メルキア一の踊り子と言われる姉のマリエーヌの衣装、鎧を究極にまで小さくしたというコンセプトのものなのだが、それを身につけた姿は、紳士であれば目のやり場に困るほどである。しかし、今は彼女の艶やかな姿を見る者は誰もなかった。というのも、彼女は仲間からはぐれ、一人道も判らぬまま広大な地下の廃墟を迷い歩いていたのである。もう何日そうしているだろうか。
先日彼女は水の流れる音を聞きつけ、やっとのことで喉を潤すことが出来たところだ。この水はウルの街の生活水に違いない。この水道をたどって行けば、どこか井戸にたどり着くかも知れない。そうすれば何とか脱出出来るだろう。そう考えた彼女は腰まで水に浸かりながら、光を求めて先を進んだ。しかし途中で力尽き、冷たい水に身を洗われて、動く気力も奪われていった。
「誰か……助けてー!……お願い…誰か-!」
彼女の求めに応える者は誰もいなかった……すぐには。
女戦士ミリエーヌが救い出されたのは奇跡としか言いようがない。駆け出しの冒険者タルケンが、幽霊退治にウルの西街の井戸に降り、地下水道を探索したからである。幽霊の正体こそ彼女が必死に助けを求めたその声だったのだ。
奇しくも瀕死の女戦士が運び込まれた宿金羊亭には、彼女を捜して旅をしていた妹のメリエーヌが住み込みで働いていたのだった。メリエーヌと双子のムリエーヌもまた急いで駆けつけ姉妹は感動の再会となるのだが、彼女らの物語はひとまず置いておこう。
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