【でぃおまる子ちゃん】
夏の思い出・前編
まるちゃん、お薬を売る「うぅんむ。久しぶりだな。
そなた等の、ハアトの中に☆まるちゃんだ。
我には経験が無い故、よく解らぬのだが、この世には悩める者が溢れているようだな。
まあ、多分その内容は欲望だの、渇望だの、羨望だの、現世の欲得が絡んだものが殆どだろうとは思うが。
仮にそれが与えられれば、更に追い求め、仮に断ち切られれば、すぐに絶望する。
この世を騒がせておる愚かしくも浅ましい事件の数々、そなた等も存じておろう‥
それもこれも、元はと言えば下らぬ悩み一つ、己で努力もせずに、他者に頼らんとするから、『少しばかりまし』程度の馬鹿者に易々と騙されて、醜態を曝す羽目になるのだ‥破滅するほど何故悩む。
うむ、丁度よい。
一つ彼等を悩みから救うついでに、あの用事をも済ませるとするか。
何分、我は悩みそのものの経験が無い故、最も確実、且つ手っ取り早い手段を用いるとしよう、クックック・・どれ早速始めるとするか!!」
ここは金羊亭の店先。石畳に敷物を敷き、怪しげな薬瓶を並べているまる子。
「えーー薬ーー。薬はいらんかえーー」
「ちょっとちょっと貴方!!店先で商売しないで下さ‥げっ!でぃ、でぃお‥」
「むぅ?おお、そなたはこの店の看板娘か。実際娘と呼べる歳かどうかはともかく我に何か用か」
「用かって、止めて下さい、そんないい方。
何を売ってるんですか」
「見ての通り薬物、否々、お薬だ。
世の中の悩める者共を救うべく、我にも何か出来ぬかと思ってな。これさえ飲めば忽ち解決、効果の程は保障する」
「どんなのがあるんです」
「うむ。
まず馬鹿が治る薬。
貧乏暮らしが終わる薬。
他者が気にならなくなる薬。
楽ーーになれる薬。
現世に溢れる醜い事象がすべて見えなくなる薬、等々、多々取り揃えておる。
全て中身は同じだがな、フフフ・・・そうだ、そなたにも記念に一本呉れてやろう」
「結構ですっ!!」
「むぅ?
慎ましい奴・・よし、褒美に2本呉れてやろう」
「止めて下さいっ!!
大体そんな物、買う人居るんですか!?」
「飛ぶように売れておるぞ‥老若男女、皆それぞれに、悩みを抱えておる物だな‥内容までは問わなかったが自分の悩みを、他者の意見か薬物で何とかしようと目論むものは、遅かれ早かれ、似たような結果に至る。
問題あるまい?」
「な、何て事を・・・大体貴方は、そんな事しなくても、お金に困ってなんかいないじゃないですか」
「困る困らぬ以前に、必要ないのだ。
然し。この度とある事情で若干必要になった‥それ故、小遣い稼ぎを兼ねてな、このように」
「なにゆえでしょう?」
「ウフフフ、内緒だ♪
そういえばそなたらは、五人姉妹であったな。では二本といわず人数分呉れてやろう‥皆並んで、腰に手を当て、こうぐっとな、ぐっと」
「いい加減にして下さい。兵士さんか勇者さん呼びますよ!!お願いですから帰ってくださいっ」
「ふむ、そうだな。
いい感じに売れた事でもあるし。
邪魔したな、失敬する」
手早く店をたたむまる子。
「ふう、つかれた‥ってああーー!!こらーーっ!!こんな薬置いてかないで下さい!!」
さて。自宅にて、硬貨を数えるまる子‥
「ふむふむ♪まあこれだけあれば充分だろう‥やはりこういった事は、己自身が額に汗して、達成する処に意義がある。
まあ、そなた等も楽しみに待っているがよい、ククク・・
むぅ?
薬の成分に、問題は無いかだと?
心配するな、誰でも迷宮死の世界を経て、その後、紆余曲折だの擦った揉んだの後、また現実世界に戻れるようになっておる。
死の世界さえクリア出来なかった場合は知らぬがな、ハッハッハ★
精々修業に励むがよかろう。
ではな。近いうちに又会おう☆」
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