「手紙でやんすか? オズアンナ宛てでやんすね。ちょっと拝見」
『大切な人、妹オズアンナへ
最近はどうやら心配させていたようですまなかった。
不幸なことにその心配は的中していたよ。
ボクはもう自分を止めることが出来ない。
もうお前とも会えないかも知れない。
だから手紙にしたためておこう。
何よりもお前を愛していたと。
ボクが消えても探さないで欲しい。
それは無駄なことだからだ。
死よりもむごたらしい運命がボクを待っている。
しかし、それも当然の報いなのかも知れない。
哀しまないで欲しい。
苦痛はない。
あるのは重さだけだ。
オズワルド』
「これはタルケンさんがオズアンナに渡してやってくだせい。しかし、何もかも手遅れだったってわけでやんすねえ……残念でやんす。何と言ってオズアンナを慰めてやったらいいか」
「いや、まだ手遅れと決まった訳じゃないよ」
「へ?」
「たぶんオズワルドは魔界に行ったんだ。何か目的を持ってね。ガンダ・ウルフ師に相談してみよう。何か方法があるかも知れない」
「じゃ、善は急げでやんす!」
ふたりはオズワルドの部屋を後にした。
途端に白い煙がふたりの目を突いた。廊下の先の階段からモクモクと白煙が上がっている。
「…これは……火事!?」
モンスターが残っていて、火の気に触ったのか? しかし原因は今問題ではない。ふたりは慌てて廊下を駈けだした。
突然先を走っていたハッタタスが消えた。いや、床が抜けて下に落ちたのだ。
「ハッタタス!」
呼べど眼前には炎が渦巻いている。そちらに行くのはもはや無理だった。タルケンは覚悟を決めた。
塔はほどなく焼け落ちた。ハッタタスは何枚も床をぶち抜きながら一階まで落ちて行き、奇跡的に軽い火傷と打ち身の傷を負っただけで、何とか生還することが出来た。割れた床が、落ちる衝撃をその都度和らげてくれたおかげだ。
ハッタタスは広場に戻るとロリエーンだけをそっと呼んで、涙ながらに事の顛末を伝えた。タルケンさんは焼け死んだと。
しかしロリエーンは即答でタルケンは無事だと明言した。
「大丈夫、あいつがそんなところでくたばる訳ないってば。オズワルドを追って魔法円から魔界へ入ったのよ。いい? オズアンナにはそれを見てきたように伝えなさい。判ったわね? わたしが一緒に行ってあげるから。
それから、彼女はルフィーアのところで預かってもらえばいいわね。歳も近いしお互い魔術見習いだし、きっといい友達になれるわ。こんなときはひとりでいるのが一番良くないから。
さあ、涙拭いて、男でしょ? その煤だらけの顔、噴水の水で洗ってらっしゃい!」
ロリエーンの直観は当たっていた。
「無事でいてくれ!」
タルケンはハッタタスの落ちた穴に叫んだあと踵を返し、再びオズワルドの部屋に入った。そして念じた。「扉よ開け」と。するとその思いが通じたのか、魔法円が怪しく輝きだした。一定のリズムでかすかだけれど唱和するような音が聞こえる。タルケンはその音に心を合わせた。すると音は高まり、輝きも増した。
今だ! とばかりに魔法円に飛び込む。と、その姿は光と共にかき消えたのだった。
さて、今回の物語はここまで。この物語は携帯版『モンスターメーカー:運命のダイスの』ステージ1の最後のミッションを小説にしたものです。タルケンとオズワルドの魔界での物語は、また次の機会にお話ししましょう。
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