とんがり帽子のような尖塔、見晴台のある塔、細長い巻き貝のようなもの、泡が固まったような不思議な形……そうした沢山の塔を眺めるだけで、心ときめいた子供の頃。それも見飽きてしまった今は、ただ魔術師たちの自意識過剰で鼻持ちならない心の反映にしか見ることができない。
 ボクの塔は、12年前父さんから引き継いだものだ。かつて魔術師たちは一人前になるために、自分の手で自らの塔を築いたと言うが、今ではそんなことをする者は誰も居ない。先祖から受け継いだ塔をただただ守るばかりだ。それにウルの東街、通称塔の街にはもう新しい塔を建てる場所など空いていないのだし。
 12年前、ゴブリンとの戦争があった。ゴブリン王ブークがメルキアから独立を宣言して、山に籠もったことにより生じた争い。なぜヒューマンはその独立を認められなかったのだろうか。そのせいで多くの人々の命が失われた。父さんと母さんのように。

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