『―シャウラ王劇入団の巻―』

by グレイス

この日…ついに歌劇団の門を叩く日となった。
全ては二週間前……その頃私は生活費を稼ぐためだけに金羊亭で働いていた。それだけではまだ足りない。賃金は食費と金羊亭の宿代で消えた。そのため路地ではるか昔の伝承…伝説などを歌い、はした金を稼いだ。
…あまりに古く、珍しかったからだろうか、私の歌語りを聞きにくる人が多くなった。

男「今日はどんなこと歌ってくれるんだ?」
シャウラ「では、今日は極東の国の歌語りを…!」

客の中に、最近かなり訳ありの目線で見る男がいた…。
それは金髪のオ-ルバックだがなんかはねていて水色の目…みたいだ。今日は極東の三百年前の恋物語を歌った。
ペイカ銭がチャラチャラ音を立てて投げられる。中には1ダルト銀貨も混じっている。
手早く投げ銭を集めると、その男の前に進み出た。
シャウラ「毎日来てくれて感謝する…」
金髪の男「貴女の歌を聞くと楽しいからね」
男は50ダルト銀貨を手渡すと去って行った。
こんなしがないストリートミュージシャンには大金だった。
ひとりの女(?)がその男を追って行った。
スラスト「そんな所にいたのか!ザウエル!!」
ザウエル「げっ!」

シャウラ「……ザウエルというのか…あの男」

今日の夜は金羊亭でやることになった。
金羊亭は客でいっぱいだった。
茶髪の女「ザウエルは今日かならずここへ来る。今日こそ捕まえるんだ!」
黒髪の女「逃げられたらどうするのですか? 兄様はどう思います」
兄様と呼ばれた男は「さあな」とそっけなく答えた。

誰か宣伝してくれたのか分からないが、とにかく始めた。
シャウラ「今日は聞きたい歌語りがあったら挙手をしてください…」
スッと手を挙げたのは、東方の服を着た黒髪の女だ。

黒髪の女「あの、平家物語を」
シャウラ「祇園精舎の鐘の声で始まる?」
黒髪の女「ええ!」
シャウラ「わかった」

終わったときはもう夜も遅かった。誰かが私を手招きした。それはさっきの金髪の男…ザウエルという男だった。不審に思ったが誘われるまま外へでた。
シャウラ「ザウエルさんとやら、私に何か用か?」
ザウエル「 どこで名前を聞かれたかな? まあいい。いかにも俺は王立歌劇団の団長ザウエルだ。
話というのは他でもない。お前王劇に入らないか?」
一瞬疑った。
シャウラ「私が!?」
考えた…。多数の人と演劇をする。おそらく集団生活をする…私がなんなのか分かるかもしれない。劇によって…しかし、生きるのに困窮する生活とはおさらばできる。

シャウラ「いいのか?」
ザウエル「歓迎するよ!」

次の日門を叩いた。中から女?が出てきた。
シャウラ「ザウエルさん…という方にお取次を…」
茶髪の女?「そういう貴女は?」
ザウエル「来てくれたみたいだね」
茶髪の女?「ザッ…ザウエル、いつの間に!!?」

劇団の一室に招かれた。
ザウアル「ふ-んなるほど…で名前は?」
シャウラ「…シャウラ」
ザウエル「家や家族は?」
シャウラ「いない」
ザウエル「失礼だが年は?」
シャウラ「正確に覚えていないが、確かなのは五百は過ぎている」
ザウエル「採用!」

…こうしてシャウラは団員になった。

―終―

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