【黒猫ぽすと】

―お返事を書いた日の巻―

「ツチノコとはにゃにか? このようにゃ姿をした、蛇の一種にゃのですが、はいたまるさん♪」
「ドラゴンに踏まれたの」
「食べ過ぎじゃない?」
「ぶぶー☆りもんさんもたまるさんも不正解。
コブラって首広げるでしょ? あんにゃ感じだと思うにゃあ」
「思うだけじゃない。それも正解じゃないんでしょ」
「まあ幻想動物の一種かもにゃ、おまえみたいに。
では最後の問題、人魚とはにゃにか?」
「わたし♪」
「ぶぶー。はいたまる☆」
「あのね、お腹が空いた船乗りさんが、アザラシ見た時の気持ちー」
「ちょっとタマルちゃん‥いくらあなただって怒るわよ。私が人魚っ!」
「惜しいっ!正解はジュゴン。ほら、こんにゃ姿してんの。不細工でしょ♪」
「きゃはははははは☆」
「ちょっとそれ見せて‥」
「その肉は大変にゃ美味だそうだが幻想どころか国際保護動物で、捕まえたら罰せられるんだって。おうちの近くの川に泳いでこにゃいか、に゛ゃっ!痛い痛い、にゃんであたしが叩かれんのっ!」
「ふざけんじゃないわよこのお猫っ!何でわたしがジュゴンなのよ、このっ!」
「お姉ちゃんいじめちゃだめー‥」
「これは苛めじゃないの、失礼な猫ちゃんに愛のお仕置き☆とどめに背中に乗るから、タマルちゃんもこっちおいで」
「わーい♪のしっ!」
「に゛ゃうー、重いー!」
「わたしは重くないっ!」
「たまるも重くないよ☆」
「にゃに言ってる重すぎ、誰かー!助けてー!」
「ふふんだ♪あれ?ビリー君だ。手紙持ってる‥待ってね、開けたげるね」

窓の外にビリーが居る。流石に震えているようだ。
「よしよし、こんな猫ちゃんの為にご苦労さま。暖めてあげるね☆」
「きゅーーーいー‥」
「りもんー。こんにゃってどうゆう意味よ。窒息しちゃうでしょ、はにゃしてあげにゃさい」
「そぉ?喜んでるみたいだけど。ね、ビリー君」
「きゅい♪」
「びりいのすけべ。にゃに考えてんの‥まあいい、にゃんか可愛いお手紙だにゃ‥最近寒いし、お外出たくにゃいんだけど」

ピンクに花柄の便箋‥
『ご機嫌よう黒猫さん。私はアルマといいます。馬車から貴女を見て、御者に聞いて、ポストの事を知りました。
あの、つまらない用事で申し訳ないのですが、この手紙に御返事を戴けませんか?付き添いの人が一緒でないと、外出できないのです。
別に病気でもないのですが‥お願いです、もし戴けたら、私からも又返事を書きます』

「にゃにこれ。どゆ事」
「要するに文通でしょ♪出られないって事は、たぶんお嬢様かな?それもかなり過保護な」
「かほごって何のこと?」
「大事にし過ぎって事。タマルちゃんはまだ小さいから良いけど、大きくなったら、ね☆」
「お返事だけにゃら楽でいーにゃあ♪でも本当にそれでいーのかにゃ」
「良いんじゃない?書いてあげなさいよ」
「むー。にゃに書けばいーんだろ」

扉をノックする音がする。
「お茶の時間ですー☆」
「あー、にのん。持ってきてくれにゃい?」
「だめですー。降りてきてくださいー♪」
「にのん、今日はなあに」
「南瓜のパイですー。タマルさんのお好きなー♪」
「わぁ、ありがとー☆」
「あたしはお醤油味の煮っころがしの方がいいにゃ」
「夢のない事言わないで下さいー‥」
「お返事どぅするの?」
「後で考えるかにゃあ」
「はいー?お返事って何の事ですかー?」

お茶の席で。
「…文通ですか、素敵ですね♪何か気の利いた事でも書いてあげて下さい」
「でもどんにゃ事書けばいーの?にゃんしーはお手紙とか書く事ある?」
「…ええ、たまにですが。何も特に気取った事を書く事はないんですよ?いつも話してるように、普通に」
「そゆもんかにゃ‥」
「でも外に出られないなんて不便っていうか、ひどいですー。室内犬だって、お散歩は必要なんですよー」
「ニノンちょっと、何て事言うのっ!ハハハ、ダメでしょ犬と一緒にしちゃ」
「あう。失礼しましたー」
「まあ書くけど、どこ届ければいーのかにゃ」
「ポストの場所知ってるなら御者って人が取りに来るんでしょ」
「何処の人か解んないなら、私が見張っててあげようかっ♪」
「…リシェルさん。だめですよ付いていって覗いたりしたら」
「ばれてたかアハハ。でも気になるじゃない」
「あたし行ってあげるの。物陰で見てて、突き止めといてあげるの★」
「…ルディアさん?」
「心配ないの。あたしなら目立たないの。ビリーちゃん、一緒にいこうね♪」
「きゅい!!」
「そんじゃるりあ達に任せた。あたしも頑張ってにゃんか気の利いた文句でも、考えてみるかにゃ」
「OK!!任しとくの☆」
「ぷちがーごいる&ぐれーたーふぇありぃ?充分過ぎる程目立つ気がしますー」
「エンジェルはもっと目立つの」
「私達は羽消せますー!」
「もー。ちゃんと報告するから、怒んないで欲しいの‥それにあたし、寒さも暑さも感じないから、張り込みも平気なの♪」
「張り込みって、貴女」
「そんじゃ書くとするかにゃっ♪まずはご挨拶から」
「気取らずにね。ちゃんと普段通り、なをにゃって書くのよ☆」
「煩いにゃ、この人魚は」

そして。
『ういっす、あるま。
黒くにゃいけどせりあだよ。本当はちゃんと書きたいんだけど、うちの人魚が、普段はにゃしてる言葉で描けってゆうから。
あいつは明日から、言葉の最後にぴちって付けるといいにゃ‥お返事だけにゃら幾らでも描いてやるけど、その前におまえってどんにゃ奴?それが知りたい。そんじゃ♪』

『セリアさんっていうの?綺麗な名前‥さっき紙に綴り書いてみたら、アリスになったけど偶然だよね♪
でも人魚って!一緒に住んでるの?良かったら、御家族の事とか、教えてほしいな‥私の事はね、えーと。実は今ここに、ルディアちゃんとビリー君って子が、窓から入ってきて座ってるんですけど☆この子達に聞いてね。
私も自由に外に遊びに行きたいな‥ねえ、飽きた何て言わないで、これからも御返事書いてね?
ちなみにルディアちゃんは、お茶もケーキも手を付けません。どうしてなのかな‥』

『ああ、るりあ‥じゃにゃいルディアは特別にゃ妖精だから。食べられにゃいだけ、気にしにゃいでね。
後あたしの家族にゃんだけど‥エンジェル四人、例の人魚、あるまのお家に行ったやつ、後あたしの妹分のハイフラワー。それとお家のそばの洞窟に、ドラゴン五人。
後、普通じゃにゃいけど普通の人間が一人‥こいつはあたし達にも黙って、どっか遊びに行っちゃうようにゃ奴だけど、たんびにお土産持ってくるから見逃してあげてる。こんにゃもんかにゃ♪
さっきるりあに聞いたけど、あるまって本当に絵に描いたようにゃお嬢様だったんだにゃー☆どんにゃ生活してるの?』

『どんなって‥窮屈☆子供の頃は、これはしなきゃいけない事なんだって思ってたけど、今はちょっと‥外行けないし、お話も自由に出来ないし、お茶会の時も、それぞれすごく離れた席に座って、堅苦しいお話しかしちゃいけない。
本を読むって言っても、内容調べられて、俗な本?そういうのは読んじゃいけない。
セリアさんが羨ましいの。これ内緒ね♪
ばれたら又お小言聞かされるから‥ねえ、俗な本って、どんな事書いてあるの?』

『んーまあ、色々あるけどにゃ‥趣味が合えば役に立つけど、合わにゃかったらほんとにクソの‥ごめん、あるまは汚にゃい言葉は嫌いだよにゃ。
そーだ、こにゃいだりもんが、うちの人魚のにゃまえだけど、ポエム書いたからおまえにも読ませろって言って持ってきたの。
まだあたしも読んでにゃいんだけど。たぶんみんにゃ、趣味はともかく、こうゆう感じじゃにゃいかにゃ?
今から写すね☆題名はぁ、ふにふに猫ちゃん。‥あの野郎。まあいいや、ええとね‥

「叫びたいけど言えない人も、
殴りたいけど出来ない人も、
みんな一緒に森においでよ。
楽しい事が待ってるよ。

柔らかくって、
暖かくって、
触るとふにふにしたものが、
貴方が来るのを待ってるよ。

だけどいきなり呼んじゃだめ。

目を閉じて、
深呼吸して、
暖かい風が吹くのを待って、
それからゆっくり目を開けて。

するとほら、
貴方の周りに、
にゃうにゃうにゃんにゃんにゃごにゃごにゃんにゃん
タンポポみたく猫が咲く。

軽めにきゅっと、
踏んでごらん。

ふにふにしてて、
ほら気持ちいい♪」

ごめん、腹立ってきたからこれでやめる。
あいつ後で尾ひれに歯形の刑だにゃ‥
ちなみに二番はね、ありんこみたく猫が湧く。っておいこら!
歯形二つに増やそうかにゃ‥でんぐり返りをして御覧って、ふざけんにゃっ!
お代はたったの三千円☆‥歯形三つ。
決定。
んじゃあるま、あたしこれから、種の誇りを賭けた決闘へと赴くから、又今度ね』

『ごめんセリアさん、笑っちゃった‥
でもいきなり決闘とか、乱暴な事しないでね?
この手紙の御返事来なかったら、淋しいよ‥私は喧嘩する人も理由もないから、やっぱしちょっと羨ましい。
ビリー君は喋れないけど、ルディアちゃんが色々話してくれるから、少し様子が解るんだけど、いっつもそんな感じなんだね。言葉遣いなんて気にしなくて良いから、普段の感じで書いて♪
楽しみにしてる』

『あたしが人魚ごときに負けるわけにゃいでしょ☆まあ自分が悪くてお仕置きされる時はそうでもにゃいけど‥
いっつもあんにゃ風におちょくられてるんだよ、どう思う?
ちょっとしか悪い事してにゃいのに。あるまは悪戯にゃんか、絶対しにゃいんだろうにゃ‥もし退屈にゃ毎日に、めりはりを付けたいって思うんにゃら、いくつかネタを教えてあげるよ?』

『ううーん‥思いつかないなあ。みんな真面目だし、いちいち怒られそう。私の自由になるものなんて、飼ってるいたちと植木鉢の花くらいだから‥毛の長い子でね、確かふぇれーとかいうんだけど、忘れた。
フェルマって名前付けて、可愛がってるんだよ。狩りも出来るそうだけど、させないの。必要ないから♪
後ね、花にも心があるって聞いたんだけど、ほんとなの?』

『本当みたいだよ。フローラに聞いたんだけど、あ、エンジェルの一番お姉さんね。会話や対話はにゃいけど、生き物はみんにゃ、心と心で共鳴できるって。勿論、悪いだけの奴も居るけど。
でも特に植物は、あたし達のいい感じに共鳴して元気ににゃるし大きにゃ実も付くって。
言葉がにゃいし考えにゃい分、ずっとすにゃおで敏感にゃのかもって。参考ににゃった?』

『すごいね、いいお姉さんが居るなあ。
貴方達みんな、お茶会に呼びたいんだけど、許してもらえるかどうか‥ねえ、ルディアちゃんに道聞いて、今度尋ねてきてくれない?
私は貴方のお顔は知ってるけど、貴方は知らないでしょう?とにかく一度、会ってみたいよ』

「行く?案内するの♪」
「きゅーい☆」
「行っても良いけど、いきにゃり摘み出されにゃいかにゃ‥すごく厳しいお家みたいだし」
「大丈夫、見つかったらさっと逃げればいーの☆」
「それじゃ却って怪しまれますー。普通にですー、普通にー」
「ま、そーかもにゃ、あたしも顔くらい知っときたかったし。んじゃるりあ、案にゃいお願い」
そして。街の中心近くの、大きな邸宅。「うわ、お城みたい。にゃん人住んでるんだろ」
「あんまし住んでないの。家族何人かと、使用人が二十人くらいなの」
「ふーん‥塀も高いにゃ。乗り越えられにゃくもにゃいけど」
「ちょっと、だめなの!」

聞かずに跳躍。塀の縁から身を乗り出す。
「こらっ、そこの猫娘!」
「にゃうー‥早くも見つかったか☆」
「ほおらやっぱし。お馬鹿なの★」
「にゃうーではない!早く降りなさい!」
「ちっ、仕方にゃい」
降りようとした時、沢山ある窓の一つに、金色の髪の少女が見えた。
こちらに気付いたらしく、驚いた様子で見つめている。
「あ!おーいあるまー、訪ねてきたよー♪いま怒られて、降りる所だけどにゃ」
「んー?アルマお嬢様を知っているのか」
「こんにゃ出会いで悪いけど、あたしせりあ。あるまに宜しくって言っといて」
「セリアさーん!」
アルマが窓から乗り出して手を振っている。
「おーう☆にゃんだ美人じゃにゃい。今度お茶会に呼んでねー♪」
「お、お知り合いでしたかこれは失礼‥」
「気にすんにゃって。取り合えず今日は帰るけど、そん時は宜しく」

‥文通で出来た、初めての人間の友達。
ぽすとの仕事が、実を結んできたかな?

☆おわり☆

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