【『楽屋』にて‥その9】

洞窟の奥にある、温い温泉。
結構広く拡げたので、女性陣はゆったりと浸かれるしドラゴン勢も寝そべったり出来る。

「ありゃ?どしたリモン尾ひれだけ浸けて。湯治か?」
「うん‥猫ちゃんに噛まれたとこ、まだちょっと痛むの。本っ当にあの娘‥」
「またかよ‥冗談にしちゃちょいとキツ過ぎんな」
「本気で食べようとしてるとしか思えない。冗談ならほら、甘噛みとかするんでしょ」
「あぁ、子猫くわえて運ぶあれか?」
「ちょっと違うと思うけどそんな感じ☆わたし、本気で命の危険、感じる事あるもん」
「んなオーバーな。俺だってしょっちゅう、ドツかれたり蹴られたりしてんぞ」
「あなたは冗談がキツ過ぎるからでしょ♪」
「むぅ‥軽めにしてるつもりなんだがな」
「あれで軽めぇ?あはは☆でもいい加減なんとかなんないかなぁ‥ねぇ、なんかアイディアない?」
「優しく噛んだら喜ぶって言うか」
「ばか、怒るよ★」
「駄目か‥まてよ要するに食欲を減退させる工夫を施せばいい訳だ」
「やな予感するけど、どうするの?」
「つまりお前があまりにも旨そうだから、我を忘れて噛んじまうんだろ?」
「心っ底認めたくないけどそうみたい」
「不味そうに見えりゃいいんだよ★ショッキングピンクのパンスト穿くとか」
「あのねぇ‥いくらあなたでも、拳でぶつよ?」
「解った。腰を落として構えてから、そうゆう事ゆうなよ」
「えっ?あれ、あははは☆」
「柑橘系のコロンでも、つけるとか」
「つけてみた。全然効かないよぅ」
「唐辛子、振っとくとか」
「やよ、そんなの。本当に食物みたいじゃない!!」
「あ―ここに居た☆にゃんのおはにゃし?」
「あ、来た!あなたのお話!!ちょっとそこに座んなさいよ!」
「いや。おしりがぬれる」
「じゃあ立ったままでいいわよ‥こないだあなたが噛んだとこ、」
数分程お説教のお時間♪

「にゃう―、ごめんね?でもあたしが本気で噛んでたら今頃おまえの尾ひれにゃいよ★」
「ぞっとする事、笑顔で言わないでよ‥」
「むぅ‥まぁ傍目に冗談で済む位で止めときなよ、な?ほんとに怪我したらてぇへんだろ」
「解った♪ごめんねりもんこれからはもっと優しく噛むね☆」
「噛み付かないでって言ってんのっ!!」
「そう怒んなよ‥待てよ?確か鞄に傷薬が。だいぶ前の奴だが、結構効くぜ」
「ええ―?そんなのがあるのぉ、先に言ってよぉ♪」そして洞窟内の書斎‥
「おし、これでおっけい!」
「うわぁ痛くなくなった」
「俺ぁ冬場すげぇ手ぇ荒れてよぉ。これ、欠かせねぇんだわ。何でか今年は、あんまし荒れなかったけど」
「指のしわとかから切れちゃうとか」
「おう目茶苦茶痛ぇ」
「聞―ただけで痛いにゃ‥手、見せて。うわ、それでもがさがさ」
「ちょっとぉ。もうちょっとお手入れに、気を遣ったほうがいいよぉ?」
「体質なんだわ、こればっかりはど―にもならん。いんだよ男の手はこん位で」
「乱暴だなぁ☆」
「乱暴ですにゃ♪」
「あ―それで思い出した。手ぇふやかそうと思って温泉行ったんだわ」
「にゃあんだ。おまえも温泉治療にゃ訳?」
「おう。んじゃ、ちょいと失礼」
「わたしも入ってこよ♪」
「こら―りもん!おまえ、おんにゃの子でしょ!?」
「そうだよ、なんで?」
「にゃんでって‥平気でそんにゃ事ゆうにゃっ!!」
「おいおい、俺は手と足を浸けるだけだっつ―の」
「わたし尾ひれ浸けるだけだよ」
「にゃう―‥そんにゃら問題にゃいか‥ま―いい、あたしも行こっと」

そして再び奥の温泉。
「なんか妙な勘違いしたないくら俺だってそんな冗談やんねぇよ」
「どうかにゃ―?おまえ、ちょっとあたし達が油断したら、にゃんかぶちかましそ―にゃ気がするにゃあ★」お湯を素足でばちゃばちゃ散らすセリア。
「‥いつだったか、窓から偶然、着替えが見えたから、ラッパ吹いて突撃―♪なんつったら家の外に吊された事あったな」
「あれは100パーセント、あなたが悪いわよね♪」
岩に座って、尾ひれでゆっくりお湯をかき回すリモン。
「軽い冗談だったのによ‥これじゃ本当に覗いたりしたら、どんな目に遭うか分からん」
「まぁ確かに、こそこそ覗くのって、みっともないよね★」
「俺もそ―思う。やっぱ堂々と正面から」
「こら。にゃに考えてる」
「つまり、らくだのシャツとモモヒキと、あと腹巻で完全武装してスポンジ持って」
「やぁだぁ―☆見るからにおっちゃん―」
「あ、あのにゃあ‥」
「態度はあくまで慇懃に、どおおも、お嬢様方。お背中お流し致しましょお★」
「で、なんて言うの?」
「あ―それあたし知ってる『どぉこぉかぁらぁ洗おかにゃ―♪』」
「おぅよく知ってんな」
「さいって―☆」
「りもん、こいつ今から、お湯のにゃか沈めよう」
「待て、だから例えばの話だっつうの」
「すっごいリアルだったよぉ。もしかして近々、実行に移す予定ですとか♪」
「そんにゃ気がする。今の内に、お仕置きしとこ☆」
「さぁてと、そんじゃ帰るとすっかな‥」
「逃げるにゃ―!」
「冗談じゃねぇ、やってもいねぇ事でお仕置き食らって堪るかっつうの!」
ばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃば‥そして。
「ふぃ―‥ったく、服びしょ濡れじゃねえかよっ!!」
「わたしもびしょ濡れぇ‥おばか猫ちゃん、どうしてくれんの」
「あたしもおんにゃじ♪おあいこだから、怒んにゃいで」
「さっさ着替えな、風邪引くぞ。俺ぁどの辺干すかな。こたつ取っ払って囲炉利にすっか」
「いろりってにゃあに?」
「床埋め方の暖炉の事。棒さして周りに並べよ‥」
「くしゅん、あぁもぉ!わたしも着替えてこよ」

そしてお家のなか‥
「もお。服着たまま、水遊びなんてしないで下さい―」
「…元気いっぱいですね」
「お姉ちゃんずるい。たまるもお風呂行く―」
「違うの、何か変な勘違いしたと思うの♪」
「はい、お着替え!濡れた服は自分で干してねっ♪」
「ありがと☆わたしは巻き添え食らっただけなんだけど」
「にゃう‥別に、そんにゃんじゃ」
「ふぅ。流石にわたくしも、慣れては来ました。ですが可笑しい位で済む程度に、なさって下さいね‥今日はお茶ではなくスープに致しましょうか♪」
しばらくしてポタージュの、いい匂いがしてきた‥
「あぁ☆いぃ匂い」
「はい、りもん。これ、おにゃかに当ててみて」
「なぁに?これ」
「使い捨てかいろってゆうの。あいつの鞄から、持ってきた♪」
「勝手に持ってきちゃっていいのぉ」
「いつも、好きに持ってきにゃってゆうもん☆」

確かに、そろそろ懐炉も要らなくなるだろう‥春が近づいてきた。

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