【『楽屋』にて‥その3】

星の明かりが差し込む森で姿の見えない鳥が鳴いてる
彼女がみてた詩人はいない
思い切って投げ出してれば
素直に誰かに甘えていれば
いつか、やり直せたかもしれないのに‥

「おい、妖精。まだ消えてにゃいよね」
「な‥に‥」
「一緒にきて。おまえに、ある人物を紹介するから」
「だ‥れ‥」
「詩人とはだいぶ違うけど想像力豊かにゃ人間♪」
「セ、セリアさん! あの方は、いくら何でも‥」
「にゃんだ、フローラも来たの。まーーいい、ぐずぐずしてらんにゃい。ついてきて」
「で‥も‥」
「でもは、にゃし! いいから来る! ほら急いで!」
「確かに想像力に感応して姿を形成できる、とこの方は仰っていました。ですが、だからこそ‥こほん、あの方の事は、わたくしも少しは知っています。ですからこそ、幾ら何でもと・・・」
「他に方法にゃいでしょ? とにかく悪くもにゃい奴があたしの前で、不都合に消える事は許さにゃい! 気に入らにゃかったら、又よそに行けばいいにゃん☆」
「ああ、そういう事でしたら♪ってきゃあ! もう洞窟の中です! !」
「どん‥な‥ひと‥」
「結構いい奴♪時々思いが空回りして、一人で怒り狂ってるけどにゃ」
「ああ‥なんということでしょう‥」
「フローラらしくもにゃい。しかりするにゃあ」
「んだよおい、賑やかだな。なんかの相談ごとか」
「おう、おまえ! よかった起きてた☆説明はあと! ちょっとにゃんか考えて! ?」
「はぁ? いーーけどよ」
「待って下さい! ‥あの、お下品なものは禁止ですよ」
「そーーそーー、厳禁! おまえ、放っとくと一日中えっちにゃ事ばっかし考えてるからにゃあ♪」
「ひっでえ‥俺だって日に一時間位なら真面目な事」
「ばかーー! すくにゃいーー! いいから早くーー! !」
「妖精さんの存亡がかかっているのです‥」
「何じゃそりゃ。まーーいい、そんじゃ第10話『お返事を書いた日』‥」

途端に空中に、細い白い稲妻が走り、赤と青の火花が飛んだ。
「おいおい! 何か居んのかよ、その辺」
「アウワウワウラリルルルワウアウイエウアウ」
「‥何言いてぇのか解んねぇって。誰だよあんた」

薄い人影のようなものが、火花のなかで暴れている。
「おっけーー☆なのかにゃ? いっかあ♪んじゃ順を追って説明するにゃん」
「ではわたくしから‥」

‥ちゃぶ台の上にみかんと煎餅。こたつを模して、四角い布団がかけてある。さすがにまだ、火は入っていないようだが‥
「ふーーん‥そゆことだったのか。まあでもあんた、ここ居れば安心だぜ?」
「でもこれじゃぼんやりし過ぎだにゃあ。もちっと、にゃんとかにゃんにゃい?」
「‥まあな。どうせ今夜は、一晩中起きてるつもりだったし、どうするあんた。一緒に居るか?」
「いいの? 本当にいいの?」
「いいも何もただじゃねぇかよ。精神感応だっけ、いっくらでも持ってきな♪」
「きゃーー! うれしいの☆」
「あのあの、どうかくれぐれもぅぐ、乱暴な事は」
「‥あのさフロレット、そんな一遍に喰わなくても、煎餅いっぱいあるからさ」
「ごご御免なさい☆」
「フローラぁ。もーー。んじゃあたし達、安心して寝ていーーかにゃあ」
「おう、ゆっくり休みな。明日を楽しみにしてなよ」
「まだ少し不安ですが安心致しました♪では」
「煎餅持ってきなよ」
「まあ! 戴きます☆」
「ふあ‥おーーけい、そんじゃおまえ、妖精、お休み」

細い月。
たくさんの星。
ぼんやり明るい森のなかを、風が吹き抜けていく‥
やがて段々、空が白んできた。

「にぃ‥下が騒がしいにゃ‥? まさかっ!」
「うぅん。お姉ちゃん、妖精さんどうなったぁ」
「昨夜言ったじゃにゃい☆きっと終わったんだにゃ、たまるいくよっ! !」
「待ってえ、階段一緒に降りてーー」

一階の食堂には既にみんな集まっていた。
その中心に、‥何というか、三角と丸が主体の姿の、少女のようなものが浮いていた。
高いえりのコートを着て、大きな帽子を被り。頭に一対、背中から2対、体に付いていない細長い羽根が伸びている。
ふたつ合わせたら顔の半分はありそうな大きな目のなかに、紫色の眼が光っている。
にっ、と笑うと、口が耳まで裂けて、その中に、鋼の板をぎざぎざに切ったような歯が並んでいる‥髪は黒。
「め、めちゃくちゃ強そうですーー‥」
「はかない妖精さん、だったのよね、あなた。どうゆう事、これ・・・」
「‥ご機嫌よう、又お会いできて嬉しく思います☆お名前は戴きましたか?」
「ニャンシーほんと落ち着いてるよにゃ‥」
「‥慌てる事でしょうか」
「そうだよ、よかったよお。私リシェル、貴方は?」
「あたし‥なまえ‥らうでぃあ、ううん、るでぃあっていうの。いい感じなの♪」
「素敵なお名前ですね♪わたくしは」
「覚えてるの。フローラさん?」
「フローレットです。ですが貴女が呼びやすいほうで宜しいですよ☆」
「うん、フローラさん♪あの、あたしどんな姿になったの」
「わたしはリモン、宜しく♪はい、鏡かしたげる」
「‥‥かっこいいの! !」
「本当に人の趣味はそれぞれですね‥わたくしは少々行き過ぎのように」
「まーーまーー☆あいつ気合い入れたにゃーー。ところであいつは何処行ったの」
「んーーーー♪あ。あのね、あたし用の、名刺の石を取りに行くって言ってたの。その間あたし、本読んで勉強してなって」
「勉強って」
「聖なる書に決まってるじゃにゃい♪いーーよおまえ、一緒に読もう、おいで」
「いいの? 本は街にもあるの。でもあたし‥あの、食べ物も着るものも要らないけど、住むところは欲しいの。ここにいてもいいの?」
「勿論です。歓迎しますよ。こちらへどうぞ♪」
「わたしタマルー。宜しくね!」
「ニノンですーー♪あのですねー私達の家族、ドラゴンさんもいるんですよーー。あとでご紹介しますねーー」
「ありがとう、嬉しいの‥あのね、それから詩人さんの事だけどね」
「‥‥‥あ」
「復活なんて無理だけど、意志を生かす事なら出来るって言ってたの。これは、どういう意味なの?」
「‥その方の遺志を継いでよいものを創る為に励む、と言う事なのでは」
「そうなの! ? よかった、それならあたしも少し、安心できるのーー☆あの人のしてた事、だめな事でもむだな事でもなかったのよね? そうよね?」
「優しい方なのですね、貴女は‥ええ、そうですよ」
「あたしは‥もう知ってるよにゃ☆ほれ勉強はじめるにゃ。その内びりぃと組んで配達でもして貰うにゃ」
「もぉセリアさんーー!」

こうしてまた一人、家族が増えた。
はかなさや可憐さは消し飛んでしまったが、代わりに妖精らしからぬ力を手に入れた『ルディア』。
これから何が起こるかな♪
何より彼女が望む事は?
さてさて‥

☆おわり☆


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