその場から逃走した
「ああっ!?ちょっとぉ!」
叫ぶ妹の声を聞かない事にした
<続く>
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