【今日のお料理】1/29更新

爽やかどりんくの巻★

チャララッチャチャチャチャン♪
チャララッチャチャチャチャン♪
チャララッチャチャチャチャチャチャチャチャン♪

鈍い光沢を放つ、がっしりした体。すらりとした、然し力強い角。
「ふぅ―んむ★やっぱ何処の世界の奴でも、兜虫ってのは格好良いなあ」
ぎいぎい音を立てながら、樹の幹を登っていく。その時お家の方で、走り回る音と共に、複数の女性の悲鳴が聞こえた。
「何だぁ?」

‥そして数分後。
「あのな、お前なぁ」
「にゃによ。あたし悪い事してにゃいもん」
「いいからその虫、捨てろっつうの‥」
「にゃんてゆうのこいつ」
「ごきぶり。まぁそいつが好きだって奴ぁ‥ちょっと居ねぇんじゃねぇの」
「あたしはこうゆう素早い奴の方がいいけどにゃあ♪のそのそしてる奴はつまんにゃい」
「好きか?ごきぶり」
「好きじゃにゃいけど★」ぱっと上に放る。さっと鳥が飛んできて、ぱくり。
「おお―!!にゃいす☆」
「何かちょいと気の毒な気もすんな★まぁいいや」
「たぶんまだ、お家に一杯居ると思うにゃ―☆当分、遊べそう」
「‥来な。バタートラップの作り方、教えてやるよ」
「にゃにそれ」
「ごきぶり貯金‥じゃねぇごきぶり用の罠だ。馬鹿じゃねぇかこいつらって位、簡単に捕れるぞ」
「あ―教えて教えて♪さっきも捕まえて、はいって見したら怒られたの」
「そうゆう時は黙ってそっと、誰かの湯呑みに入れるんだよ。つまんねぇだろ折角捕まえてやったのに怒られちゃぁ」
「いやその‥それはちょっと如何にゃものかと☆」

釜戸に鍋が乗っている。勢い良く蒸気が出ている。傍に大きな袋があって、中でなにかが暴れている。
「にゃにあれ」
「あぁ忘れてた。今日の料理だ」
「お―そおだった♪今日はにゃあに?」
「趣向を変えて、爽やかな飲み物だ」
鍋を地面に下ろす。
「蟻んこの、断末魔をば、戴きますってな訳でな★でっけぇ蟻だろ」
「あ―解った!!お湯にどぼんして、上から蓋して、す―ぷ取るんでしょ☆」
「正確には蟻酸‥蟻の酸だな、それを出さして作る清涼飲料水」
「ほっほ―。それはまた小洒落たものを」
「んじゃ暴れて逃げ出さんように押さえとかねぇと」
「あたし座っててあげる」
「さんきゅ。そんじゃ」

どぼん。ばたん。ぎいぎいばたばた‥

「お―揺れてる揺れてる♪そして蟻んこ達は、あたしのおしりの下で、静かににゃって往くのでした★一杯のどりんくにも、色んにゃ物語があるんだね」
「‥しみじみと、しまったかなって思えるような言い方すんなよ」
「捕まえてきたの、おまえじゃにゃい☆」
「まあな★あとは一回沸かして漉すだけだ。甘味は砂糖か蜂蜜でな」
「おっけい。そこの小川で冷やす?」

さらさらと流れる沢に、寸胴鍋が浸かっている。
木の葉を揺らして吹き抜ける風‥名前も知らない小鳥の声‥
蟻茶(アリネード)が冷えるまで、お昼寝の時間。幸せそうな顔で丸くなって眠るセリア。
柔らかな微風に、揺れる耳毛。
ちょいとつまんで、耳を裏返してみる。
ばしっ!!

暗転。砂嵐‥‥

チャン、チャン、チャンチャララララッ、チャン♪
ジャ―ン♪

拵え方★
熱湯に元気な蟻を放り込み、蓋をして3分間待つ。また火に掛けて1分間煮沸して、漉して、甘味を付ける。
夏はアイス、冬はホットで供する。
出しがらの蟻は、通常は捨てるが、どうしても食したければ食す。

★おわり★

次の料理
前の料理
戻る
地下劇場

歌劇団ニュース
外に出る