『昔あるところに一羽のウサギがいました。そのウサギはたいそう捻くれ者で、村のうさぎ達から嫌われていました。あるときウサギは神様にこう言いました
「私は村の中で一番強くて賢い。だから空の上から村のうさぎどもを見守って助けてやりたいのだ。神よ、どうかこの願いを叶えたまえ!」

しかし神様は、ウサギが自分を嫌っている村のうさぎ達に空の上から悪戯してやろうという本心に気付いていたので、少し困った顔しつつウサギに言いました
「汝の願いは聞き届けよう。ただし汝が力を奮えるのは天空の扉が開いた時、すなわち満月の晩だけじゃ。それ以外の時に力を奮ったり、悪戯をしたら門を永久に閉めてしまうぞ」
ウサギはそれを聞いて内心ほくそ笑み、神様に向かって恭しくこうべを下げ言いましたました………』

彼はベッドの中でスヤスヤと寝息を立てて寝ている少女の顔を見つめながら、クスリと微笑んだ。絵本を読んで寝かし付けるのには年はたち過ぎるが、自分が出来る事で少女が納得して寝てくれるのはこれくらいだからなぁと苦笑しつつ、読んでいた絵本を閉じてベッドから離れようと腰を挙げ掛ける
ツンッ!と引っ張る感触がする。そっと戻りベッドを見なおすと、中から小さな手が彼の上着の裾を掴んでいた。彼はヤレヤレっという顔をしつつ上着を脱ぎ掛けるが、脱ぐ端から少女が彼の着衣の端を掴んでくるので大きなため息をつき、諦めた表情でベッドに潜り込んだ。願わくは明日の朝に少女からの目覚めのキスを貰えるのを期待しつつ……彼女は困惑していた。朝、目覚めると養父でもあるこの男性、彼のベッドに寝ていた。それはまま有る。当然今回も前の晩にこのベッドに潜り込んだのは覚えている。いつもの絵本を読んで欲しいと言った事も…
そして朝、彼女の目の前に広がるのはベッドの隅にある絵本、放られたシャヅ、上着、上半身裸の彼である。寝汚く眠り惚ける彼に対して、自分が起きているのち何故寝ているのかという理不尽な怒りに捉われた彼女は、彼を揺さ振り起こしはじめた
ややあって寝呆け眼で起きた彼は目覚めのキスはと言って迫ってきた…
「パシ-ン!パンッ!パンッ!」
と三度鳴った音と共に悲鳴が上がった
「きゃぁあ-!ザウのえっちぃぃ-!」
悲鳴と共に駆け出して部屋を出ていったシヴィルの顔は気恥ずかしげではあったものの何処となく嬉しげでもあり…。反対に部屋に残されたザウエルの頬にはその日一日小さな紅葉の跡が消えなかったという…

―under the Moonlight
月下の兎達

(by メイル)

次の出し物
前の出し物

歌劇団ニュース
プロフィール
インタビュー

コミック
コント
戯曲
王劇設定集
王劇裏設定
地下劇場
壁を見る
投稿!
外に出る