【あんじぇらーむ】第4話:『耳長族に会った日』中編2

     by MARCY






「ダークエルフだと?あれ等は君等との違いは肌の色だけで内面は変わらぬと聞いて居るがな」
「誰が言ったのだ、その様な事をっ!」
「全く違う、あれ等は‥」
別のエルフが、弓を構えたままで言いました。

「あれ等は、その身に、その心に魂に、暗き闇を受け入れ身を黒く染めた我々エルフ族の汚点だ!」
「もはや同族で等ある筈が無い、姿が似ているだけでも汚らわしい!」
「フン‥随分な言われようだな」
ちらちらした空気‥その塊が止まりました。
身隠しの術を次々に解いてダークエルフ達が姿を現しました。

その姿は。確かに肌の色の他はエルフ達にそっくりです
‥でもエルフ達は布の服に木の弓を持ってるだけですがダークエルフ達は簡素な作りですが金属製の鎧を着てて、細身の剣を持っています。

「貴様等がダークエルフか」
「これはこれは。竜族と天使‥エンジェル族が共に行動しているとは」
「こんな森に何をしに来たのだ?年寄りの様に脆弱な下らぬ者しか住んでいない下らぬ森に」
「貴様等っ!!」
「ハハハハ、まぁ怒るな★此奴等の言う事は確かに間違っては居らぬ」
ハダスは愉快そうに言いました。

「昨日、我等は此の森に此奴等を訪ねて来たのだ。此の世界の全ての種族の調和と平安とを実現する足しには成るか、と思ってな。しかしけんもほろろに追い返された」
ハダスは溜め息を吐いて続けました。
「然し引き下がる訳にも行かぬ。其処で恥を忍んで今日もこうして来てやったのだが。貴様等が先に居ったという訳だ」

「ハダスさんが喋るとっ、何か一々角が立ちそうなんだよねっ★」
「…あの、あなた方は何をしにいらしたんですか?」
「我々は水を汲みに来ただけだ」
「そしたらいきなり、この臆病者共が矢を射かけて来たのだ」
「ソレじゃ悪いのはエルフちゃん達の方なの」
ルディアが言いました。

「ナンにも悪い事してナイのに攻撃スルなんて。ソレじゃゴロつきと同じなの」
「さっき言った筈だが?この者達はエルフ族の名を汚し、闇の者として生きる恥知らず共だ。我々の神を軽んじ、汚らわしい者達と交わり、森を守る本来の役割を捨て、俗世の欲に生きる。存在自体が悪なのだ」
「ソンな悪者には見えナイの‥お水汲みに来ただけって言ったの」
「‥君、不思議な妖精よ。そいつ等には何を言っても無駄だ」
ダークエルフの1人が言いました。

「君が賢き者ならば、昨日の今日で解っただろう?この者達は石頭なのでは無い。知識が足りぬだけなのだ。
‥非協力的なのではない。ただ生れ付き臆病で、大した能力も持っては居らぬだけなのだ」
「ソレもチョット、言い過ぎな気がスルの★」
「いいや、これが事実だ」
今度は別のダークエルフが言いました。

「身も心も脆弱である故、他者との接触を極度に恐れ、恐れの故に。身に、心に、受け入れるべき知識も力も拒絶する」
「そして貴様等が受け入れた知識と力は、最も忌み嫌うべき闇の物ではないか。類は類を以て集まると言うが貴様等が選んだ、その闇こそが。それ故の黒き肌こそが。貴様等の本質を在るがままに示しているではないか」
「我々の名を汚し、森を侵し水を汲みに来ただけだと?森の奥には女達も子供達も居る。貴様等が彼女等をも侵し、欲しいままに狼藉と凌辱とを行う事無く、ただ水を汲んで帰るだけだと言っても、我々が信じるだろうか?」
「フン。貴様等の頭の中には、その様な非道で破廉恥な事しか無いのか。まあ、それこそが貴様等の本質なのであろうがな」

「チョットチョット‥コレやばい感じなの」
「まぁ、一触即発といった感じではあるな」
「‥どうしましょう?このままじゃ喧嘩じゃ済まないです」

ルディア達の心配を余所に白と黒のエルフ達は言い争いを続けます。

「我々は貴様等の様に下品な金属の武具も防具も着けぬ。然し我々には、もはや貴様等には望み得ぬ神の御加護が在る!!」
「貴様等の姿を見た以上。この森を知られた以上。ただの1名も生かして返す訳には行かぬ!!」
「ほう‥面白い。我々は人数だけは貴様等の半分も居ないが。然し貴様等程度の者が相手なら充分過ぎる」
「水の補給を終えたら黙って立ち去るつもりではあったが。そうも行かなくなった。貴様等が悪いのだぞ、我々に不当な真似をした貴様等が」
「見るか。貴様等が恐れの故に拒絶した闇の力。
ダークエルフの力を‥!!」

「あの、お取り込み中、申し訳ナイんだけど‥」
「妖精君、君達も、下がっていて貰いたい。君達の協力が得られれば確かに有り難くは有るが」
「我々にもダークエルフの誇りがある。頭数に多少の差は有るが何、この位何も大した事では無い」

白い方のエルフも言います。
「我々からも頼む。此れは我々エルフの問題なのだ。恥を晒す事も広める事も望ましくない‥早々に森から立ち去り、そして我々の事は忘れて貰いたい」
「えーっとお‥」

ルディアはセリアの方に振り向きました。
セリアはウインクして、ルディアを手招きしました。

「?‥‥!?‥‥★」
ルディアはセリアの近くに飛んでいきました。
「仕方ナイの、解ったの★」
白と黒のエルフ達は、互いに睨み合っています‥

(るりあ、拡大お願い。一遍に全員の動き止めちゃうから)
(任しとくの♪ふれー、とぅふれーる‥)
(まぁ我らが関わった者は唯1名も死なせる訳には行かぬ)
(私たちで決めた事だもんっ、守んないとねっ☆)

セリア達は、エルフ達からゆっくり離れて後ろに下がりました。
ルディアの姿がぼんやり霞んで見えなくなって、

「あっ!」
空を指差して叫ぶセリア。
「‥何をしている?早々に立ち去ってくれと頼んだ筈だが」
「何だ、その子供騙しな真似は。我々の戦いの邪魔はしないで貰おう」
だけどセリアはエルフ達を無視して、体全体で大きな大きな輪っかを、空中に描きました。

「よっ、と。おしまい♪」
「何の真似だ」
「にひひひ★おまえらの誇りとかには悪いけど、誰ひとり、ここで死にゃせる訳には行かにゃい。みんにゃに、おとにゃしくして貰うからね♪」
「ほう。此れは面白い、見せて貰おうか」
「見してあげる★りあらいず!ぎんいろの風ぇっ!」

セリアがぎんいろ、と言った瞬間、大きな輪っかが銀色に輝いて、風、と言うのと同時に、きらきら光る銀色の光が白と黒のエルフ達に向かって、勢い良く吹き付けました。

「しまっ‥!」
「むぅっ、謀っ‥!」
誰も逃げられませんでした‥エルフ達は姿勢も表情もそのままに、その場で静止しました。

「よーし、おっけい!こいつら白いのと黒いのと分けちゃえ!」
「フッ★やるな馬鹿猫」
「くろたんっ!こんにゃ時まで、あたしの事ばか猫って呼ぶにゃっ!に゛ゃう!」
「喧嘩してる場合じゃないよっ、早いとこ分けちゃおうよっ!」
「は〜い☆」
「…それで私たちは、エルフさん達の間に立ちましょう。喧嘩できないように☆」
「そうだな。ともかく我等が関わって居っても居らずとも、此の様な理由で死ぬ者が出る事は許されぬ」
「アタシも腕力無いけど、お手伝いスルの♪」
皆は大急ぎで、エルフ達を右と左、肌の白いひとと黒いひととに分けました。

数分後‥エルフ達は、やっと動けるようになりました。皆が怒った顔をしています。

「余計な手出しはしないで欲しいと言った筈だが」
白いエルフ達がセリア達を睨みました。
「それに何故我々の方が囲まれているのだ?立場の優劣、状況に於ける善悪の差異については、把握していると思っていたが」
黒い方のエルフ達もセリア達を睨みました。

「フッ、解って居ろう?貴様等は明らかに戦闘に特化した者共だ。装備にも差がある故、此の耳長族共など相手にもならぬ」
「弓は距離をおかねば何の威力も無い。身隠しにて接近し切りつけるのが其方等の戦法の様だが、此れでは半刻も持たずに此の白い肌の諸君は全滅するだろう。
君等は其の後、何もせずに水を汲んで帰るのだろうが然し。戦士を失った此の森の奥に住む同胞の弱き者達はどうなるだろうか」
「喧嘩を止める時はっ、力が強い方を押さえないとねっそでしょっ♪」
「むっ‥むう」
「フッ♪なる程、納得した」

「良い事と悪い事‥それによって優れた事と劣ってる事‥皆さんは、それが解るんですよね?それなのにどうして闇の力を選んだんですか?」
イースが怖ず怖ずと尋ねました。

「それを聞くか、ユニコーンよ」
ダークエルフが答えました。
「我々は闇を『選んだ』訳では無い。ただ、此の者達の様に世界の有り様に日和見の態度をとり、己の存続のみに縋る有様に嫌気がさし力を求めただけだ‥
最も優れた精神を持つ者として。あらゆる種族の先陣を切って世の力無き者達、同族の力弱き者達を守らんと願い‥」
「敢えて森の暮らしを捨て更なる力の、知識の、現れと確証とを探した。然し力と呼べるような物は見ての通り。魔の者、そして人間から発した『黒き闇の力』の他は見つからなかった」

「其の通り‥志だけは認めよう。然し此の者達は最も忌み嫌うべき人間の。そればかりか魔の者共とまで接触し、繋がりを持ったのだ‥もはや同族どころか、元同族であった事さえも、認める訳には行かぬ」
「ま〜押さえて♪黒い方のおまえらに聞くけど、それからどう?闇のにゃんとかに、まだ自分達が支配されてるって思う?」
セリアが楽しそうに聞きました。

「むっ‥?」
「闇の力とか使える?衝動とかある?気持ちが暗くて訳解んにゃい時とか、まだ時々あったりする?」
「何故それを聞く」
「先に答えて★」
ダークエルフは溜め息を吐いて言いました。

「無い。全く無い。君達も知っていると思うが40日程前の、あの驚愕の日。あの日以来、干渉も衝動も、途切れてしまった」
「そうで無ければ此の者共など。魔槍術でとうに全滅させているのだが。術といえば元々持っていた身隠し程度の物しか使えなくなった‥」
「それでも此の者共相手では負ける気がせぬがな。
さあ、君の番だ。何故此の事を知っていた様な言い方をした?」

「にゃぜってゆわれても。言っていいかにゃ?」
「フン、構わぬだろう★」
ハダスはニヤリと笑いました。
「そんじゃ先ず‥闇のにゃんとかって奴は2人居た。片っぽは、今は来てにゃい奴に完全に滅ぼされた。
もう片っぽは、闇の心を全部消されて、ある場所で、お勉強してる♪良い奴ににゃって、この世界に帰ってくる為に」

「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
エルフ達は、白い方も黒い方も無言でセリアを見つめます。

「もう2度と、暗い気持ちが世界を支配する事がにゃい様に。あたし達は、その‥お膳立てだっけ?そのためのお仕事してるの」
「貴様等は最も優れた精神と言って居ったが、誰でも世に在る者は、何かの事で自分等が最も上だと思って居る。斯く言う我も、そうであるがな★」
「だから皆が、1番自慢にしてる事で協力しあって暮らせる世界になるように、たまる達働いてるんだけど‥無理矢理はいけないし、誰も死んだり怪我しちゃいけないし、」
「アナタ達の説得にシテも、何遍断られても通うしかナイ。正直アタシは、ぱっぱと戦って勝った方の言う事聞く〜♪って感じにシタ方が楽でイイんだけど★」
「ルディア殿それではいかんだろう★そう言う訳だ、君等の確執は知らぬでも無かったが、然し此れから先は。もはやそうも言って居れぬ。
此の世界のあらゆる種族の心在る者達の調和と和平とを実現し。2度と忌むべき闇の者が台頭してくる事が無い様に。
揺るがぬ信頼と打算無き助力とを、以て互いの確認とする。完全なる態勢を築き上げる必要があるのだ」

「だけど断られた★にゃんでって‥聞いたから聞かにゃいけど、それでも、おまえらの協力は必要。いいってゆうまで、あたし達、帰んにゃいからね」

「‥‥‥‥」
白いエルフ達は黙っています
「‥あの日、」
黒いエルフが口を開きました

「あの驚愕の日。下等な者や魔の者は奇跡の日と呼んでいる様だが。あれ等の事を計らったのは、此の地の全ての神々と、‥僅か数名の魔の者達と聞いた」
「尤も我々は、あれ等を神と認めては居ないが。然し実行に携わった魔の者達というのが、どうしても気に掛かる。聞こう。君達はあの日何処に居て何をしていたのだ?」
「先の我々を『止めた』制約の、静止の術。金縛りでも地縛りでもない、あの様な術を使う君達は何者だ」
「全てを知っている、と言う口振りだったな」
「返答次第では‥我々は、君達と同盟とやらを結んでもいい」

「にゃに者ってゆわれても困っちゃうんだけど」
「お姉ちゃん、これはちゃんと言おうよ」
「…そですね。信頼を得る為にも、きちんと本当の事を言うべきです」
「ふ〜む。わかった、にゃにから言う?あたし達の事?それとも、めろでぃらいんの事、最初っから?」

「メロディ‥?何だそれは」
その時。森の上、皆の上に、金色と緑色の強い光が射しました。

「!おお、神よ!」
「偉大なる、我々の神よ!」
白いエルフ達が弾かれた様に飛び退いて、全員が胸に手を当てて地面に片膝を着いて、深く頭を下げました。

「あ〜緑のひとだ〜!こんにちは〜☆」
タマルが嬉しそうに手を振りました。



『つづく』

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