『王劇の節分―参之巻―』

by ヒュ-クス

節分の名を騙るのもおこがましく感じる王劇団長杯、サバイバル鬼ごっこ大会も、い
よいよ終幕となる…栄冠を勝ち取るのは、果たして?

『兵者共が 夢の跡』…の言葉が似合いそうな程、死屍累々と横たわる鬼達…
舞「…はっ!兄様、ご無事ですか!」
流石にその現状を目の当りにして我に還ったのか、剣に声を掛ける舞であったが…
剣「………」
返事がない…只の屍の様だ
舞「あぁ…兄様…」
舞は、悲しみに暮れ涙をはらはらと流すだけであった…
剣「…って、死んでおらんわ!勝手に殺すな!」
俺が飛び起きると、舞は満面に喜色を浮かべる
舞「あぁ、良かったです」
剣「全く…しかし、珍しいな?お前が、あそこまで羽目を外すなんて」
そんな問いに顔を赤らめ
舞「団長権限で、お願いを聞いて戴けるとの事でしたので…」
剣「ん?」
何だ?そんなに嬉しい事でもあるのか?
舞「二人っきりで、お休みを戴いて…そして…そして…うふ、うふふ…」
え-と…舞さん?
剣「お-い、戻って来-い」
舞「はひっ!…わ、私とした事が、とんだ醜態を晒して…」
ふぅ…何か知らんが、危なかった様だな…主に俺が
(ピンポンパンポ-ン♪)
そんな時、何やら放送が始まった
ザウエル[え-、皆さん…集計が終わりましたので、劇場にお集まり下さい]
(ピンポンパンポ-ン♪)
剣「だとさ…行くか」
舞「はい」
さて、他の連中は…何だか、視線が集まってるな?
剣「…おい、何で皆して笑ってるんだ!」
忍び笑いをする者、隠しもせず笑う者…人それぞれだったが、皆一様に笑っていた
スィン「相変わらず、二人は夫婦漫才してるな…と」
剣「漫才じゃない!」
スラスト「いや、傍から見りゃ、誰が見たって漫才だな」
ガイデル「でござるな」
ティアリ-ス&フィアラ「「だよね-」」
剣「ぐぅぅっ」
言葉に詰まっている俺に止めを刺すかの如く、シグが呟いた
シグ「それとも、天然か?」
剣「!!!」
俺の中の何かが臨界点を突破する寸前…
舞「兄様、そろそろ参りませんと」
剣「くっ…そうだな(ス-ハ-ス-ハ-ス-ハ-)」
三回、深呼吸をして気を落ち着かせて、劇場へと歩みを進める
スラスト「何だい、もぅ終わりかい?仕方ない、あたしらも行くか」
一同「は-い」
場面は変わって、劇場へ…
ザウエル「皆さん、お待たせしました!今回の結果発表です!」
憐「皆、心して聞く様に」
神無「では、先ずは鬼部門からです」
(ダラダラダラダラダラ♪)
ドラムロ-ルが鳴り響く中、団長が発表する
ザウエル「鬼役の五人の内、豪華商品を獲得者は、残念ながら該当者なしです」
やはりな…結局、皆当てられたからな…さて、気になるのは…
ザウエル「それでは、最多当てられたで賞は…スィンです!」
スィン「嘘だろ-!」
打ち拉がれるスィンを余所に、壇上は進行して行く
憐「早々にリタイヤしたのが、敗因ぢゃな…倒れた後、集中放火を食らっておったし
の」
ザウエル「スィン君には、漏れなく給料カットが待っています…お楽しみに!」
スィン「嬉しくねぇ-!」
オ-バ-「ご愁傷様」
スィン「オ-バ-!貴様の所為だろぉがぁ!」
オ-バ-「ハッハッハ…戦いは所詮、弱肉強食さ」
スィン「貴様!待ちやがれ!」
キレたスィンは、オ-バ-に襲い掛かるも逃げられていた
神無「それでは、次に参りましょう」
スィン達の事は、何事も無かったかの様に場は進行して行く
憐「うむ、MVPの発表ぢゃ」
ザウエル「見事、MVPを獲得したのは…」
(ダラダラダラダラダラ♪)
(ゴクッ)
誰かの息を呑む音が響く
ザウエル「…タイロンです!」
タイロン「ぶい♪」
シ-ナ「何故にですか!?」
憐「確かに、シ-ナの機械を使用しておったが…豆は、しっかり自分のを放っておっ
たのぢゃ」
シ-ナ「ガ-ン…そ、そんな…はぅっ」
一同「(ず、狡い)」
倒れたシ-ナを黒子が救護室へ運んで行った
神無「それでは、タイロン様には、賞品と副賞の贈呈をザウエル様より行なって戴き
ます」
ザウエル「おめでとう!」
タイロン「ありがとう…で、副賞なんだけど」
ザウエル「はい…どうします?」
タイロン「うっふっふ…シグと二人っきりの一日デ-ト♪」
シグ「何ぃぃぃっ!?」
ザウエル「ふむ…いいですよ(邪笑)」
アリル「ちょっとぉぉ!…タイロン、うらやま…じゃなくて、卑怯よ!」
タイロン「何とでもお言い!」
アリル「くっ…このピ--のくせに!」
ルセル「アリルちゃぁん?ちょぉっと、口が悪いわよぉ?」
放送禁止用語を発するアリルに、ルセルがにじり迫る
アリル「あうっ」
シグ「俺に拒否権は?」
クラフル「無いのではないか?」
憐「憐れよのぅ」
ガイデル「シグ殿、諦めるでござるよ」
剣「『武士とは死ぬ事と見つけたり』…だな」
ガイデル・剣「合掌…南無」
動揺するシグに皆がそれぞれ追い打ちを掛ける
シグ「うぉぉっ!神は死んだ!」
タイロン「明日は、何を着て行こうかな♪」
シグ「あんぎゃぁぁぁっ!」
アリル「うきぃぃぃっ!」
こうして、王劇の夜は更けて行った…今日も平和だ
舞「兄様…在らぬ方を見てどうしたのですか?」
剣「気にするな」
惨劇から眼をそらしながら思いに耽る
オ-バ-「人、それを『現実逃避』と言う」
剣「黙れ」
次の日の夕方、灰になったシグがフィアラによって発見されたとかしなかったとか…

《終幕》

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