第11話『セイクリッドデス』
(by ゆうり)
…睨み合ってどれだけ経っただろうか、両方とも動かない…いや、ケイは“動けない"でいた。
ケイ「(何なのよ?どう動いても勝ち目ないじゃない)」
数刻先を見通す先見の能力、今回はそれが災いした。ケイの多岐に渡る特殊能力、しかしケイの眼はその尽くが潰されていくのを視ていた…
神無「どうしたんです?」ケイのそんな状態を気付いてか神無は涼しい表情をしていた。その時…
ケイ「っ!」何かを感じて跳び退くケイ、そしてその場所を冥い瘴気を含んだ炎が凪ぐ!
神「行きます…」
ケイ「やるしか…ないの?」真っすぐ突っ込んでくる神無を衝撃波で迎撃しようと構える…瞬間、神無の姿が掻き消えた。
ケイ「跳んだ!?」ケイの特殊能力、空間跳躍…まさか神無も使えるとは予想もしなかった。しかし動揺も一瞬、すぐ気を巡らす。
上っ!(ごぉっ!)咄嗟に真上に向かって展開した衝撃波の防壁を避けるようにケイの周りの空気を黒い炎が灼。
ケイ「ぅわ、冗談じゃないよ」
神「はい、冗談なんかじゃありません」真後ろから声が聞こえた…飛び退くケイ、神無はその場を動かない…
今の瞬間で分かった。神無は“遊んでいる"本気を出してない。ケイ如きに本気になるまでもない、ということか…その考えに達した瞬間、激しい怒りに捉われた。戦士としてのプライドを傷つけられた気分だ…
ケイ「なめるなぁ!」念で槍を生成して走り込む。(がっ!)振り下ろした念の刄を神無は造作もなく掴んだ。
神「そう。恐怖を乗り越えなければ道はありません…でも、怒りに身を任せては道を誤りますよ」
ケイ「煩いっ!」刄を解放、本来の純粋な力の塊として神無に撃込む。それを神無は“叩き落とした"
ケイ「がっ!」零距離で自分の本気の一撃を撃ち返されたケイは吹っ飛び壁に叩きつけられる。態勢を立て直そうとするがよろめく…
「(まだ、負けられない…神無さんでも避けられない方法…これしか…ない!)」何とか立ち上がり周りの空間に意識を集中させる…
(ぎんっ!)その時、ケイ以外の時間が止まった。「空間凍結」…多大な精神力と集中力を要するケイの奥義のひとつである。
そしてもう1つの奥義…その集中に入ろうとした瞬間、嫌な予感がして咄嗟に飛び退く。
(しゅん!)その場を銀と黒の閃光が凪いだ!
声「あら、外しちゃった」
「…次は外しません」神無との間を塞ぐように降り立った影の正体…それは…
ケイ「久遠ちゃん、刹那ちゃん?」声に出して、やっと気が付く。確かに時間は停止している。なのに何故彼女達は自由に動けるのか?
声「こういう理由ですよ」その声に耳を疑う。ありえない…何故…止まらないの?
神「忘れては困ります。私は人間ではありませんよ?…人間風情の術が効くとお思いですか?」震えが止まらない、膝が笑っている…これが、純然たる力の差?
いままでにも闇の者達と何度も戦ってきた…けど…
ケイ「(そんなんじゃない…この人は…)」
神「そろそろおしまいにさせて頂きます…久遠、刹那」
久遠「は-い…悠久の刻を経て数多の魂を喰らいし黒の剣よ…」
刹那「…普く魂を断ち切りし銀の刄よ…」
久遠・刹那「我は真の変革を求めしモノ。今ここに汝等の真の姿を顕せ!」2人の掲げた剣が光と化し、溶け合いながら神無の手に納まる…顕れたのは漆黒の大鎌。
聞いたことがある…「正しき力を持ち悪に抗う者の象徴」「神聖なる死をもたらす存在」…
ケイ「…セイクリッド…デス…そんな!それを扱える人が何故こんな事を!」
神「貴女と同様に私にも護りたいものがあります。そしてそれは貴女とは相馴れない…それだけです」言うが早いか鎌を振りかぶり数瞬で射程内に捉えられた…と、神無の体が傾く…チャンス!掌に気を集中させて撃ち出そうと構える。その時、2つの影が割って入った。刹那が神無の鎌を押さえ久遠がケイを問答無用で吹っ飛ばす。
一瞬意識が飛んだ。それが回復した時には3人の姿は何処にもなかった。焼け爛れた地面に座り込む…私はあの人を本気で殺そうとした…?何故?…そうしなきゃ殺されていた?…何で?……その夜、ケイは久しぶりに泣いた…
<続く>
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