【黒猫ぽすと】
―お散歩日和の巻―
「だ―から帽子にゃんて要らにゃいってば」
「可愛いと思うけどなぁ。あなた年中似たような格好じゃない」
「ったくこのお洒落人魚‥この方が遠くから見ても、直ぐあたしだって判るからい―の」
「そのおっきな耳が邪魔?穴開けてあげるよ♪」
「それじゃ勿体ないです―同じ布地で―、耳カバー付けた方が可愛いです―♪」
「おまえ等あたしをど―したいの‥陽射しが気ににゃる季節でもにゃいのに帽子にゃんか要らにゃいっ!」「でもタマルさんの帽子、じっと見てました―☆」
「あ―。あれは、いい匂いがしたから‥とにかくカーテンみたいにゃ服着てにゃいと帽子にゃんか似合わん!!‥お散歩行ってくるっ」
「気が変わったらいつでも言って下さい―♪」
「わたしデザイン考えとこ☆お帽子猫ちゃんとか」
「見てみたいですけど―、また喧嘩になりますよ―」
おひさまきらきら、風は穏やか。空気はひんやり、足元あったか。今日は絶好の、お散歩日和。
「ま―ちょっと被ってみたくにゃったけど、ど―もイメージが湧かにゃい‥お耳がにゃ―。やっぱ隠れると不便だし‥」
「セーリアちゃん☆」
「あ、るりあ。おまえもお散歩?」
「えへへへ、聞いてたの。お帽子欲しいなら、あたしが変身したげるの」
「え―おまえ頭に乗っけて歩くの?」
「何よぉ全然重くないの。あなたの好みのデザイン教えてほしいの♪」
「‥おまえの帽子の、もっとこう、板がみょ―んって広いやつ」
「尖ってないの?」
「うん、出来る?」
「簡単なの☆リボンも付けてあげるの、赤でいい?」
「どっちかってゆ―と今日は空色かにゃあ♪」
「おっけ―なの、めたもるふぉ―せ★」
ルディアの姿がぼんやり霞み、セリアの頭にまとわり付く。
「にゃう!にゃんか、変にゃ気持ち‥あ。ちゃんと、お耳も出てる♪」
「きゃははは、くすぐったいの、ぴくぴくさせちゃだめなの!あたしもみたいの、水溜まりでも覗いてほしいの」
「う―んと、あるかにゃあ?探してみる」
大きな樹の根元に、小さな水溜まり。覗き込むセリア。
「わあ、いい感じなの!あたしのセンス☆」
「もでるのあたしは?」
「モデルって‥あなた何時からそうゆう子になったの★ちゃんと可愛い、素敵、特にお耳が♪」
「にひひひ、そぉお?って、おまえにゃ―!!」
「怒んないで欲しいの、可愛いから誉めてるの☆」
「そぉお?にのんといい、りもんといい、おまえといい。にゃんかおもちゃにされてる気がする、あたしのお耳。えい、動かしてやる」
「きゃははは、やめるの―!あのね、同盟結んだ子達のとこ、見回りに行こうと思うんだけど、一人で回るの大変だし、付き合ってほしいの。いい?」
「そゆ事か。い―よ、たまにはあたしも自分でぽすと覗いて見にゃくちゃ」
「それじゃ一緒に行くの♪てくてく歩きでのろいけどあなたの頭の上に乗ってれば楽なの―☆」
「にゃにそれ。ま―いいや、そんじゃお散歩る―と変更‥遠出しましょ―か♪」
森や林や草原が入り交じってるこの辺り。まだ人間の手は入り込んではいない静かな所。
「それにしても子達って。おまえより年上の人も大勢いるんだからにゃ」
「あたしの概念は、いい子と悪い子だけなの―★年齢なんて、どうでもいいの」
「‥おまえらってにゃん百年もにゃん千年も生きていそ―だしにゃ」
「あはは、そうかもしれないの。あたしも自分の歳なんて、忘れてるの」
「ふ―む。でも羨ましくは、やっぱしにゃいにゃあ。比べてすごく短くても、その分密度の濃い一生が、送れる気がする。あたしお婆ちゃんににゃったら、どんにゃ感じだろ」
「三角帽からお耳を出して人生相談のお婆ちゃんなの‥やだ、はまってるの、きゃははは☆」
「おまえにゃあ。人の行き先、2秒で決めるにゃっ!」
「大体のビジョンは決めといた方がいいの―。ほんとにお婆ちゃんになった時、慌てなくて済むように備えとくの♪」
「にゃん年先のはにゃしですか全く‥それにおまえ、それでもあたしは帽子からお耳出してるわけ?」
「お年寄りにもチャームポイントは、あった方がいいの」
「ほお‥んじゃ、もしあたしがこの辺シメて女王ににゃったら、種族や風貌を問わず、全ての者に、猫耳の着用を義務付けてやるからにゃ覚えてにゃさい☆」
「きゃ―!!そんな世の中いやなの―!!ってあなた、そんな野望持ってるの!?」
「おおよその将来的ビジョンだよ★結構イケてにゃい?」
「‥あなたのような子にはすごく長いお小言と、ちょっとしたお仕置きが、必要だと思うの‥お家帰ったらエンジェルちゃん達に言い付けてあげるの♪」
「ちょっと待って、るりあ冗談!冗談だってば」
「ほんと―?あなた本気でそうゆう事、考えてそうでやばいの」
「考えてにゃいって、たまにしか。みんにゃあたしとおにゃじ考えに、にゃればい―のにって‥」
「あれあれ、なんか淋しい感じなの。いい子も悪い子も、それぞれに同じ事、考えてるって思うの。あなたの考えはどんなの?」
「決まってんじゃにゃい♪明るく楽しく綺麗で可愛く爽やかに☆風貌も種族もどうでもいい、みんにゃそうにゃれば、みんにゃにゃかよし、平和ににゃる」
「なあんだ安心したの‥でもそれには、沢山の努力と、沢山の決まり事が必要なの‥結局そんな風に居られるのは、ほんのちょっぴりの子達だけだと思うの」
「はい、そのと―り。無理矢理やろうとしたら、まず排除しにゃきゃいけにゃいやつの方が、断然多いんじゃにゃいかにゃ」
「頭も心も無いも同然の魔物とか?それはあたしも賛成なの♪でも数で言えば、そうゆうのが一番多いのは人間なの★」
「それにゃんだよにゃあ‥にゃんであんにゃに立派にゃ教科書持ってて、全然身に付いてにゃいんだろ。解んにゃいよにゃ―」
「ああ、あの本の事なの?そりゃそ―なの、この世で幸せに暮らしたいって人ならあの本に書いてある事は、出来るだけ無視しないと、無理だと思うの♪」
「確かに。そして地獄に堕ちる訳だよにゃ‥そんにゃ馬鹿もんは出来るだけ減らにゃければいけにゃい」
「そこであたし達の出番なの―☆」
「うん♪あたし達が取りあえず協定結んだやつらに、然るべき教養を与えてあげにゃきゃ」
「ポストの依頼こなしつつ、さり気なく、なの。でないと大抵の子は逆らうと思うのだって人間がああだもの」
「それをゆうにゃ‥きっと大丈夫☆でもあんまし面倒にゃ事は嫌だにゃ。あいつ等だって、もらるとかぽりしいとか持ってると思うし出来るだけ自分達で解決してほしいにゃ♪」
「あなたが先頭切ってそんな事言ってどうするの―!!やる気あるのか無いのか解んないの★」
「‥つまんにゃい用事で、あたしのお昼寝邪魔する奴は許さん★」
「はぁ‥あなたって本当に性格まで猫そっくりなの」
犬人、いやコボルトが住んでる森に着いた。よく見るとあちこちに、質素だが可愛い感じの、丸いお家が建っている。まだまだ葉っぱが茂るには早い‥小さな窓から細い煙が立ち上っている。さてポストは‥
「えうれかの鎮静化か―。楽にゃ依頼だったにゃ♪」
「あなた何時の間にあんな事出来るようになってたのすごいの―」
「もともと夢のにゃかで生まれたんだよ、あたし。狭い範囲にゃら夢の現象化ぐらいできるよ☆」
「あたしがやったらそこらの木々も、あの子達のお家も、めちゃくちゃになっちゃうの‥あなたの方法、平和的で素敵なの♪」
「そぉお?にひひ♪お土産のお菓子ど―しよ。どんぐり製みたいだけど」
「あたし食べられないし‥タマルちゃんにあげるの☆」
「だよにゃ、そうしよ」
「次はオークちゃんの集落なの―☆」
「よ―ししゅっぱ―つ!!」
乾いた草のいい匂い。萌えだす葉っぱのいい匂い。春はもうすぐ。まだ少しだけ、寒いけど。
「どうしたの、なに考えてるの?」
「いや、ばたばたしてる内に年こえちゃったけど、去年は色んにゃ事があったにゃ―って」
「そいえばそうなの。正直あたし、あなた達ともう何年も一緒に暮らしてる気がしてるの♪これは間違った感覚なの?」
「自然にゃ感覚だと思うよまったりゆったりのんびり‥これが平和にゃんだと思う♪あたしだってあのお家もうにゃん年も‥新築したけど☆住んでる気がするもん」
「あなた本当にずっと前から住んでるんじゃないの?あのお家に」
「去年からだよお♪もしあのお家に来にゃかったら、今ごろ独りぼっちで、段々消えてく場所で、どうしていいか解んにゃくて、にゃいてたかも知れにゃい‥」
「聞いただけで悲しくなるの‥でもそれも、昔の話なの。ずっとそうだとだれちゃうけど、平和のために頑張るの!」
「だれにゃいように労働するんじゃにゃい♪ちょっとしたきっかけと、たくさんの努力で、誰でも幸せににゃれるってあたしは思うにゃ。ま―柄じゃにゃいけど、暮らしが倹しいほど、それは強く感じられると思う」
「何でも有り余ってたら有り難みも湧かないの★あなたの言う通りなの。あの子達や、まだ知らない子にも、そのちょっとしたきっかけ作ってあげたいの」
「うんうん♪」
「ふだん魔物って馬鹿にしてる子に、ごきげんよう、御身のうえに平安あれ。なんて挨拶されたら、いい気な人間もびっくりすると思うの♪」
「そうそう☆っておまえ人間嫌い?」
「基本的に嫌いなの。嫌いじゃない人も居るけど」
「ぽすと発見―♪そっか、まあ色んにゃ人に会ってみにゃいとね。先入観だけで判断するのもあんまし良くにゃい」
「それもそうなの‥なんて書いてあるの?」
「よく解んにゃい‥えっとこれにゃんて読むの」
多少乱雑だが、煉瓦を積み上げた立派なお家。簡素な煙突から、美味しそうな匂いの湯気が上っている。
「お料理の指導の依頼なんてのも、よく来るの?」
「たま―ににゃ。とにかくシチューは、ただおにゃべに物いれて煮りゃいいってもんじゃにゃい」
「食べる事には興味無いけど、あなたお料理も上手なの。すごいの」
「それ程でも♪あいつらのお料理手伝ってれば自然に覚えるって。やっぱし美味しくにゃいと、食べてて嬉しくにゃんにゃいし」
「美味しく食べれば、心も豊かになるものなの?ちょっとあなた達が羨ましいの‥オークちゃん達も、これでもっともっと、心豊かな子達になったら素敵なの♪」
「いくら相手が強くにゃくても、無駄にゃ喧嘩は避けたいしにゃ☆たまる殿はどうしたにゃんて言われて、少しむかついたけど」
「タマルちゃんは、親善大使なの♪怒んないの、あなたはお姉ちゃんなの」
「別に怒ってにゃいけど。ふぁ‥にゃんか眠たい、おにゃか空いてきた」
「そお?あたしには解らないけど、そろそろ帰る?ゴブリンちゃんの森の方はビリーちゃんに頼めばいいの、明日にでも」
「そっか、おまえ、おにゃかも空かにゃかったんだよにゃ‥こっから丘が見えるけど、ちょうど裏の方だし、そろそろ帰ろ♪」
何時の間にか陽も傾いてきた。真冬ほどでもないが、冷たい風が吹いてきた。背の高い枯草をかきわけながら細い道を進む。
「びっくりするよにゃ事件にゃんにもにゃかったね」
「それが平和なの☆すごく良い事なの」
「そ―だけど、やっぱりにゃんか、わくわくするようにゃ事件でも起きにゃいかにゃ♪お仕事だけじゃにゃんか、頭のにゃかが、ぼんやりしてくる」
「こら、不謹慎なの。あたしも実は同意見だけど、そんな事望んじゃだめなの★」
「む―。仕方にゃい、にゃんか刺激的にゃ遊びでも考えるかにゃ‥」
「それがいいの♪」
そして森のなかのお家。
「お帰りなさい―☆見回りどうでした―って、わあ!素敵な帽子です―」
「帽子?そんにゃの‥ああこれ、変身るりあ♪」
「ルディアさんでしたか―♪いいセンスです―」
「えへへへ、そお?セリアちゃん自身のリクエストなの」
「なんですか―、やっぱり欲しかったんじゃないですか―☆」
「にゃう‥いや偶然、お散歩の途中でるりあに会ったから」
「照れなくていいの♪」
セリアの頭を離れ、元の姿に戻るルディア。
「あ―猫ちゃんお帰り☆留守の間に帽子つくってみたんだけど、どうかな?勿論あなたの為のよ♪」
「え?りもん本当に作っちゃったんだ」
「作ったよぉほぉら♪やっぱ、お耳は出てた方がいいよね」
‥さっきまで、ルディアが変身していたのと、ほぼ変わらないデザイン。ちゃんと、耳を出す穴も開けられている。
「‥りもん」
「なぁに手握ったりして」
「‥おにゃか空いた」
「やめて。そんな目で見ないで」
「おにゃか空いたっ!」
「きゃああ!!ちょっと誰かこの猫ちゃん、どっかやってぇ!」
「セリアさん―、ご飯なら用意してあります―」
「‥平和な一日も、この子一人のお陰で台無しなの」
「あいたたた!ばかっこのお猫っ!」
今日も平和。いい天気だ。
☆おわり☆
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