ツルギ「…!」魔宮の通路を奥部(だと思われる方向)に駆ける足が止まる。
舞「兄様?」
スラスト「…なぁ」
ツルギ「…ああ」
《たったったったっ…》
後方から自分達のものではない足音が微かに聞こえてきたのだ。それは一直線にこちらに近づいてくる…
《たったったったっ…》
足音から察するに女性…ランかケイだろうか。
スラスト「お仲間かい?」小声の質問に是と答えるのを躊躇う。ここは人外の存在の住まう異界の魔宮。慎重にあたるに越したことはない。更に自分やスラストだけならまだしも今は舞がいる。消耗の激しい彼女を護りつつ奇襲に打ち勝つのは正直厳しい…
《たったったったっ…》
足音はどんどん近づいてくる。
半歩踏み出し何時でも攻撃に移れるように構えるスラスト。ツルギも通路から舞を庇うように立ち刀の柄に手をかけた。《たったったったっ…》そして足音の主が曲がり角から姿を現した。第32話
《そして決戦の舞台へ》
(by 戯言師皐月)その姿を確認し構えを解くツルギと安堵する舞。しかし足音の主はスラストに襲い掛かった。
スラスト「…ふゥッ!」
小さな呼気と共に腰を落とし滑るような動作で数歩分前進、同時に拳を繰り出し…
《ぺしこ》でこぴん。
影「ひゃぁぅ!」
奇襲を躱されカウンタ-まで貰い思わず額を押さえて蹲る影―ケイ―。
スラスト「いきなり何だい」
構えを解いて頭を掻きつつ尋ねるスラスト。その言葉にケイは額を押さえながらも数歩飛び退き構える。ケイ「それはこっちの台詞です!何故零がツルギさん達といるんですかっ」
スラスト「説明…面倒だなぁ」
ぼやきつつもアルトの行動に疑問を持った事、アルト、そして今回の黒幕が居るらしいこの魔宮に潜入し、ツルギと合流、四天王のひとりを撃破して現在迄をツルギの補足を交えつつ話した。
舞の強い意志と責任感の人一倍強いケイの取りそうな行動を考慮し、舞が闇の力に取り込まれていた件は話さずにおいた。
ケイ「そう…ですか。つまり今回の件から零組は手を引いた、と?」
スラスト「そうだよ。零じゃなく、あくまで個人として動いてる。アルト以外はね」
何時も行動の読めない神無やシリウスの所在や行動は彼女やスィンの知るところではないのだ。
ケイ「…だから神無さんも…」
ツルギ「何?神無さんも来ているのか?」
ケイ「はい。私達は…」
神無と共に魔宮に侵入、炎皇をくだしてその戦闘で負傷した神無を残し此処迄来たことを説明する。当然、共に戦うきっかけとなった神無の過去は伏せて。
ケイ「後はランですね。確か来てた筈ですが…無事でしょうか」
そう言った瞬間、遠くからまた足音が聞こえてきた。
《たたたたたた…》
そして曲がり角を曲がり…スラストに襲い掛かる。
今度は一歩横に避けつつ相手の膝下に自分の足を掛けるスラスト。
《ずさささ-》
盛大なヘッドスライディングを披露し、止まる影。
ケイ「ラン…」
スラスト「全く…何なんだい」
ラン「それはこっちの台詞だ。なんでお前がみんなといる!」
スラスト「…すごいデジャウ゛…ツルギ、パス」
スラストに代わり先程と同じ説明をするツルギ。
ラン「ぁ?アルトならさっき遇ったよ」
その言葉に騒然となる一同。
四天王のひとりとの戦闘中に乱入してきたもうひとりの四天王、逃げた四天王の片割れを追いすぐ消えたアルトの話をランから聞き、ケイが呟く…
ケイ「私達を既に脅威と感じてない…?」
スラスト「ありえない話じゃないけどさ、それじゃあわざわざ奴が化け物を狩る理由にはならない。ここがどうなろうと関係ないって言いやがったんだ…」
言って悔しそうに唇を噛む。
ツルギ「行けば…判るのか」
視線の先で通路は大きな部屋に繋がっている。そこからは冥い…という表現が生温く思えるほどの邪気が流れてくる。気に当てられた舞の顔は蒼白になり、震えていた。
ツルギ「大丈夫か?舞…」
舞「…はい。兄様の足手纏いにはなりません」
気遣う言葉に震えながらも強い返事が返ってきた。
ツルギ「分かった」
止めるべきなのだろうが、ケイもランも何も言わない。彼女の決意の硬さを察したのだろう。
そして目の前が開ける。
いちだんと広い部屋。
人影は2人。
手をひらひらと振り背を向ける全身黒で塗り潰したような長身の男(彼がこの冥い気の正体か?)と、黒い服を纏い血のような赤い瞳でこちらを見ている男…アルト。
アルト「来たか…」
ただただ静かに、何の感情も乗せず、アルトの口から音がもれる―――異界の楼閣の中、決して歴史に残ることのない戦いの結末がすぐそこまで来ているのをこの場に立つ誰もが感じていた。
第33
第31
歌劇団ニュース
プロフィール
インタビュー
歌
コミック
コント
戯曲
王劇設定集
王劇裏設定
地下劇場
壁を見る
投稿!
外に出る