第12話『刹那』
(by ゆうり)
神無とケイの戦いの直後、戦いの場から丁度街の反対側に位置する裏路地に蹲る影…神無
刹那「…油断…しましたね」苦しそうに呻く神無の脇腹からはとめどなく血が溢れていた…ケイから受けた零距離からの気の波動…それを流し切れなかったのだ。
「貴女は純粋な精神体ではないんです。肉体の死は、そのまま消滅に繋がります…」
神無「分かって…います…まだ……」そこまで言うと神無は糸の切れた人形のようにうなだれた。
久遠「神無さま?…神無さまっ!刹那ちゃん!神無さまが!…」
刹「分かっています…姉さん、アルト様の方、頼めますか?」
久「…ぇっ?…あ、うん、分かった。お願いね…」そう言うと久遠はアルト達の気を辿って飛び出した。
十分離れたのを確認し…(ぶちっ!)
刹「…っくぅっ!」おもむろに自らの左腕を引きちぎった。例え神であろうと肉体が傷つけば痛みを伴う。現に刹那の顔は汗が浮かび苦痛に歪んでいた。その腕を神無の傷口にかざす…刹那の左腕は光の粒子と化して神無の傷口に吸い込まれていった…暫らくすると出血が止まる…しかし…
血が足りない…こればかりはどうしようもない。刹那には血など流れていないのだから…軽いパニックに陥りながら他人事のように感じる。
「あの方だけには見せられないな」と…その時、背後に影が立った。
声「ぁ-、また派手にやったのぉ」
刹那「…姫様」
憐であった。刹那に優しく微笑みかける。
憐「どれ?診てやろう…傷口は塞がって…ん?」憐は刹那の左腕がないのに気付いた。
「全く…どいつもこいつも無茶しよってからに…」刹那の左肩に手をかざし、短く呪文を唱える…瞬く間に腕が生成された…
憐「さて…」神無に向き直る。
(ぶつっ)鈍い音とともに憐の口元から血が流れる。自らの舌を噛み切ったのだ…そしてそのまま意識のない神無に唇をつける。
(ちぴゅ…こくっ)流れ込む血を神無は無意識に飲んでいく…暫らく時が流れ…
神「…んっ…ぷっ。けほけほっ!」むせた「…姫様…えづかないで…」
憐「何をいう?こうでもせんと起きんではないか?」重い空気ブチ壊しである。しかし神無も刹那も知っていた。これが憐の優しさであることを…と、憐の表情が真面目になる。
憐「大概の事はシリウスから聞いておる。しかし…」言葉を切り辺りを見回す。…「少々嫌な気配が混じりだしたな。これは奴らが動くかも知れんぞ…」
神「…申し訳ありません…」
憐「いや、シリウスもこれは予想しておったようじゃ。まぁ、わらわに任せておけ。おぬしらはまだ仕事が残っておろう?」
神「はい…」ふらふらと立ち上がる。それを刹那が支える…すぐ2人は消えた。残された憐が1人呟く…
憐「あの小物のシナリオなぞ当てにはしてなかったが…これはまずくはないのか?…止め時を見誤るでないぞ、アルタイル…」そして憐の姿も闇に溶けるように消える…その場には何も残らなかった。神無の流した血さえも…
<続く>
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