【黒猫ぽすと】

―赤い屋根のお家の巻―

森の中のお家。の屋根の上。セリアが一人で座って、手紙を読んでいた。

『ここ一週間、変な男が毎晩屋根の端に座って、大声で歌を歌います。私に捧げる、とか言っています。気味が悪くて巡回兵に訴えても恋愛は自由だ、とか被害が出てない、とか言って取り合ってくれません。助けて下さい‥商店街の近くの赤い屋根の家です』

「ふうん‥嫌がるメスに交尾を迫るのは立派にゃ犯罪だにゃん。王国の警備、にゃにしてるにゃ」
そこへ赤い上着の裾を掴んで、リシェルが降り立った。
「見てきたよっ♪8件あったよ」
「げっ、そんにゃに?どれにゃんだろ」
「私みたいに飛べない人は別の建物から屋根に移るしかないよね?じゃあすぐ隣に同じ位の家があるんじゃないかなっ☆」
「にゃるほど。まーそいつが現れるのは夜だし、今行ってもにゃ。夕方辺り行って、場所だけ確認して張り込むかにゃん」
「私も行っていいっ!?」
「火事に気を付けるにゃらいーーよ。おまえのダークファイア、強烈だもん」
「アークフレア。変な間違いしないでよっ!アハハハ、でもなんかいいかなっ♪よし、もっかい行ってこよっ」
「おまえ元気だにゃーー」
「あったり前でしょっ☆」
リシェルは飛び立った。然し、又すぐに戻ってきた。
「ねえねえ、帰ってきたよあの人っ!」
「あいつが?おーー、二週間もにゃにしてやがった‥リサ、桶にお水入れて、うえからかけてやるにゃん★」
「何でそんな事ばっかし言うかな。ほら、駆け足っ!!」

‥数分後。
「ういっす、なんか久々な気ぃすんな」
「おう、ご苦労にゃん☆あれ、どーーにゃった?」
「一応持ってきた‥効果があるかは実際に見ねえと」
「あいつも不思議生物だし不思議宝石との相性はいーーと思うにゃ♪」
「(お前がゆうか?)ああリィセみんなも変わりねえ?」
「皆元気ですよぉっ☆ちょっと知らせてきますねっ」
「あーー、行っちまった。あの娘は特に元気だな」
「おまえ、ちょっとこっち。洞窟来るにゃん」
「あ?何だよ」
「いーーからいーーから☆」

家から少し離れた洞窟の中
「‥おまえが居にゃい間、こつこつ作っといたものがあるにゃ♪」
「へーー、何だろ」
少し奥にある広間。地面にすのこが置かれ、その上に敷物。その上にちゃぶ台が一つ。壁の窪みに蝋燭立て。
「‥何じゃこれは」
「書斎ーー☆えへへ。おまえ今日からここで暮らすがいいにゃん♪逃げるにゃよ」
「書‥あ、ああ、さんきゅ」
「じゃあぷにこ探してくるにゃーー」
駆け出して行ってしまった
「ふう‥参っ、いやいや」

さて。ぷにこ、いやリモンは、さらに奥の泉にいた。腕立て伏せに励んでいる‥
「152.153.154.155‥」
「にゃにしてんの・・筋肉人魚でも目指してんの?」
「あたっ!(ばしゃっ)」
「あ、こけた、にゃはは♪」
「もーーばかっ!邪魔しないでよっ!移動くらい自力でって思って頑張ってるの」
「にゃんでーー?運んだげるにゃ。一々気にすんにゃ」
「気になるのよ‥私お世話になってばかりで何の役にも立ってないし‥」
「誰もそんにゃ風に思ってにゃいよ?それより、おまえに会わせたい奴がいるにゃん♪鍛えた腕で来れる?」
「無茶言わないで‥どんなひと?わたしに用?」
「いちおーー降魔士。いちおー普通の人間」
「に、人間っ!冗談でしょ!?絶対嫌っ!!」
「にゃにびびってんの‥まあまあいーー奴だにゃん♪じゃあここで待ってるにゃ」
「遅ぇな。その娘か?」
「あーー、おまえ。こいつがぷにこ♪こら逃げるにゃっ」
「マーシーだ、宜しく。ぷに‥本名じゃねえよな、名前は?」
「‥‥‥‥」
「いい加減するにゃーーっ」
「‥‥‥リモン」
「リモン?プニカ・・柘榴。ヘブライ語か!いい名前だな★」
「‥‥‥‥?」
「ほれおまえ、例のやつ」
「おう、それだ」
ポケットから出したのは、淡い青の水晶。中心に少し、水が入っているようだ。
「着けてみ?だまされたと思って。ペンダントにした」
こわごわ手に取るリモン。
「きゃあ!う、浮いたっ!」
「へっ、やっぱな。余所で見た事あんだよ。妖精みてえに浮いてる人魚♪」
「あの、こ、これ‥」
「あくあぶれす。天然じゃなくて悪ぃけどな。あんたにあげるよ」
「まさかあなたも?」
「勿論にゃ♪あざーーぐろうん、だっけ。みんにゃ一個ずつ持ってるよ、違うやつ」
「空気中の水分を蹴って行動できる。ただやっぱ消耗も激しいと思うし、気ぃ付けてくれよな」
「‥は、はい‥☆」
「ねーー、あたしにお土産は?にゃんかにゃい?」
「にゃんかって‥こらっ!鞄に頭突っ込むなっ」
「にゃうーーーーーー」
「それドラゴン用だって!!たくしゃあねぇな‥」
「にゃにこれお芋?」
「おう、スウィートポテトだ。蒸して、卵とミルク混ぜて、タルトに詰めて焼いてもらいな」
「戴きーー!戦利品ーーー♪」
「ぷふっ♪あ、あの、いつもこうなんですか?」
「どうゆう訳かな‥。こらお前。いつ迄覗いてる」
「むふふにゃ本でもにゃいかと思って」
「あったらどうする」
「ぶんにゃぐる☆」
「ええ加減せぇつーーの、こら、もう離れろ!」
「に゛ゃうーーーーー☆」
「あ、あの、わたし空中移動の練習してますねっ♪」
「おう!筋とれのついでに、歌って踊れる人魚を目指すにゃ♪」
「何よそれ‥」
「ああ、前にそんな話あったな」
「どんにゃはにゃし?」
「いや、ロリコン丸出しでムカついたから、見るのやめた」
「おまえにゃあ‥」
「ぷふっ、ハハハハハ♪」
「あれどしたの、ぷにこ」
「何でもない、それじゃ!」

少しふらつきながらも、洞窟の外へ出ていくリモン。
‥さて、その日の夕方‥

「気を付けて下さいねーー」
「おう、頑張るにゃん♪」
「行ってきまーーっす☆」
「‥あ、ニノンさん。橙色のコスモスが咲いてます」
「わあ、ほんとですーー。綺麗ですねーー♪」
「夕陽があたって、二倍輝いてますね☆素敵です」
「オレンジはナンシュアさんの色ですよねーー♪摘みますーー?」
「‥いいえ。種ができるのを待ちます☆」

そして、セリアとリシェルは街に着いた。夕陽が街中を、赤く染めている。
「条件に該当するお家はぁ‥一件しかないやっ!!よかったね☆」
「おーーけーー、今からそこ行くにゃん」
「私先行って、窓から直接聞こうか?」
「いーーから普通に歩いてくにゃん。どうやっつけるか相談しにゃいと」
「それもそうだねっ♪」
二人で並んで歩く。
「みつあみって、にゃんで三本じゃにゃいの?」
「三本もあっちゃ変でしょっ☆こら掴まないでっ」
「そーーいえばおまえ、あたしより背、低いにゃ‥」
「お姉ちゃんって呼んであげよっか、へへへ」
「やめるにゃーー!そんでと゛ーーする、そいつの処遇。あたしロケットはにゃび持ってきたんだけど」
「どうするのぉ?」
「たいむすとっぷの間に、けつに挿して火ぃ点ける」
「急な屋根だからおっこちるねっ。じゃあ私は、下で待っててトラップ張ってるっ!」
「未遂だからにゃーー。完遂にゃら遠慮にゃく死刑にゃんだけど」
「聖書の教えは守らなくちゃねっ☆今回は、懲らしめるだけにしとこっ」
「そーーだにゃ‥あーー、このお家かにゃ」
「そぉ、この家だよっ」
「ごめんくださーーい‥」

二人はその家に招かれ、夜まで待機する事にした。
「本当に助かります‥」
「いーーから気にすんにゃ♪あたし達に任して☆」
「兵隊さんはあてにならなくて‥」
「恋愛かぁ。誰が考えたんだろうね、そんな言葉。只の姦淫なのに」
「かんいんって‥?」
「あちゃ☆知らない!?」
「‥殺人ににゃらぶ重罪だにゃん。この度このよーにゃちゃんとした依頼が行にゃえる事に感謝するにゃ♪」
「どぉんと任してっ!!二度と来ないように懲らしめてあげるからねっ☆」
「は、はい‥(よく見たらシャーズとエンジェル。とんでもないひと達に頼んじゃったのかも)」

さて‥その時がきた。その男は隣の建物の窓から赤い屋根に降り立ち、切々と歌い始めた‥月明かりに顔の脂がてらてらと光っている‥歌の内容は、まあ、貴女は熟れた果物で、私はそれを獲って喰いたい、とそのようなものであった‥

「聞いてらんにゃい‥直ちに罰を与えるにゃ」
窓から飛び出す。
「な、何だきみはっ!」
「問答無用にゃっ!!」
一瞬。いや、2秒くらいか‥男が我に返ると、既に火が点いたロケット花火が尻に・・・・ピィーーーーーーーーーーー‥‥
「おひょひょひょひょ‥」
パァンッ!!
「ふぉうっ!!」
堪らず、急な屋根から落下する。そこにリシェルが待ち構えていた・・トラップフレア発動。
「ぴーーーーすっ☆」
プロミネンスの様な火柱があがり、男は真っ黒になった。
「よーーし。あとはお水ぶっかけて、巡回兵に引き渡すにゃん♪」
「これに懲りたら、もうしちゃ駄目だよっ☆」

そこへばたばたと、数名の兵士が駆け付けてきた。
「何事だ!?火事か!?」
「痴漢の現行犯だにゃん☆しょっぴいて、厳しく叱ってやってほしいにゃ」

‥そして数分後。
「本当に有難うございました‥どのようなお礼を」
「いーーからいーーから。楽しかったよ、お休みにゃ♪」
「失礼しまーーっす☆」
「あの、ちょっと、これを」
そう言って彼女が持ってきたのは、大きな大きなチーズケーキだった。
「お口汚しになるかも知れませんが、宜しければ♪」
「わあ、いいんですかっ!」
「らっきぃ♪有り難く頂戴するにゃん☆」
ケーキを抱えて家路を急ぐ。「ねーー。あたし達のお家の屋根も、赤く塗らにゃい?」
「えーー?私は構わないけど、貴女しばらく登れなくなるよぉ。いいの?」
「少しくらい我慢できるにゃ。森のにゃかに赤い屋根のお家が見えるーーにゃんて素敵じゃにゃい?」
「いいなーー赤は大好きだしそれいこーーっ!」
「あれ?にゃんか落ちてる。にゃんだろあれ」
「何って‥あーーっ!リモン!」
「あーー、あいつも来る。おーーい☆」
「おーーいじゃなくてっ!リモン助けようよっ」
「お水かければ戻るにゃ」
「どじょうじゃないんだからぁ。あぁもぅ助けてーー!」
「なーーにやってんだったくよお‥ほら大丈夫か?」
「ふにぃーーーー‥む、無理したかなぁ‥」
「あんた明日から、水筒と岩塩と、あと何か甘いもの持ち歩きな‥危ねぇよ、いや本当に」
「毎日が遠足だにゃん。よかったにゃ、ぷにこ♪」
「わあ、すっごいむかつく!‥ポーチ買ってください」
「へ?俺が?えっとその」
「ショルダーでもいいです☆」
「ふう‥好きな色は?」

人間というものは、とかく何やかやと出費がかさむものだ‥
女性用の鞄の他に屋根の塗料。
然し‥鞄を提げた人魚に森の中の赤い屋根‥どちらも悪くない。
そして人間は、明日も労働に励むのであった。

☆終わり☆

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