【森の中のお家】
「どこまで行くの?」
「街突っ切って外」
「にゃんで街のにゃかじゃにゃいの?」
「ま、色々あってよ。街ん中じゃ暮らしづらいんだわ」
「にゃんかやらかしたの」
「待てや、こら。こう見えても品行方正だっつうの‥ま行けば分かるよ、くれぐれも皆と仲良くな」
「相手の出方によるにゃあ‥むかつく奴には合わせてあげにゃい★」
「皆いい娘といい奴だって心配すんな」
「ほんと―? 喧嘩ににゃったら、手加減しにゃいからにゃ‥」
「止めとけ、皆、目茶苦茶強ぇから★お前でも‥って聞けやこら」
「あ―にゃんか美味しそ―にゃのが一杯ある―☆」
「そりゃ売りもんだって。金と交換して、って。
本当に何にも知らねぇんだな‥」
「にゃによ。付いてこいって言ったのおまえでしょ」
そう、あれは少し前の事‥
「わかった、わかった付いていってやるから、もういい加減して‥」
「そうも行かねぇんだよ、一応決まりは守んねぇと。おらっ、今度はっ!ぞろ目が‥6個!?おっしゃあ!!」
「ひゃ―‥また駄目だったらど―しようって思った。おまえ本当しつこいにゃ」
「やるつったらやるんだよ
にしてもこれで60何回目だ?誰だよこんな阿呆な決まり作ったの」
「あたしじゃにゃい事は確か♪」
「知ってら、な事ぁ。さて、付いてきて貰うぞ‥はぁ」
「いいけど、ちゃんとあたしのお部屋とか、用意してあるんだよにゃ?」
「部屋ぁ?ハ!お家があるぜ、既に家族もって、お前皆と仲良くやって行けるよな?頼むぜ、喧嘩はともかく仲違いは無しだからな」
城壁で囲まれた街。
その外は、森や林や草原や丘や山地が広がっている。
要するに自然一杯とゆう事だ♪
然し困った事に、所謂望まれざる者も一杯いて。そいつらの脅威から街を守る為、こんな城壁が必要になったと言うわけだ。
もっとも市民でもなく、それなりの心得や然るべき理由がある者は、自由に出入りできる訳だが、
「外に出たよ?こっからまだ歩くの?」
「すぐあすこに森が見えんだろ?ほら丘の麓に」
「はいはい、あのにゃか?」
「おぅ。あんましでかくねぇけど、その内増築する予定だ、我慢しな」
「ちゃんと、ご飯も食べれる?おにゃかが空くの嫌だからね」
「てりめぇだろ‥但し、猟に行く時は手伝えよ」
「まあその位いいけど★」
様々な種族、様々な文化。それらが渾然一体‥いやばらばらで混沌とした世界。既に過ぎ去った世代も可成あるらしい。遺跡があちこちに残存している。
ご多分に漏れず、彼らもそれぞれに何とかの神とやらを信奉している。現世の欲得をからめた、都合のいい神々。各々得意不得意があるらしい。
そんなもん拝んでんじゃねぇよ‥まあ仮に説得しても実際裕福な者はむきになって反抗するだろうし、そうでない者は更に反発するだろうけどな、希望をも捨てろと言うのか、なんてよ。
やれやれ。
この森にもその一つであろう、名前も知らない神の祭祠場だか遺跡だかがあった。そんなもんの為に森一つ手付かずなのも勿体ないので、叩き壊してお家を建てた。現時点でドラゴン5名エンジェル4名、あとマベルとかいう可愛い奴が一匹。
ドラゴンは洞窟に住んでもらうとして、エンジェルも一緒に雑魚寝という訳にも行くまい‥雑魚がわらわら出てきて実入りもいいし、丸太小屋のような小洒落たお家を建ててあげた。何やらほこらの様な物があったが、それも壊してトイレにした。ちゃんと近くの沢から水を引いて水洗にした。台所兼釜戸も完備、中々いい出来である。
あとは風呂も考えねぇとな‥寒くなったら必要だろう。
「ここがお家?結構いい感じだにゃ♪」
「そうかい?まあ、まずは皆に挨拶してな」
「あ―、お帰りですか―♪わぁ猫さんがいます―」
「げっ、天使!」
「なになにおっきい猫っ」
「…違うでしょう、猫人の方ですよね?」
「ご機嫌よう、ようこそおいで下さいました♪」
「て、天使が4人‥おまえこれどうゆう事」
「はぁ?御使いじゃねぇよエンジェルだぞ」
「そうです―妖精さんとかと同じ種族です―♪」
「ん―もし私たちが本当に天使だったら、そこらのごたごたなんて今日中に片付けちゃうんだけどねっ☆」
「…リシェルさん、もしも何も私たちはエンジェルです」
「ええ、もし御使いの方々が本当にいらっしゃったらこの世で問題とされている事柄の全ては、その日の内に解決してしまうでしょう‥それに彼等の中には、女性の姿の方は、一人も居られないと書かれています」
「その通り。まあ認めねぇ奴のが多いけどな。お前解ったか?」
「にゃんとにゃく‥まあいいや、こいつがあんまりしつこいから、家族ににゃってあげる事にした、よろしく★」
「なんか乱暴っぽいなあ☆リシェルだよ、宜しくっ」
「…ナンシュアです。ここは良い所ですよ♪」
「猫のような人も居るんですね―。ニノンです―」
「フロレットです。宜しくお願い致します♪お互いに、仲良く暮らしていきましょう」
「にゃあ、おまえ。天使‥じゃにゃい、えんじぇるにゃのに、にゃんで全員にゃまえが違うの?」
「何でってお前、違って当然だろ、お前の名前は?」
「あたし?猫人だよ」
「はぁ?何だそりゃ」
「ま―猫さん、お名前無いんですか―?」
「猫人だってばニノン。そっかそりゃ不便かもねっ」
「にゃんで?しゃ―とか、しぇ―とかって猫って意味でしょ。いいんじゃにゃい?」
「…あまり良くないと思います。名前は貴女ではない他の方と、貴女とを区別する為に、必要なんです」
「これはどういう事なのですか?」
「いや俺も、まさか名前がねぇとは思わんかったし‥思い切って今考えて付けるか。フロレット何かあるか?」
「いえ、わたくしは‥ここはやはり貴方が命名なさるべきかと☆」
「うぅむ。お前も何かあるか?好きな感じの言葉とか台詞とかよ」
「あたし?ん―‥お昼寝とか、おにゃか一杯とか♪」
「いいのかよ、お前の名前それで」
「いや!にゃに考えてんの!にゃまえって大事にゃんでしょ!?」
「なら真面目に付き合えよ‥まあいい、幾つか考えるから好きなの選びな」
「え―それもやだにゃ、にゃんか一本に絞ってくれにゃきゃ♪気に入ったらそれをにゃのってあげるよ」
「出来るだけ可愛いのがいいです―♪」
「お菓子の名前とかっ☆」
「そんにゃの嫌」
「んじゃ漢らしい奴でいいか?」
「もっと嫌っ!!」
「しゃあねぇ、今週中に考えるよ‥たんびにゆうからお前決めてくれ」
「わかった★ところであたし、このお家でにゃにすればいいの」
「何って平和に仲良く暮らしてくれりゃ良いんだ。猟とかお使いとか何かの用事に付き合って貰うとかよ」
「ふ―ん‥別にいいけど」
「きゅい―!!」
大きな黒眼の、鳥のような動物が飛んできた。
「あっ♪小動物発見っ」
「目ぇ輝かすなよ‥こいつはビリー、家族の一員だ。喰うなよ、絶対」
「にゃによお、つまんにゃい。ふうん、たてがみ生えて変にゃ鳥」
「とか言いながらまじまじと見つめんな‥怯えてんじゃねぇかよ。ほら姉ちゃん達と一緒にお家入んな」
「きゅう―‥」
「んじゃ次はドラゴンの紹介だな」
「ではわたくしはお茶の用意を♪」
「お腹すいてませんか―」
「あたし?空いてる。ずっと歩いてきたしにゃ」
「用意したげるっ☆」
「…私はこの方のお部屋の準備を」
お家に入るエンジェル達。
「にゃあ、おまえ本当にいいの?にゃんか至れり尽くせりって感じだけど」
「気にすんな、もう家族なんだからよ。まあ有りがてぇって思うなら、あの娘等の家事とかも手伝ってやってくれよな」
「にゃう―‥そゆもんかにゃあ」
家のすぐ傍に、丘に開いた洞窟がある。時々ふわりと吹き出す風は、少し暖かい。
「どらごんは奥にゃの?」
「ああ、日々鍛練や猟に明け暮れてるよ」
「にゃん名いるの?」
「5名。赤と青と緑と金と黒の奴」
「やっぱしみんにゃ、にゃ前があるの?」
「おぅ、全員に。今のうちに教えとくか‥」
その時、脇の穴から金龍が現われた。
「むぅ?何だその者は猫人か」
「おぅアルギム。新しい家族だ宜しく頼むな」
「アルギムだ。むうぅ‥そなたからは悪夢の匂いがするなどういう訳だ」
「まあ、にゃんか、そゆとこに居たから」
「名は何と言う」
「まだにゃい」
「貴様、これは一体、どういう事だ」
「俺が知るかよ。今、可愛い奴を考え中だ」
「ふむ。まあ精々頑張れ。大方この者も、得体の知れぬ者に、好い様に扱われて居ったのだろう」
「やっぱそう思うか、あんたも。ろくでもねぇよな」
「んん?猫の匂いがすると思ったら猫人か」
緑龍が現われた。
「エシェルか。この者は新しい家族だ」
「そうか。エシェルだ、宜しくなこの辺りは静かなもんだ、鍛練したけりゃ遠出をするか、俺達に言うといい」
「普段にゃにしてるの?」
「鍛練か遠出して修業か、食い物の調達だな★」
「他の者はどうした」
「ハダスとテーナは出掛けてったな‥ザイトは水場じゃないか?」
「そうか。では、他の者に付いては貴様から説明してやってくれ。我々も行こう」
「よし行くか。じゃあな!」
ドラゴン達は出掛けていった
「てな訳だ、説明すっか。黒龍がハダス、赤龍がテーナ、青龍がザイトだ」
「めんど臭いにゃあ‥えんじぇるのにゃ前も、まだ覚えてにゃいのに。色で呼んじゃだめ?」
「俺ぁ構わねぇけど、たぶん怒られるんじゃねぇか」
「にゃう‥それも嫌だにゃ解ったにゃんとか覚える。取り敢えずあたし、明日からにゃにすればいい?」
「そだな‥家事手伝いの基本として、だな。料理の勉強でもすっか?」
「材料どんにゃの」
「そこらの怪物共」
「おお―!こんせぷとは?」
「コンセプトっておい。つ―か方針だな。醜い怪物も美味しく戴く、って所か」
「にゃあんだ、おまえ、はにゃせるじゃにゃい♪そゆ事だったら手伝ってあげてもいいよ☆」
「おし、決定!早速でっかい鳥でも捕ってくっか」
「鳥ってどんにゃの?」
「コカトリスとかバジリスクとか」
「お、おまえ‥幾らにゃんでも、いきにゃり」
「んだよ、でっかい方が良いだろ?」
「まあい―けど。いってらっしゃい」
「ちと待て、お前も行くんだよ。俺一人であんな重いもん運べる訳ねぇだろが」
「え―?どらごんが居るじゃにゃい」
「あいつ等は当然呼ぶけどお前も来い。鍛練ついでに丁度いいだろ★」
「ちっ、ったく人使い荒いにゃ‥」
「ん?何か旨そうな匂いがしてきたな」
「あ―ご飯が出来たんだ♪食べに行ってきていい!?」
「ああ、ゆっくり食ってきな。明日の話は後にすっか。だいぶ腹減ったろ?」
「うん♪所でおまえは普段ど―してんの?」
「どうって洞窟の部屋で寝たり、宿屋行ったり、出先で野宿したりしてんな」
「ふうん‥おまえも結構、大変にゃんだ」
ニノンとリシェルが歩いてきた。
「お話おわりましたか―」
「ご飯できたよっ♪」
「わ―い♪そんじゃお邪魔するかにゃ」
「お邪魔ってもう、あなたも家族なんです―」
「そうそう☆仲良くしようねっ」
ここは森の中のお家。
ここに来た者は誰でも平等、誰でも仲良し、で無くてはならない。
新しい暮らしに彼女が早く馴染むといいが‥因みに彼女を連れてきた者の名はMARCYと言う。
そしてしばらくして‥
「ごちそうさま―♪ふぃ―おいしかった‥ちょっとお昼寝してきて良いかにゃ」
「どうぞごゆっくり―。後でお片付け手伝って下さいね―☆」
「わかった。あんまし寝てたら起こしに来てね」
屋根に飛び乗り、丸くなる猫娘。
森の木々の間から、木漏れ日が射している。
空は深い青に濃い青に淡い青。
最高にいい天気だ‥
☆おわり☆
次の話
前の話
戻る
地下劇場
歌劇団ニュース
外に出る