『戦乙女が送る聖夜の奇跡』
【後編】
(by 来刻龍弥)
「……もう追ってこないみたいね」
私はフィアラが来ない事を確認して漸く足を止めた
「妹に対して……失礼じゃない?」
彼女は私に言う
「……でも君も知っているでしょ?あの子は…」
そこで彼女はそっと私の唇に指を当てて…
「妹は……妹でしょ?」
と、言う
「……そうよ、私の大好きな妹なんだから」
「ふふ……その辺は変わらないみたい」
そんな時
「あ-っ!!」
「……まさか」
私が振り向くとそこには、何故かサンタの恰好をしたアリル・イン・カーソンが居た
その格好に疑問を抱いた瞬間に
「シグ様っ♪」
抱き着いた
「何するのよ-…」
「その娘……シギュンの彼女?」
それを見ていた彼女は、いけしゃあしゃあと小指を立てて言った
「はいっ、私、シグ様の恋人…」
「断じて違いますっ」
即答で否定する私
「酷いです……ところで、隣の方は?」
「友達よ。それじゃ用事があるから……」
「待って下さい」
この場を乗り切ろうと思ったけど、すぐに腕を掴まれる
「そのご友人様にある質問をしたいのですが、駄目ですか?」
と、少し迫力を帯びた表情で迫るアリル
時間無いのに……仕方ないわね-…
「……アリル?」
と、言ってにっこり微笑む
「はい?」
彼女はキョトンとした表情で私を見た
その瞬間……
私はアリルのおでこにキスをした
「!?」
私のその行動に驚いたのか、顔を紅くしながらへなへなと崩れ落ちる様に座り込むアリル
「これで許して……ね♪」
軽くウインクをして、その場から走り去った
その後……私達は近くの酒場に入った
そこで軽く飲み物を注文する
「……しかし、この男どもの視線は何とかならないのかしら?」
「それは貴方が魅力があるからよ」
「君の方だと思うけど?」
そう言って、出されたカクテルを口に含む
「ところで、口説くの板についてきたんじゃない?」
その一言に口から吹き出しそうになる
「もう、大丈夫?」
「だって……」
「それは貴方が先ほどの子を黙らせるのにあの手を使うから」
「……嫉妬してる?」
「してないわよ」
そう言うと、彼女はふいっとそっぽを向いた
そこに
「……シギュンさん。前から貴女のファンでした!付き合って下さい!」
「はあ?」
いきなりの出来事に聞き返す私、ところが
「わしもじゃあっ!」
「オレもぉ!」
「ふふ……貴方が男だって知っていてもリビド-には、勝てないのです!!」
「ぼかぁ、ぼかぁ、もぉ!!」
何やら目付きがヤバイ男達に囲まれる
「……ちょ、ちょっと」
「……どうしようか?」
この状況を何故か楽しんでいる彼女が私に聞く
「勿論逃げる……わよ」
「じゃあ、決定」
言うなり、彼女は席を立って、私の腕を持つと
「では皆様、ごきげんよう♪」
物凄いスピ-ドで店から出た
ぶつかった男達は訳も分からずに吹っ飛ばされる
「逃げたぞ!!」
叫び声が聞こえたがすぐに聞こえない場所まで離れてしまった
「ふふ、楽しかったぁ」
「……楽しくなかった」
今居るのは、何処かの屋根の上だった
どうやら彼女の使った魔法は飛翔系みたいだったらしい……系列は良く分からないけど
「やっぱり人気あるわね、その姿は」
「……もう二度としたくないわよ」
「じゃあ、これはお詫び」
「?」
私が彼女を見た瞬間
唇が触れ合った
そして
「じゃあ、私。帰らないと……」
彼女はそう言った
「……ブリュンヒルデ」
私は漸く彼女の名前を口にした
「もう、漸く呼んでくれたわね」
「怖かった……これは夢じゃないのかって、だから呼べなかった」
「そんな事ないわよ」
「もう……逢わない方が、良いの?」
「……また逢えるわ、きっとね」
「……」
「あとね」
「何よ?」
「フィアラ、泣かせたら駄目よ?」
「ん……」
「皆の元に帰ったら皆で空を見てよ?」
「……空を?」
「そうよ、じゃあね♪」
「ちょ……」
言うなりその場から私が何処かへ飛ばされる
……気がつけば
そこはクレセントの玄関だった
「空を?」
何故空をなのだろう?
しかし、その考えはすぐに吹き飛ぶ
何故ならば
「をい」
そこは酔っ払い達の饗宴場だったからだ
良く見たらフィアラも酔い潰れていた
「……フィアラまで……」
シリウスは素知らぬふりをしており、ザウエルは剣とクラフルで飲み比べをしていた所為か、潰れている
「シーリーウースーぅ?」
「私の所為ではないな、強いて言うなら、皆の責任」
「……もう、良いわ」
「ところで。今日は雪、降りそうに無かったのだが……誰かの力かな?」
そこで窓から空を見る、確かに雪が降っていた
「……この事を言っていたのか」
一人呟く
これは、彼女が私達にくれたプレゼントだったのかも知れない
しかし……
惜しむらくは、この状況では雪は皆で見れない事……かしらね
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