【あんじぇらーむ】第2話:『ぴかぴかの鎧』後編
by MARCY
「何故なら、最も良い言葉の前には、それに至らぬ全ての言葉は、悉く虚しくなるからだ。
真理が、それ以外の全ての言葉の上に挙げられるのは当然の事だからだ。
だから我は、我々は、この言葉に従うのだ。
人間よ、あなた方は、どうだろうか。
我々と同じく、此れを受け入れ、従う者となるだろうか。
それとも此れを拒み、此れに至らぬ言葉に取りつく者となるのだろうか」
「ぐうぅ‥」
人間達は、一言も言い返せずに唸るだけでした。
「この方々の隊長は?」
「先程、我が山の向こうへ吹き飛ばした」
「連れてきましょう」
フロレットが山の向こうへ飛んでいきました。
直ぐに、左手で彼の襟首を掴み、戻ってきました。
「凄まじい力だな」
「力天使だ。あの位の事は造作もなかろう‥」
人間達が、ひそひそ話し合っています。
「疲れてるみたぃね。みんな回復してぁげる☆」
リモンが進み出ました。
「馬鹿な‥此処に居る全員をだと?」
「えへへ♪ルディアちゃん、お願い☆しょうめーしー、じす、ぷらーせ‥」
「OKなの、えくすてんど!」
ルディアが舞い降りてきて、
リモンの頭を抱えます。
「ハーヴェスト・ムーン!!」
リモンが両手を広げて叫ぶと皆の足元から、白く輝く巨大な月が現れました。
それは、ぱりぱり音を立てながら1000人位居る兵士を皆、セリア達も皆、包み込んでしまいました。
「おお、おお‥」
「何という事か」
兵士達が次々に立ち上がりました。
体中に力が漲ってきます。先頭に居た兵士が、リモンに尋ねました。
「君は、君達は、何故この様な事をするのか」
「我々を殺した方が、君達には都合が良かろう」
「違ぅんだなぁ、逆に都合が悪ぃの。何故って、わたし達の目的はぁ、」
リモンはセリアの方に振り向いて軽く睨みました。
(猫ちゃん、これね?わたしを呼んできた理由)
(にひひひ、そお☆いっちょ宜しくにゃ)
(もぉ!受けなかったら、どぅするのぉ?)
リモンは軽く咳払いして、続けました。
「わたしは、お説教とか苦手だから、詩にするね。どんな目的で、こんな事してるのか‥あなた達にも伝わるといぃな♪
題名はぁ、春爛漫☆」
リモンが語り始めました。
『大きなひとも小さなひとも皆、一緒に座ってる
角があるひと翼があるひと角も翼もないひとも、
同じ場所に座ってる
皆、同じ処に座って桜の花を見上げてる‥
夢を見た
芝生に座って桜の花を見上げてた
ひらひら落ちる花びらと
真っ青な空、真っ白な雲
色んなひとが周りに座っておんなじ空を見上げてた
水に住むひとも水に住めなぃひとも
空を飛ぶひとも飛べなぃひとも
目覚めたら桜は無くて
周りにも誰も居なかった
手を繋ごぅ‥
ねぇ、いつか、
もしかしたら、こぅいぅ時が来るのかな
花を綺麗と思ぅひとなら
誰も争わなぃ、誰も邪魔にしなぃ、
みんな同じ空を見上げて
手を繋ごぅ
真っ青な空とピンクの花と
真っ白な雲を眺めて
そしていつか、
手を繋ごぅ
辛い言葉と悲しい言葉が
この空の下から無くなるよぅに』
人間達は皆、黙ってしまいました。
「ねぇ、わたし達の言葉、あなた達の王様に伝えてね?わたし達、本当に、これだけが目的なの♪」
リモンがニッコリ笑って言いました。
「‥解った。伝えよう。我々は王の決定を覆す事は出来ぬが、王の命令に逆らう事は出来ぬが。
確かに君の言葉。君達の言葉を、我々の王に伝える」
兵士達の隊長は、それだけ言うと、部下の兵士達に号令を掛けました。
「‥撤収する!廻れ、右!全隊‥前進!」
兵士達は綺麗に整列して、街へ向かって行進を始めました。
一番しんがりを歩く隊長が振り向きました。
「‥フッ★」
ニコッと笑いました。
そして前を向いて、そのまま1度も振り向かずに歩いていきました。
「帰ってくにゃ」
「なあなあ、万歳って言っていいか!?」
「…ダメです★我慢して下さい」
「ちえっ♪」
「さて、次は城へ向かわねばな」
「重ね重ね、御負担を掛ける‥誠にすまぬ」
「なに言ってんだよ、気にすんなって♪」
「わたくし達も明日には器具や道具を揃えて、」
「ノームやドワーフの方々にも、協力を願えませんかな」
「ソレはタマルちゃんに、お願いするの☆」
「ねぇ、そろそろわたし、帰んなぃと‥」
「にゃっ、忘れてた♪」
「もぉ、猫ちゃん★」
さあ、お仕事は、これからです。
皆がまた、それぞれに別れて行動を開始しました。
多分もう、いえきっと、人間達がオークの城へ、攻めてくる事は無いでしょう‥
そして誰も居なくなった広場には、濃いピンクの桜の花びらが、相変わらず、ひらひらと舞っていました。
『つづく』
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