ふたりはイリュージョニスト、つまり幻影の魔術師だった。山岳を進軍する軍隊を敵の目から隠すために前線で魔法をかけ続けたのだという。でも強力な魔法使いでもあるゴブリン王ブークに看破され、奇襲を受けた部隊は全滅。父さんも母さんも帰ってこなかった。遺体が回収されたのは、半年後。戦争が終わってからだった。
そうしてボクはこの塔を継ぐことになった。
可哀想なオズアンナ。妹は父さん母さんの暖かいぬくもりを、たった三歳で失ってしまった。それなのにお前はいつでも惜しみなく笑顔を振りまいてくれたね。それがどんなにボクの心の支えになっただろう。
あの作戦の失敗以来、幻影魔法を無価値扱いする風潮が生じたようだ。モンスター征伐でも、判りやすい攻撃魔法ばかりがもてはやされるようになり、幻影魔法の研究も魔術師ギルド内での予算が取れなくなっていった。
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