【黒猫ぽすと・最終回】
―いつかあなたのおうちへ☆の巻―
<後篇>
そして翌日。
セリアがタマルと出掛けようとした時、遠くから何かが猛スピードで飛んできた。
彼女等を見つけると、6枚の羽を拡げて急停止。
「ひゃ―間に合ったの♪」
「るりあ!!にゃんか久しぶりだね☆」
「ごはん要らないからってお家にはちゃんと居ないとだめだよ―」
「ドラゴンちゃん達と悪者討伐のお仕事してたの―!!お出かけ前に言った筈なの」
「そうなの?忘れてた☆」
「るりあって、あたし達のにゃかで一番漢らしくにゃい?そんでどしたの?」
「漢はひどいの―!!あたしだって外見は女の子なの♪あのねえ人間が‥」
「外見はっておまえにゃ‥にゃんか怪し―表現だよ」
「ちゃんとお話聞くの★あのね、その帰りに、ゴブリンちゃん達の村に寄ったの。そこで聞いたの。人間達が、また勝手にあの子達の討伐隊作って村に向かってるって‥あたしはぱっぱとやっつけようって言ったんだけどドラゴンちゃん達に止められたの。あなたの鎮静化の術を使った方がいいって♪だから呼びに来たの」
「ほんと人間って碌でにゃしが多いね★」
「あたしちょっと誰か呼んでくるの」
「にゃんで?あたし行くんじゃにゃいの?」
「あなたを現地に運んでくれる人に決まってるの★」
「そっか♪にゃるほど」
ルディアは扉のなかへ‥。
「人間って意地悪で勝手で乱暴なくせに一番偉そうだよね‥そうじゃない人も居るけど」
「たまるもそう思う?」
「たまるがね、頭にくるのは、その人間が、それを言う事」
「事ってにゃあに」
「そうじゃない人も居るんだからって。その人たちがそうだからって全体を良く見ろなんて、絶対無理。良くない方の人を、いい人だって居るんだから、この人たちもいい人♪なんて言えるわけないよ」
「そのと―り★んで結局そいつらは、みんにゃ我慢してる―おまえもそうしろ―って言うんだよにゃ‥にゃにがみんにゃだ!おまえらだけだろ、あたし達は関係にゃい!って、いつでも言える子で居ようね♪」
「うん☆」
「なんか込み入ってるみたいね。どしたの、猫ちゃん」
「りもん!おまえの顔見て思い出した!お婆ちゃん家どうしよ‥」
「どうしてわたしの顔なのよ★でも急用なの?」
「うん。お姉ちゃん、お出かけしないといけないの‥ごぶりんさん達がピンチなの」
「にゃう―‥困ったにゃ。あっち行きたいし、こっちも行かにゃいと」
「お婆さんの方は、わたしが行ってあげよぉか」
「りもん来てくれる!?」
「おまえ行ってくれんの!?でも道わかるかにゃ」
「セリアさ―ん!!」
フロレットがルディアと一緒に飛んできた。
「お話は伺いました。わたくしが貴女を現地へお連れしましょう!」
「フロレットちゃんも来てくれれば安心なの♪」
「だよにゃ‥あたし小さいものにしか鎮静化使った事にゃいし」
「あら?どういう事でしょうか」
「今度の相手は大勢の人間だしにゃ★万一の時は仕方にゃく全員」
「‥その様な事が起こらない事を願いましょう」
「…ではフロレットさん、お弁当はどうしましょう」
「あらナンシュアさん、作って下さったのですか♪そうですね‥わたくし共が戻りましたらお昼に一緒に戴きましょう」
「…解りました♪」
お弁当の包みを持ってお家へ戻るナンシュア。
「にゃんし―、ここんとこずっと刺繍のお仕事してんだよにゃ‥あたしだったら発狂するにゃ★」
「どなたにも得意不得意はあります。適材適所という事です」
「そ―だよにゃ♪そんじゃたまる、りもんあんにゃいしてあげてね」
「うん!!行こ、りもん☆」
「あのねセリアちゃん。ゴブリンちゃん達にお願いされたの出来れば森を壊さないでねって♪だから森の手前の、広場で待ってるのがいいと思うの」
「ふむ。だよにゃ、おまえとふろ―らの必殺技って無差別だもんにゃ★」
「ですから、出来ればそのような事は」
「ふろ―ら‥あたしも考えたくにゃいけど世のにゃかど―しよ―もにゃい奴の方が圧倒的に多いんだよ。でもって少にゃい方のいい人は、欲がにゃいから、上の立場に居る事が殆どにゃい。つまり発言が取り上げられる事が殆どにゃいって事‥行こっか★」
「あたしもそう思うの★本当そうなの」
「わたくしも、知らない訳ではありませんが‥その内貴方がたとこの事についてお話させて戴きたいと思います」
「その内にゃ♪でもその答えは、一つじゃにゃい?」
「まあ♪解りました、参りましょうか」
「おっけ―!ふろ―ら、落さにゃいでよ」
「ふふふ♪お任せ下さい」
「それじゃ急ぐの―!!」
ルディアと、セリアを抱えたフロレットが飛び立った。ニノンとリシェルがお家の窓から見送る‥
「わたしたち今日はお留守番です―淋しいです―」
「仕方ないよっ順番だもん‥あ―あビリーくん手紙持ってこないかなっ☆」
「…あの、私も留守番です。良かったら刺繍のお手伝いお願いできませんか?もう少しなんです♪」
「し、刺繍っ!?ごめんっ、勘弁してっ」
「わたしも細かいお仕事は苦手です―★」
「…ごめんなさい。じゃあ私、頑張りますね‥」
「わたしこそごめんなさいです―、お食事の準備してます―」
「私はお掃除でもしてよっかなっと。とほほ★」
さて、ここはお婆ちゃんのお家。
「まあタマルちゃん、いらっしゃい♪そちらの綺麗な方はどなたかしらね」
「あれれ、そうですかぁ?猫ちゃん‥こほん、セリアが急用で代わりに来ました。リモンです宜しく☆」
スカートを軽く摘む。
「あらあら貴女が人魚さんなの?お話で聞いてたわよ、さあさ、お二人ともこっちに座って♪」
「は―い☆」
「可愛くて素敵な椅子ですねぇ気に入っちゃった」
「あらそお?ふふふ♪今日は用事は何にも無いわ。お話聞かせてほしいの。もう、毎日これが楽しみでねえ」
「どうする、りもん。どっち先にお話する!?」
「んふふ☆タマルちゃん寝てたっけ。わたしも、お婆さんに、何かお土産をって思ってね。書いてきたの、ほら」
「あ―ぽえむ―!!お姉ちゃんとの喧嘩のもと―★」
「やめてよ人聞き悪いなぁ‥わたしはあくまで笑いを取りた、こほん、楽しんで欲しくて書いてるんだよ。猫ちゃん解ってくれないけどね」
「だってりもん、かならずにゃうとかにゃんとか書くんだもん♪」
「あぁしまった!!なんか忘れてるって思ったぁ‥」
「ほら―☆」
「あらあら‥それはなんて題名のポエムなの」
「がんばる猫ちゃん。早速だけど読んでもいい?」
「ええ聞かせて頂戴♪」
「それじゃね‥」
ぽすとに手紙が入ってる
入り切らなくて溢れてる
皆が知ってる働く猫ちゃん
あっちこっちで呼んでいる
今日も早起き街へお出かけ
お仕事一杯、働く猫ちゃん
頑張る
頑張る
頑張れ
頑張れ
働きすぎて、疲れたら
お耳に息を吹き込めば
あっという間にほら元気♪
昨日はあそこで泥棒退治
今日はこっちでお片付け
明日はどこに行くのかな☆
来る日も来る日も忙しい
手紙はだんだん増えていく
家族みんなでお手伝い
先頭に立つ元気な猫ちゃん
街ゆく人が声かける
用事は一杯、でも大丈夫♪
頑張る
頑張る
頑張れ
頑張れ
疲れて淋しくなった時は
背中をつ―っと撫でてあげれば、
たちまち元気!!
張り切る猫ちゃん♪
こないだの手紙、あのお家
おとといの手紙、このお家
そして、いつかは、あなたのお家へ☆
「おしまいで―す♪」
「セリアちゃんの事でしょ?素敵なポエムねえ♪」
「んふふ☆タマルちゃんは?」
「微妙―‥お姉ちゃん、なんて言うかなあ」
「何よぉクールだなぁ★流石に今回は喜んでくれるでしょ‥たぶん」
「でも今日のは、ちゃんとお姉ちゃんの事、ほめてあげてるね☆」
「そりゃわたしだって認めてるよぉ、猫ちゃんって凄いなって。でも普段はついついね」
「喧嘩するほど仲が良いってね♪さてさてパンケーキを焼こうと思うんだけど、リモンちゃんもタマルちゃんも、ジャムは好きかい」
「大好き―!!」
「好物ですぅ☆」
「それじゃこれはお婆ちゃんに任せて♪うんと美味しいの焼いたげるからね―」
しばらくして、お家の換気窓からパンケーキとバターの素敵な匂いが漂ってきた‥
その夜。森のなかのお家。
「考えてみれば調子こいてこれからやっつけるぞ―★って時は一番頭がしんぷるだからにゃ。簡単だった」
「わたくしも戦闘にならずに済んで安心致しました」
「あたしは残念なの★」
「…ルディアさん」
「あははは、怒んないでほしいの―♪」
「にゃあ、お婆ちゃんの様子、どうだった」
「パンケーキ焼いてくれたよ☆おいしかった」
「わたしのポエムも喜んでくれたしね♪」
「ぽえむ‥おい、こら!にゃに書いたのっ!?」
「読む?はい♪」
「む―。にゃう―‥」
「何よぉその微妙な表情は‥素敵でしょ☆」
「お耳に息を吹き込んでどうする★でも今回は、ちゃんとあたしの事、誉めてるにゃ♪おっけ―だよ」
「でしょ!?枕元に飾っていぃよ☆額に入れたげる」
「飾るか―っ!!」
次の日。お婆ちゃんのお家
「診療所―?にゃんでそんにゃとこ行くの」
「定期検診って言ってね♪セリアちゃん位なら、まだまだ関係ないけど、お婆ちゃん位になると定期的に診療所行って、病気してないか、調べて貰わなくちゃいけないんだよ」
「お婆ちゃん、どっか具合悪い?」
「ぜ―んぜん♪腰と足がちょっと痛い位かね。でもセリアちゃん、悪いんだけど、一緒に来てくれるかい?」
「診療所まで?い―よ☆」
「ありがとね。お婆ちゃん、歩くの遅いけど付き合って頂戴ね」
「解ってるって♪」
今日はセリア一人。お婆ちゃんと二人で診療所へ向かう‥
「すぐ終わるんでしょ?」
「そうでもないのよ。順番待ちが長くてねえ。先月なんて2日も掛かったのよ」
「2日!?にゃにそれ」
「仕方ないのよ―。ぱっぱと解る事でも無いしねえ。だから今日はもういいわ。明日また覗きに来てくれるかい?診療所まで」
「解った♪かにゃらず来るからね」
診療所に着いた。
確かにその中は、大勢のお年寄りや、身重の女性や、包帯を巻いた男性などで、混み合っている‥
そして森のなかのお家。
「それで帰ってきちゃったのぉ?」
「仕方にゃいでしょ。一緒に居る訳にも、いかにゃいもん‥」
「病気してないもん、すぐ会えるよ、お姉ちゃん♪」
「そうです―、わたしまだ、一度も会ってないです―」
「そんじゃ明日、一緒に行く?様子を見に」
「いいんですか―♪」
そして次の日。
セリアとニノンは、お昼前に街の診療所へと出掛けた‥でも二人とも入室を許されなかった★
「にゃによ!!あたしたちがきたにゃいってゆうの!?」
「ん―仕方ないです―決まりみたいですから―」
「にのん、ちょっと一回りしよ。窓から見えるかも知れにゃい」
「駄目ですよ―、そんな事したら―」
然し聞き入れる彼女ではない‥建物の周りをぐるりと回り、東側に開いてた窓に飛び付く。
勿論、たちまち見つかる♪
「そこの貴方!!何してるんですか、降りてください!」
「にゃう★見つかった!!にのん、ちょっと気ぃ逸らしてっ!!」
「そんな事できないです―すみません―今おろしますから―」
翼を広げセリアを捕まえるニノン
「にゃう―はにゃせ―!!」
「だめです―!!降りて下さい―!!」
抱えられてばたばた暴れるセリア‥窓から室内が見えた。
数名の相部屋の、ベッドの一つに、お婆ちゃんが居た。
外の騒ぎに気付いて、こっちを見てセリアを見つける。
にっこり笑って手を振った。
「あ―、いたいた☆」
「居た居たじゃないです―すみません―お騒がせしました―‥」
怒った顔の係の女性に、ぺこりと頭を下げるニノン。でもセリアはそんな事お構いなし。
「あの様子じゃ、すぐ出てこれるにゃ♪」
「も―ほんとに―★」
然しそれっきり、お婆ちゃんは、お家に戻ってこなかった。
そして、お仕事の依頼は毎日のように届く‥
十日が過ぎた。
セリアは今日は或る穀物倉庫で鼠退治‥
「にひひひ♪楽しいお仕事だったにゃ☆そいえば、お婆ちゃんど―してるかにゃ戻ってきてるかにゃ」
帰りに寄り道をしてお婆ちゃんのお家を覗いてみる。
「やっぱし居にゃいか‥」
「ああ君ひょっとしてセリアちゃん?」
「む―?どにゃた?」
「ああやっぱりそうだ♪隣の者だけど診療所から伝言を預かっててね‥」
そして森のなかのお家。
「死んじゃったの!?」
「やっぱり病気だったんですか―!?」
「違うよ、ろ―すいだって。安らかにゃごりんじゅ―だったそ―だし、あたしとしては、ちょっと安心☆」
「あなた何で平気なのぉ」
「お姉ちゃん悲しくないのお婆ちゃん居なくなって」
「かにゃしいよりは淋しいかにゃ‥でもあたしは、お婆ちゃん天国にいるって信じてる。だから、かにゃしまにゃいの。頑張れば、いつかあたしもそこに行ける。そしたらまた会える。ね☆」
「その通りです。その方がそこにいらっしゃると信じるなら、嘆き悲しむ事は正しくありません‥」
「そっかぁ、そぅだよね」
「たまるも天国に行けるかなあ‥」
「その為のお勉強じゃにゃい、お仕事じゃにゃい♪本当は、あたしもかにゃしいけど、いつまでも生きられる人は居にゃいしね。これからも頑張ろうね‥」
「ナンシュアさん?セリアさんも、こう仰っていますし」
「…あう、いえ、ご、ごめんなさい‥」
「にゃんし―、みんにゃ、また会えるよ、にゃ?」
「…はい。お会いした事はないんですけど☆」
「あれれ?そ―だっけ」
「しっかりして下さい―」
「私達は御使い様じゃないけどエンジェルだもんねっ☆」
「こういう時に嘆いたりしちゃいけないですよね―」
「うん、たまるも頑張る!」
「わたしもわたしなりに♪猫ちゃんに負けない位」
「…ハードですけどね☆」
「セリアさん、お耳を」
「にゃあに?ふろ―ら」
(成長なさいましたね♪)
「も―!ふろ―ら―☆」
その夜。屋根裏部屋の片隅、ビリーの寝床‥
「びりぃもう寝た?」
「きゅいぃ?」
「おまえも毎日大変だにゃ‥明日はお休みする?」
「きゅっ!きゅい―!」
「あたた、元気だにゃ。んじゃ明日もお願い♪」
「きゅう☆」
(ほんとは夕方まで、お婆ちゃん家でにゃいてたのはにゃいしょ☆)
夜は更けてゆく‥森のお家の明かりも消えた。
明日はまた、皆が、それぞれのお仕事に‥
次の日も、次の日も、その次の日も‥‥♪
「セリアさん、宜しいですか」
「にゃあに、ふろ―ら」
「…これが最後と聞きました、だから」
「挨拶しないとねっ貴女がっ☆」
「そぅよね、あなたが主役なんだもん」
「最後の締めです―♪」
「お姉ちゃん頑張れ―☆」
「きゅうぅ(スヤスヤ)」
「解った、そんじゃ。げーむ放っぽって、こんにゃもん読んでる、あみ―ごにゃおまえらに」
「セリアさん★」
「にゃう★えっとね‥あたし達の活躍の記録、ここまで読んでくれたおまえに、挨拶するね。え―と‥また会おうね!!
かにゃらず♪」
☆おしまい☆
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