【外れた予言】続き
by MARCY
「あぁお前も居たっけ」
「に"ゃうーっ★」
「だあっ爪磨ぐなっ!解った解った、悪かった!」
「むー★ちゃんと、あたしの事も言いにゃさいよぅ」
「ってもなあ‥。真実と正義と自由を知らなきゃ識り得ねぇ"夢の力"を最初っから飛び級で"持ってた"奴に‥今更、何言う?例えあれが、こっそりお前に仇を為そうとしても。何にも出来無ぇし為らねぇよ★」
「そっかにゃー☆」
「それに、あれに必要なのは対等に話せる"友人"的な存在でもある。お前も、皆と一緒に親しくあれに触れ合ってやってくれ」
「解った♪」
「あれは‥悪いが、こっちの"理"に縛る。見事、"理"を身に付けたら、あの世界に帰してやる★その時点で計画は完了する」
「やるだけやって、野に放つと言う訳か★」
「人聞き悪ぃ事、言ってんじゃねぇ。あっちでやって貰う事は言わばそのお膳立てだ‥"世界を救う"この、セットのプロジェクト。何とか、実現してやりてぇんだよ」
「ふむ。まぁ良かろう★あらゆる心有る者共の調和‥我々には最大の善行とも思えるしな」
「それには先ず、あの子を現在に"奪還"しねぇとな‥明日の仕事、頼んだぜ」
「任せにゃさいって☆」
すっかり夜も更けていた。ぽつぽつと小雨が降っている‥"あの世界"の明日の天気はどうだろうか。
そして。1週間振りの森の広場、"あの世界"。
「よく来てくれたなぁ。嬉しいぜタマルちゃん、あんたに会えて」
「えへへー♪あのね、お仕事が始まるのは明日からなんだよ。今日は、その準備に来たの☆お姉ちゃん洞窟の奥で、るでぃあと一緒に、その人を探しに行ってるの」
「準備とは?」
「貴様等が望んだ調停役‥人間と我々妖霊族の合いの子の娘を、現在の時間軸に呼び戻すのだ」
「なっ‥!あなた方は時間をも自由に操るのか!?」
黒竜のハダスと、タマルが芝生に座っている。周りをコボルトやゴブリン達が囲んでいる。
「我々には、其の様な器用な事は出来ぬ。あの馬鹿猫、否猫娘と特殊妖精だけだ‥それより土産だ」
「どらごんさんの、牧場で出来たチーズだよー♪」
大きな丸くて平たいチーズを半分に切った物。
「その内指南するが‥。貴様等の同胞も早く全ての者がこの様に、自活出来る者と為ると良いのだがな★」
「あ、有りがてえや‥」
「本当に、感謝する」
「気にしないでー☆皆で、頑張ろーね♪」
「アー!イイナイイナー☆」
「アタシ達モ欲シイナー♪」
妖精達も飛んできた。
その頃セリアの作った黒い卵、"夢の迷宮"の中では‥
「映像が、どんどんにゃがれて行く‥時間が戻ってるのかにゃ」
「過ぎた時間は戻せナイの。時間は、モノが変わったり、減ったりスル過程を表す言葉でしかナイの。今見てるのは、場所に刻まれた"記録"なの」
「写真とか、にゃがめるみたいに?そっか。これもらせんの名刺の力かにゃ」
「正確には、名刺の"意味"が発動シテるの♪コノ場所ならアノ娘の"記録"に辿り着けると思うの」
様々な"映像"が次々に現われては消えていく。
「あっ!こいつっ!」
「間違いナイの!」
「"まっしろい右手"で、捕まえよーか」
「映像は掴めナイの」
「にゃ事ゆっても!あーどっか行っちゃうー!」
「OKセリアちゃん、しっかりアタシ捕まえてるの!」
ルディアの体が、黒とピンクに光った。
「かるる、ばくく、いしゅ、ふれーる!ソノ娘を、今の時間に呼び戻すのっ!」
"その娘"以外の全ての映像が消えた。
「‥‥‥?」
"この世界"でハーフエルフと呼ばれる種族の、その少女は、困惑した表情で辺りを見回している。
「捕まえるのっ!」
「おっけーりあらいず!まっしろい右手ー!」
セリアの右手から、純白の光線が何本も飛び出した。
「そいつ捕まえてー!」
「きゃあっ!」
光線に絡め取られ、少女は藻掻いている。
「動かにゃいーっ!」
「左手も使うのっ!」
「もいっちょりあらいず!まっくろい左手ー!」
5つの黒い小さな珠が、少女の周りに現われた。
「そいつ掴んでーっ!」
忽ち黒い珠は指の様に伸び繋がり合って手に変じ彼女を掴んだ。
「痛ぁーいっ!」
「"右手"、"左手"!!そいつをあたし達の所に連れてきにゃさいっ!」
「ちょっとあなた、何するのっ!?この変な所、何なの?何処なのっ!?」
叫びながらズルズルと引き寄せられる少女‥
「にゃうっ★」
彼女に飛び付いて捕まえるセリア。
「捕まえたー♪」
「チョット、セリアちゃん!!アタシ挟んでるのっ★」
「くすぐったい☆ぐりぐりしないで!あなたシャーズの人でしょ?ここ何処なの?どうしてこんな事するの?」
「はにゃしは後!りあらいず‥おれんじの扉ぁ!」
「戻る前に、"両手"離シテあげるの★」
「ちょっと、戻るって何処に行くの!?」
「にう。"今の時間軸"★」
黒髪の少女を両手で捕まえたまま、セリアとルディアはオレンジの扉に入った。
"黒い卵"がオレンジ色に輝いて消えた。周りに居たコボルト達が駆け寄ってきた。
「おう、お帰りっ」
「待たしたにゃ♪」
「ただ今なの☆」
「誰だい?そのハーフエルフ」
黒髪の少女をジロジロ眺めるコボルト達。
「"調停者"にナッテ貰うために呼んでキタの♪」
「いや待った。‥知ってるぜあんた。俺たちの王子の、親友じゃねえか!?」
「私の事知ってるの?あなた達」
「やっぱりっ!知ってるも何も、あいつは全コボルトの王子だぜっ!?あんたが調停やってくれるのか!」
「やったあーっ☆」
「ねえ‥調停って、どういう事?」
「この星の、良い奴全部の調和と和平の為ににゃ☆」
「えぇ!?」
「全種族の、なの★」
「来てくれよっ!表の広場で仲間達が待ってる!」
「ちょっと待って。先にこいつ街に連れてってあげにゃいと」
「へ?何でだよ。この人、俺たちの仲間じゃねえか」
「人間の仲間でもアルの。人間の説得はコノ子じゃナイと無理だと思うの」
「あ"ー‥」
「そう、だな」
「ねえ、いきなり色々言われて、事情が全然、解らないんだけど‥」
「そうだよにゃ。歩きにゃがら説明する」
「1週間前までに起こった事教えてアゲるの★」
「そんじゃ街行ってくる」
「おい!」
「?」
黒髪の少女が振り向く。
「もし街の奴らが、あんたのこと悪く言ったら、」
「この森に来てくれよ!俺たちは、あんたのこと、大歓迎するぜっ♪」
「‥ありがと☆」
黒髪の少女はニッコリと微笑んだ。
「んじゃ行こっか。感動の再会が待ってるよ☆多分だけどにゃ」
「街、近いの?」
「コノ森出たらスグ見えるの♪ちなみに、アタシ達のコノ"お城"は森の真ん中なの」
セリアとルディアと黒髪の少女は洞窟の外へ向かった。
「街に入ったら、真っすぐ例の酒場に行きにゃよ」
「通行証、持ってないわ」
「にゃう?でもおまえは顔ぱすだよにゃ?」
「そんなに、有名じゃないわ‥私」
「セリアちゃん、直接送ってアゲるの」
「解った★転送使うけど、いいよにゃ?おまえ」
「何処へ?」
「"見えざる神の教会"♪」
‥直接転送を使ったのは正解だった。表の広場では、騒ぎが起きていた。
「これはこれは。人間の兵士共が我等に何の用か」
「はだすー。そんな風に言っちゃだめだよー」
「いいや気に入らねえ!帰れ帰れっ!」
「こぼるさんもー★」
「先日の大災厄は、知っているな?」
「何言ってんだよっ!奇跡の日じゃねえか!」
「お前達魔物にとっては、そうかもしれん」
「だが、各地より届いた通達によると、判明しただけでも十万人近くの人々が命を落としている」
「あっ‥」
「何か知っているか」
「お前達は、この場所で何をしている」
「先週、大規模な祝宴を開いていたが‥何を祝っていたのだ」
「無論、計画の成功を祝って居ったのだ」
「はだすー!」
「構わぬだろう。何れは知れて居った事だ」
「あの成功無しじゃ、次の計画の成功など有り得ませんでしたからな★」
「計画とは?」
「この星の、いい人全部が仲良くなる計画だよ☆」
兵士達は失笑した。
「馬鹿な。お前達魔物が良い人だと?」
「我々から見れば、狂暴な野獣にも等しいお前達が」
「ほう‥聞き捨てならぬな。我等から見れば貴様等こそ野蛮な畜生と然程変わらぬ様だがな」
「何っ!?」
「喧嘩しちゃだめー!」
「いや俺たちも賛成だ。あんた等今まで俺たちの仲間に何してきた!?」
「‥この様に考えていいな?お前達は、此処を根城に、我々の街への侵攻を目論んでいると」
「違うよー!仲良くするためだってばー!」
「‥悪いが下がって居れ。もう解って居ろう。この様な人間の、程度と本質は」
「もー!お姉ちゃん早く帰ってきてー!」
その頃、書斎では。
「んで、その前後の"時代"幸福の名の元に統治する‥その後は知らねぇけどな」
「うわー無責任ですー★」
「…それより今日は」
「日曜ですね。もう御一方をお助けする筈では?」
「あぁそぅいや‥別に、明日でもいんじゃねぇ?」
「良くないよっもうっ!可哀想でしょっ?」
「こればっかりはセリア戻んねぇと」
「むぅ。ハダスのみで置いておくと人間共と諍いを起こすやも知れぬな」
「時差は殆ど無ぃし、猫ちゃん日暮れまで遊んできたりしなぃかなぁ」
「きゅい★」
その時、書斎の卓袱台の上にオレンジの扉が現れた。
「あれぇ?」
「帰ってきましたー♪」
「何処に出てんだ何処に」
セリアが飛び出してきた。
「緊急事態ー!!」
「どう為されたのですか」
「人間の兵隊が、森のお城に攻めてきた!たまると、くろたんが引き止めてるけど‥とにかく来てー!」
「私が行こう」
青竜ザイトが立ち上がる。
「放っておけば皆殺しだ。人間共がな」
「わたしも行きますー!」
「私が行くっ★」
「お願い致しますね。リシェルさん、ニノンさん」
「…本当は、私も行きたいですけど★」
「貴様!号令を頼む!」
「こんな形でかよ‥解った。プロジェクト・アンジェラーム発動!これより実行する!頼むぜ、みんな‥真実の知識に拠る本当の愛とは如何なるものかって所を、彼等に、見せてやってくれ」
「応!任せておけ★」
「見せてあげますー♪」
「行ってきまーすっ☆」
「早く、みんにゃ入って!!つにゃげたまんまだから!」
ザイトと、リシェルとニノン‥そしてセリアは、大急ぎで扉に入り、数秒後扉は消えた。
「…まだお昼前ですね」
「"向こう"にも、食い物位あるだろう」
「それに、森の近くのあの街でしたら」
「あの兵士さん達も、居る訳だからぁ」
「おぅ彼等は理解者だ。戦闘の心配は無ぇだろうな」
「問題は。其の人間共の発言力が、どの程度か、と言う所ではあるが」
「ザイト先輩なら、人間達を説得できるさ♪ハダス先輩と違ってな」
「エシェル。‥だが、確かに★」
「報告待ちではあるが、次回の出立の順番を決めるとするか」
「そうですね」
「わたしも行きたぃ☆」
「きゅい♪」
「…それじゃ、あみだくじでも作りましょう☆」
「ナンシュアさぁん★報告待ちですってばぁ」
「いや良いかも知れぬ。外れも幾つか用意するか♪」
「貴方方は、もう‥」
和やかに、相談が始まった。緊張感も悲愴感も無いのは互いに信頼し合っているからだ。異種族同士の信頼。
"あの世界"でも、きっと。
『つづく』
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