【水と魚が一杯な場所】
「ほら、おれこ急ぐにゃっ置いてくにゃん♪」
「ナンシュアです、ここなさん」
「わーーかった、ニャンシー。あいつ、あたしを置いて自分だけ釣りに行くにゃんて、いーー度胸だにゃ‥約束した訳じゃにゃいけどっ!見つけたら、とりあえず、けつ蹴りだにゃっ★」
青い髪の猫娘と、橙色の服のエンジェルが、沢に沿って走っている。片や飛ぶ様に、片や時々本当に飛びつつ。
「‥駄目ですよ?そのような事をしては」
「気にすんにゃ、あいつはその位じゃ怒んにゃいし☆にゃによりあたしはーー、さかにゃって、見た事にゃくてっ、おっと」
「‥気を付けて下さいね?滑りますから‥♪」
「おまえほんと、どんにゃ時も落ち着いてるにゃ。そうにゃ、ニャンシー、ちょっと飛んで?上空から、きゃつを探すにゃ!」
「はい?ええ‥そう遠くへは行ってはいないと思いますが」
高く舞い上がるナンシュア。
「ニャンシーーーーっ!」
「何でしょうかーーーーっ?」
「ぱんつまるみえーーーーっ」
「きゃあああ!」
バランスを崩し、10メートル程落下する。
「にゃははは、慌てる事もあるんだにゃ♪」
「(もしも今、大きな石を持っていたら、あの娘の上に落としていたかも‥いえいえ、)そのような冗談はやめて下さい‥すぐ先で、沢が幾つか合わさって、小さな河になっています。恐らくその辺りでしょう‥」
「さんきゅ♪もし一匹も釣れてにゃかったら、お水に蹴り落として、素手で獲らせるにゃ☆」
「‥ですからいけません、そのような事をしては」
―確かに、少し進むと河があった。沢が合わさった、と言うより元々あった深い河に、幾つもの沢が流れ込んでいる、と言った所か。所々、青や緑の溜りが見える。水面が、陽の光を反射して撒き散らしている。
「まぶし☆これが河?ふうん‥お家の横のやつより、ずっと広いにゃ‥」
「もっともっと広い、海というものもあるそうです‥実は私も、見た事がないのですが」
「歩いて三日だって。それ聞ーーて行く気にゃくした」
「あらら‥では飛んでも一日がかりですね♪」
「まーーいい。
問題はあいつにゃ。おっ!あすこに居るにゃん‥★」
「そのようですね、お呼びしましょうか?」
「待つにゃ。後ろから廻って、籠を覗くにゃ。
もし空っぽだったらっ」
「ですから!‥あら?何かきらきらしたものが」
「ひょっとしてあれが魚!?急ぐにゃっ!」
ばたばたと走っていく。
「よお。どした二人して」
「どしたじゃにゃい!にゃんであたし置いてったの!?ニャンシー連れて、追っ掛けてきたにゃっ!」
「‥すみません、釣りというものに、とても興味があったもので♪」
「いやあんたはいいけど。お前、今朝方ずっと、眠いにゃーー、疲れたにゃーー、ってぐずってたじゃねえかよ。連れ回すの可哀想だなーーって思ったから、」
「うるさーーい!一言釣りに行くって言ってくれたら、そこで元気が出てたの!」
「‥まさに現金。そーーいや魚知らねえってたな?覗いてみ」
「おう、それにゃ!どれどれ。わあ、いっぱいいる!これがさかにゃ?」
「どうでい★いやな、この辺の魚、金属に異常に敏感でよ。普通の針だと、投げただけで散るんだわ‥ほらちっと見てみ?おっ!又」
「あーーっ、さかにゃーーっ!わうっ♪」
「こらーーっ!いきなり食い付くやつがあるかーーっ」
「針が‥もう、何というお行儀の悪さでしょう‥」
「にゃうにゃう。結構いけるにゃ☆あれ?にゃに、この棒は」
「だからよ、針だと逃げられるから、棒に虫刺して、重りは石で。したらもう」
「大きな魚は突っかい棒に‥齧る魚は齧り付いたまま上がってくるのですね?」
「そーーゆう事★そうだ、折角来たんだし、もう二本作ってやるよ」
「あたしそれまで、これ持ってていい?」
「ああ、いーーよ、頑張んな」
「‥とても平和的な釣りですね、安心しました♪」
「あ。にゃんか、ばしゃばしゃやってる」
「あげてください!」
十数分後。三人並んで釣り糸を垂れている。
「だからよ、仮に二時間粘って、一匹も釣れなかったらお前どうする?」
「勿論おまえをお水に突き落として、素手で獲らせるにゃん☆」
「てめえ‥まーーいい。結構日差し強えけど、日陰行った方がいいんじゃねえ?」
「そうですね‥それに少し照り返しが眩しいです」
「涼しーーとこ行くにゃーー♪ねーー、その帽子、にゃんてゆうにゃ?」
「麦わら帽。あれ?知らんかった?」
「うん。今度買うにゃ☆あにゃ開けにゃいと被れにゃいけど」
「可愛いでしょうね。繕ってあげます‥あ、又!」
「にゃんかすごいにゃ‥」
「重くてやになんねえ位にしとくか」
「‥待って下さい、私、まだ少しも‥」
「悪ぃ。も少し粘ろーーや」
「そんじゃあたしはお昼寝するにゃん☆」
「薄情だな‥せめて隣で付き合いな?」
「じゃあ、とにゃりでお昼寝ーー♪ニャンシー頑張って☆」
「はい‥(やっぱり、釣りは男性の遊びなのかも知れません‥少し淋しくなってきました‥)
」
川面をわたる風‥木陰に居るととても涼しい。振り向くと、大きめのさくらんぼのような、野性のすももが沢山なっていた。
「こうゆうの、好きだったっけ?すもも」
「は、はい‥実はさっきから、気になってました♪」
「遠慮してねえで、とればいーーのに」
「全然釣れなかったら沢山‥少しでも釣れたら、少し。まだ諦めません♪」
「格好良いな、あんた‥?なあ、大分前に、餌取られてねえ?」
「はい!その‥私、ああいう虫が苦手で‥」
「んだよ、言いなよ。付けてやっから」
「す、すみません‥」
「ふあーー。ニャンシー、釣れた?」
「まだです‥でもきっともうすぐです☆」
「あたしも、見ててあげるにゃーー♪」
然し、餌は川沿いの茂みのなかに落下した‥
「あーー!もーー、ニャンシー!」
「と、とほほですーー‥」
「待った。何か居ねえ?」 途端にぐいっと、鈍い引きが彼女の釣り竿に‥
「あれ、こにゃいだとおにゃじ亀じゃにゃい!?」
「やべえ、食い切られるぞ!手伝おーー!」
「ななな、なんですか、これは‥先日のスープの?」
「逃がすにゃーー!持ち上げるにゃーー!」
流石に先日のやつよりは一回り小さいが、例の巨大な噛み付き亀だ。
「す、凄えな、あんた‥」
「むーー。やるにゃ‥」
「うふふ♪やりました‥」
「おっけーー、大漁ーー!おうち帰るにゃーー!」
まだ陽は高い。ちょいと獲り過ぎたので、岩だらけの河添いを離れ、少し遠回りして歩く。亀もあるし‥
「暑ーーい。帰ったらすぐ、水浴びにゃ‥」
「ち、ちょっと欲張ったかな?当分、釣りは止めな?」
「えーー?明日も行くにゃ!」
「勘弁してくれーーーー」
「‥あの」
「にゃに?」
「こういう日を、まったりと言うのでしょうか?」
「にゃいす☆」
「正解だ★」
「‥うふふ♪」
☆終わり☆
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