【あそびにいこう♪】

街道を馬車が走っている。素通しの窓から、猫娘が身を乗り出している。
「あーー、くろすけだーー。くろたーーん!ごくろーーさーーん!」
コラーーーーッ、キサマーーーーッ!
黒龍の怒鳴り声が、上空で響く。
「にーー。狩りやお使いじゃにゃい用事で、遠く行くの初めてーー。馬車にゃんて、初めて乗るーー♪奮発したにゃん、あれ?おまえ?」
「‥‥‥‥‥」
「おーーい!帽子被って、寝てんじゃにゃーーい!」
「あ‥悪ぃ。俺、揺れる乗り物酔うんだわ」
「だらしにゃーーい。しっかりするにゃっ☆」
「乗り物酔いに効くかな? どうぞ!可成苦いけど♪」
「さんきゅ‥ぐえっ!」
「にゃはははは」

数日前。彼女が、丘の上で鏡のように光るところを見つけた。あれは湖だと教えたら、どうしても行ってみたいと言って聞かない。そこで、今回は馬車やテントを奮発して、キャンプに出かける事にした‥黒龍を、栄養剤で懐柔し、事前に殆どの荷物を、運んでもらってあるし‥

「あーい、ここ迄っすよーー」
「えーー、にゃんでーー?まだ半分ちょっとじゃにゃい?」
「仕方ありません、馬車が 通れる道は、ここ迄です。ここからは歩きですね♪」
「ちえっ。もーー少し、観光に力をいれたほーーがいーーと思うにゃーー」
「‥自然保護のためには、 観光客は少ないほどいいと思います♪」
「仕方にゃい、歩こっと」

草木が生い茂る、山間の道。あちこちに花が咲き、狭い道に張り出している。
「何ですか?その枝の先に、付いている物は」
「ねずみのどくろーー☆」
「そんな物、捨てちゃってくださいーー」
「だめーー、記念にゃんだからーー☆それよりこーーして歩いてる間も、こにゃいだ獲ったはちのこが、ドラゴン共に喰われてにゃいか、心配だにゃん」
「私は、留守の間に、全部無くなってたらいいと思ってますーー♪」
「にゃに言ってんの!あたしまだ、ちょっとしか食べてにゃいのっ!」
「嗜好が異常ですーー‥あんな幼虫を食べるなんてーー」
「ふーーん。じゃあおまえの取り分はさにゃぎ」
「さなぎ?やですーー!」
「じゃ、成虫☆唐揚げにしてやるにゃん」
「もっとやですーー!」
「美容と健康にいいそうだにゃん。買うと、すごく高価いんだよ?にゃ、おまえ」
「あーー、でかい奴は一枚、3ダルトちょいするな。知る人ぞ知る高級健康食品だ」
「ほ、ほんとですかーー?」
「ほおら、欲しくにゃってきたにゃーーん♪」
「そんな事ないですーー‥」
「嘘ついちゃだめ。ちょーーだいってゆうにゃ♪」
「絶対やですーー!!」
「ににこーー。ちゃんとゆわにゃいとあげにゃいよーー。おじさん、にゃんにもしにゃいで、帰っちゃうよーーー。 こちょこちょ‥」
「あーー、だめですーー‥、ってこらーーーーっ!!」
「あいた!本当にぶった!」
「何をしているのです?貴方がたは‥」
「うちのにゃんにゃんが、やらしいジョークいいますー」
「誰がにゃんにゃんだ!」
「いい加減しようよっ!」
「‥仲がいいですね♪」

ようやく湖が見えてきた‥陽の光を受けて、鏡のように光っている。
「水面が穏やかなのですねとても綺麗です♪」
「あたしつかれたーー」
「もう少しだよ、頑張って歩こっ☆」
「‥魚はいるでしょうか」
「水着着たいですーー♪」
「そういえば‥貴方が仰っていた、浴衣というものの事ですが」
「ん?作ってみてえとか?」
「ええ、あの‥はい♪」
「んじゃ今度、雑誌か実物、持ってくるわ」
「楽しみにしています☆」

湖畔に着いた。水は、緑色であまり澄んではいない‥だが、淀んだような、いやな匂いはない。透明度が低い分、空や岸辺の樹々を、鏡のように映している。
「あーー、あすこに荷物落ちてるーー!」
「岩が張り出している所が随分ありますね。これなら、焚き火も安心ですね♪」
「草燃やさなくて済みますねっ☆あーー、落ちてる所が一番広い!気を利かせてくれたんだ、感激ですーーっ!」
「んじゃ早速、テント張るか」
「‥では杭を打ちます♪」
「つなを張りますーー!」
「この箱は?」
「焚き火用。灰が飛ばねえように」
「薪集めてくるっ♪」
「この布は余りですか?」
「いんや‥ほら、水浴びがどーーとか言ってたろ?」
「あ‥はい、ついたて用ですね?ではあの辺りに☆」
「忙しそーーにゃ。じゃあ、あたしは、猫じゃ猫じゃでも踊って、応援してあげよか、に゛ゃっ!!」
「この子は‥踊ってる暇があるなら、お手伝いなさい。こら!逃げない!」
「わーーかった、もーー、耳引っ張んにゃいでーー」

テントが張られた。焚き火も仕込んだ。少し離れた小川に、水浴び用のついたても張り準備は完了。
「食べ物も持ってきたし、魚釣れなくても平気だな」
「‥挑戦はしたいです♪」
「真ん中に飛んでって、網投げてみたいなっ☆」
「あーー、ずるいですーー」
「そんじゃ皆さん、えへん、楽しんできな!目一杯★」
歓声が揚がり、皆、思い思いの場所へ散っていった。

「ではわたくしは、昼食の用意を。貴方も、ゆっくりなさって下さい」
「さんきゅ、助かる。んじゃちょいと失礼」
「だめーー。おまえは、あたしとくるの」
「こらっ!この子は!」
「いーーの。ほれ、さっさと歩くにゃっ☆」
「お前な‥いーーけどよ‥」湖面に大きくせり出した木陰‥岩場の周りに、青や黄色の花が咲いている。
「あたし、だいぶ料理覚えた♪もーー、大抵の材料に、対応できるにゃん☆」
「だよな。いい感じだよ」
「冒険者って、大変?」
「まあな。いい感じだよ」
「こーーして遊んでると、たまに思うの。にゃんか他に、する事にゃいかにゃって」
「そだな。いい感じだよ」
「こらーー、寝るにゃ!真面目にゃおはにゃしっ!」
「あ?あーー、えっと‥」
「もーー‥聞ーーてた?」
「大体な。要するに、なんか仕事を持ちたい、て訳か?」
「そーー!やっぱおまえ、一番はにゃしが解るにゃん☆」
「何がしたい?」
「んーー‥楽しくてーー、えと。楽しかったらいい!疲れても、服汚れても、ちょっと危険でも、文句言わにゃい!」
「偉いな、お前。じゃあ‥黒猫大和の宅急便って、聞いた事あるか?」
「にゃにそれーー」
「ふくれんなよ。じゃあ、妖怪ぽすとは?」
「あたしは妖怪じゃにゃいっ!!真面目に考えてよーー」
「いや‥ちょっと待て。郵便受け。お前、楽しけりゃ何でもいいつったよな?」
「ちょっとーー。にゃにさせる気ーー?」

―やがて、昼食の合図の鈴が鳴った。然し皆、食事もそこそこに、又散っていった。

「洗い物位、やるぞ?あんたも少し、ゆっくりしなよ」
「いえ、私はこの方が‥終ったら花でも見に行きますから♪」
「一番お姉さんって感じだな、あんた。御苦労さん」
「ふふふ♪あら?ところであの子は?」
「ちょいと模索してえ事がある、って向こう行った」
「まあ、あの子が!いえ失礼実は、わたくしも、貴方に相談があるのですが‥」
「浴衣以外の服の事?」
「お見通しですね♪ですが何をどのようにすればよいやら‥何か良い案がございましたら」
「うーーん。いきなり入っていいか?」
「どうぞ☆」
「どっかの工房と契約してデザインを提供するってのはどうかな?これなら、場所も大量の布も要らねえ。要るのは才能だけ。どーーかな?」
「デザイナーですか!あらあらどうしたものでしょう‥」
「ゆっくり考えな★何なら街を回って当ってくるよ、それとなく」
「す、少し考えさせてください‥」

―さてと。残念な事に、周りの山に隠れて、夕陽が見えない‥然し魚は大漁、焚き火の周りは、大いに盛り上がっている。
「わーー、不細工にゃやつーー。これ、ににこにあげる」
「あなたにあげますーー!耳を付けたら似てますし♪」
「あたしはこんにゃに平たくにゃいっ!」
「それ鯰ってんだ。仲良く分けな、旨えから」
「これはなんて魚?」
「鮎って奴に似てんな‥香が良くて、骨も柔い」
「この調味料は?」
「味噌。大雑把にやっても、不思議に旨くなる優れ物」
「初めて戴きますが‥何でしょう、この懐かしい感じは♪」
「それが不思議ぱわあなんですねっ☆」
「そうだ。花火があるんだ。殆ど線香花火だけどな。後でやってみ、皆で」
「‥一つ、点けてみていいですか?」
「どうぞ★こつは、あんま揺らさねえ事」
「はい‥あらら、わあ♪」
「あーー!いいなーー!」
「あたしもやるーー!」
「食事が済んでからになさい。小さなものは、もう焼けましたよ」

「戴きまーーす☆」
「わう。確かに旨いにゃ」
「共食いですーー☆」
「気付いてにゃい?おまえのもおんにゃじ♪」
「え?あーー!やられたーー!」
「にゃははは♪」

―すっかり日が暮れた。涼しい風が吹いている。大粒の星が幾つか、空に現れた。
「あれ?おまえテントに入んにゃいの?」
「あのな‥女の子と雑魚寝なんか出来ねえよ」
「あーーそゆ事か、むふふ」
「残念ながら、そゆこった。火の番しながら居眠りしてっから、お前も寝な」
「こんにゃに早く眠れにゃーーい☆昼間のはにゃしの、 続きするにゃん」
「昼間ぁ?あーー、はいはい」
「街にこっそり郵便受け置いて、闇の仕事を請け負う訳だにゃ?有料で♪」
「まあ猫探しとか、物探しが一番多いと思うが」
「にゃにそれ。楽しくにゃい仕事は却下!」
「文句ゆわずにこつこついきなよ。まずは基盤を固めねえと」
「うーー、まあそーーだにゃ‥。とーーぜん、おまえも手伝うよにゃ?」
「へ?にゃんで俺が」
「こらーーっ真似するにゃ! 黙ってはいってゆうの!」
「んだよそれ‥まあ偶然出くわしたら、付き合わなくもねえけど」
「決めた。おまえ、一緒におうちに住むにゃ。勝手にどっかに行かにゃいよーーに、 見張ってやるにゃ」
「勘弁してくれーー。俺も、結構用事あんだよ」
「どんにゃ事ーー?」
「そりゃお前魔王の、あ」
「おまえ普段にゃにしてんのーー!?こらっ、ゆうにゃ!」
「えっとそのーー‥おおっ!ちょっと見てみ?あっち」
「誤魔化すにゃっ!」
「いや、マジで。皆起こしてきてくれ」
「にゃーーに、もーー。みんにゃーー!大変ーー!」
「んだよその起こし方‥」
「にゃによ!大変にゃんでしょ!?」
「どうしましたーー!?」
「何かあったのですか!?」
「いやその‥静かなことで悪ぃけど、あっち♪」

―湖の向こう岸に、無数の蛍が飛んでいた。いつのまにか、星も夜空を埋め尽くしていた。細い月、白い雲。 その全てが、鏡のような湖面に、写りこんでいた‥。

☆終わり☆

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