『過ぎ去りし日の想ひ出』

(by ヒュ-クス)

ティーラウンジにフィアラ、ティアリース、アミアン、舞が集まってお茶を飲みながら談笑していた
フィアラ「舞さんと剣(ツルギ)さんって、何時出逢って、どういう経緯で許婚になったんですか?」
ティアリース「あ、それは私達も知りたいです!」
アミアン「うん!」
舞「え-と、そうですねぇ……あれは、私が幼少の頃です。兄様がお爺様に連れられて、本家である私の実家に来られたんですが…その時、兄様ったら、一目惚れしたらしく、唐突に結婚の約束までしてくれて…すっごく嬉しかったのを覚えてます」
ティアリース「えっ、あのツルギさんが…」
アミアン「今からは、想像出来ないなぁ」
一同「ねぇ-(笑)」

4人が盛り上がっている所へ、ツルギが割って入って来た
ツルギ「ちょっと待てェ-!何、出鱈目な話をしてるんだっ!」
舞「あ、兄様」
フィアラ「え-、違うんですかぁ?」
アミアン「じゃ、本当の所はどうなん?」
ツルギ「あ-…それは…」
ティアリース「話して貰えないと、舞さんの話を信じちゃいますよ?」
ツルギ「くぅ…分かったよ…ん-、あれは12年前に、修業の一環で本家を訪ねた時の話だ…」

―――――――――
《12年前》
巌(舞の父)「父さん、その子が?」
由庵(舞の祖父)「うむ。故あって、一月程預かる事になった、遠縁のツルギ君じゃ」
ツルギ(少年)「…宜しくお願いします」
無愛想な口調ながらも挨拶をするツルギ
由庵「まぁ、少々気難しい所もあるが…良い眼をしとるじゃろ?」
巌「はぁ…そうですね…」
由庵「ほれ、舞も父親の影に隠れておらんで挨拶しなさい」
舞(少女)「…初めまして…舞と申します」
恐る恐る、小声で挨拶する
ツルギ「…宜しく」
由庵「すまんのぅ、ツルギ君。どうも、舞は人見知りしておる様じゃ」
ツルギ「…いえ」
由庵「ほっほっほっ…まぁ、仲良くするのじゃぞ」
巌「ところで、父さん。社(やしろ)の方に参拝客が詣られているのですが」
由庵「そうか。では、ツルギ君…暫くは自由にして構わんでの」
ツルギ「…はい、失礼します」

ツルギ「………」
(SE=ブン…ブン…)素振りをしている最中、気配に気付くツルギ
ツルギ「…隠れてないで出て来たら?」
(SE=ガサッ)草が揺れるが、誰も出て来ない
ツルギ「…ふぅ(溜息)…恐がらなくて良いから」
(SE=ガサガサ)草を掻き分け漸く出て来る舞
舞「あ、あの…」
ツルギ「…何か用?」
舞「わ、私…不躾ではありますが、お願いを聞いて戴きたくて…」
ツルギ「…何?」
舞「あの…宜しければ、私の兄様になって戴けませんか?」
ツルギ「…何故?」
舞「私、兄が居らず…憧れておりまして…」
ツルギ「…(思案中)…まぁ、いいよ」
舞「(嬉)あの、拝見させて貰っても宜しいでしょうか?」
ツルギ「…お好きにどうぞ」
暫くツルギの修業を眺める舞
ツルギ「…観ているだけで、楽しい?」
舞「はい!…兄様の方こそ、毎日ではお辛くは無いのですか?」
ツルギ「…別に。剣術の腕が上がるのは楽しいから」

数日後、舞はその日もツルギの修業を見学をしていた
舞「兄様、そろそろ昼食に致しませんか?」
ツルギ「そうだね」
舞「あの…お口に合うか解りませんが、お弁当を作ってみました」
ツルギ「ありがとう。戴くよ」
舞「あの…如何でしょうか?」
ツルギ「ん…旨い」
舞「ありがとうございます!」
舞が話し、ツルギが相槌を打ちながら食事が済んだ
ツルギ「ご馳走様」
舞「御粗末様でした」
ツルギ「さて…続きといきますか」
舞「兄様、食事後に直ぐ動いてしまっては…」
ツルギ「大丈夫…軽く済ますから」

修業を再開しようとした時…
(SE=ガサッ)草むらから熊が現れた
熊「グォォォォゥッ!」
舞「きゃぁぁぁっ!」
ツルギ「えっ…!」
熊「グルルル…」
熊は除々に舞へと近付いていった
舞「い、い…や…こない…で…」
ツルギ「舞ちゃん!ゆっくりと後退して」
舞「駄…目…動け…ま…せん…」
ツルギ「くっ…」
(SE=ズザザ-ッ)熊と舞の間に割って入り、木刀を構える
熊「グォ…」
ツルギ「僕が相手だっ!」
熊「グァォォゥッ!」
熊は雄叫びを上げ、立ち上がった
熊「ガルゥァァッ!」(SE=ブゥォンッ!)
鋭い爪が振り下ろされる
ツルギ「痛ぅ…!」
回避しきれず、爪が擦り左肩に傷を負う
舞「兄様!」
ツルギ「まだっ!」
熊「ガルルルッ…」
再び爪が振り下ろされ様とした
ツルギ「させないっ…やぁっ!」(SE=ガツッ)
熊「ガウッ」
振り下ろされてきた熊の両腕を上方へ弾き、腹部をがら空きにさせ、懐へ踏み込みながら鋭い突きを入れる
ツルギ「たぁっ!」(SE=ドンッ)
熊「ギャウッ」
熊は腹部の痛みに、思わずその身を屈めてしまう
ツルギ「これでっ!」(SE=バキンッ)
熊「グギャゥッ」
近付いた熊の頭部に渾身の力を込めて木刀を叩き込むと、熊は倒れ込んだ(SE=ズドォォォン)

ツルギ「ハァ…ハァ…ハァ…」
舞「兄様、お怪我を…」
ツルギ「大した事ないから…」
舞「お待ち下さい。今、治療致します」
患部に手を翳すと、暖かい光が包み込み傷が癒えていく
ツルギ「凄い…」
舞「私には、この程度の事しか出来ませんから」
傷の治療が終わった頃…
由庵「何じゃ、先程の悲鳴は!?」
巌「父さん、こっちの様です!」
舞「お爺様、父様!」
厳「これは…舞、無事か!?」
由庵「この熊は…ツルギ君、お主が倒したのか?」
ツルギ「あ…はい…」
熊との闘いの様子を二人は話す
由庵「そうか…(むぅ…未だ基本の型しか教えておらん聞いておったのだが。これも天賦の才なのか…)」
厳「とにかく…この熊は持ち帰って熊鍋にするとして…今日はこれ位にして帰りなさい」
ツルギ・舞「はい」

いよいよツルギが、帰国を翌日に控えた日
由庵「そうか…もう、一月が経つのか。寂しくなるのぉ」
(SE=ガタンッ…パタパタパタッ)廊下から物音がした後、走り去る足音がした
由庵「舞じゃな…ツルギ君、すまんが追い掛けて慰めてやってくれんかの」
ツルギ「あ、はい…失礼します」
屋敷を飛び出た舞を、毎日修業していた森で発見する
ツルギ「…舞ちゃん…」
舞「(泣)ひっく…申し訳…ござい…ません…理解…はしていたのですが…やはり…ひっく…逢えなくなると…思うと…ひっく…寂しく…なってしまって…」
ツルギ「(困)…えっと…今は帰るけど、修業頑張って、ずっと君を護れる位に強くなるから…泣き止んでくれないかな?」
舞「ひっく…それは、将来結婚して戴けると言う事ですか?」
ツルギ「…へ?」
舞「でしたら、約束して戴けますか?」
ツルギ「ぁ…ぃゃ…」
舞「して…戴けない…のですか?(涙)」
ツルギ「ぅ…分かりました…約束します」
舞「ありがとうございます!(嬉)」
ツルギ「…(やれやれ)ところで、教えて貰いたいんだけど」
舞「何でしょう?」
ツルギ「何故、結婚なのかな?」
舞「ずっと護って戴けるとおっしゃいました」
ツルギ「うん…言ったな…」
舞「ですから、一生兄様のお傍に居られるのかと」
ツルギ「なるほど…」
舞「私、この事をお爺様に話して来ます!」
嬉しさのあまり走って屋敷に戻る舞
ツルギ「あ、待って…一緒に行くから!」

由庵翁に経緯を話して聞かす
由庵「そうか、そんな事に…しかし、難しくないかのぉ…巫女継承者としては」
舞「無理…なのでしょうか(涙)」
由庵「あ、いや(汗)と、ところで!この話…巌には話したのか?」
舞「いえ、父様には未だ…」
由庵「そうか…あ奴は、舞に溺愛している節もあるしの。話すのは、もう暫く経ってからの方がよかろう」
舞「はい…(哀)」

翌日…
ツルギ「それでは、長い間お世話になりました」
舞「兄様、またお逢いできる日を心よりお待ちしております。それと…お約束、忘れないで下さいね」
巌「約束?何だ、それは?」由庵「あ-、それは…ほれ、あれじゃ!今度来る時は、何か土産を持って来て欲しいと言う話じゃ!」
巌「はぁ…そうですか?」
舞「お元気で…」
―――――――――

ツルギ「…と、まぁ、舞の実家を後にしたんだが…」
舞「兄様ったら、その後遊びに来てくれないんですよ」
アミアン「え-っ!酷いなぁ」
ティアリース「ツルギさん、それはちょっとないんじゃないですか?」
フィアラ「見損ないました」
ザウエル「何と!そんな人だったんですか…」
スラスト「全く…薄情だねぇ」
ツルギ「皆…何時の間に?」
シリウス「偶々通り掛かっただけですけどね。それで、どういうつもりだったんです?」
ツルギ「ぃゃ、こっちにも家庭の事情と言う物が…でも、まめに手紙は書いていました!」
一同「ふ--ん」
ツルギ「何なんだ-、その気の無い返事はっ!」
ツルギの叫びは虚しく響くのみであった。そんなツルギの肩を叩きシヴィルが慰める
シヴィル「諦めるんだぉ。皆、そんな普通の答えを期待していなかっただけだぉ」
ツルギ「わざわざ、椅子に上っての慰めありがとう…って、さり気なく酷い事言ってるし…」
ルリ「気のせいですわ」
ザウエル「では、この話を他の皆さんにも教えて差し上げましょう!」
一同「そうしましょう!」
ツルギ「や-め-ろ-!」
一同「(大爆笑)」

今日も王劇は、騒がしくも楽しい時間が過ぎていく…
ツルギ「俺の話を聞いてくれ--!」
ツルギの訴えに耳を貸す者は一人も居なかった…(チャンチャン)

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