第17話『炎王』
(by カイト)
虹の袂…
きらきら降りしきる雨、絶えず幻の雨が降る不思議な丘
神像の涙にぬれる丘に…
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王立歌劇団(ウルの国救世主伝説)
それは、誉れなき物語
それは、栄光なき戦い
それは、勝利なき戦場
『守るために滅ぼすのだ。影横たわるウルの国に』
王劇の戦士が、ウルに舞う!いま、新たなる戦いの幕が開く…
それは、秘められた絆の物語
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かつて、光と闇は繋がっていた。やがて好戦的な闇の者は次第に力を得て、光の者たちに兆戦するようになる
光と闇は激しく争い、最後の戦いで光の者は7つの秘石の力を借りて闇との繋がりを閉ざした。光の者はウルの丘に7体の神像を建立し秘石を納める
それ以後、秘石はディ-ン王に守られ、この地に光は絶えなかった
いつしか、7体の神像が立つ丘を「虹の袂」と呼ぶようになる
ところが、呪術集団の企てにより虹の袂の神像は最後の1体となってしまう…
魔導実験の末、自らが生み出した魔物の脅威にさらされ、地上に炎の雨を降らせた元凶、呪術集団。丘の虹が消えた今、かれらは魔なる異空間をも作り出してしまう…
街に炎が降る日、呪術集団の長(以下魔導師)はアルトと会っていた。最初の出会いはアルトがアサシン時代、二度目の再会となる…
魔導師「探し物は見つかったかの?ククク」
アルト「貴様の方から会いに来るとは…いい機会だ、貴様にはこのアルトがふさわしい死を与えてやろう」
魔導師「相変わらず物騒な奴だ。どうだ、取引せぬか?」
アルト「必要ない。おまえが最後に会った男になってやるのだから」
そう言って魔導師の喉元に短剣を突きつけ
魔導師「ククク…好きにするがいい。だが貴様の探し物は二度と戻らぬ。よく考えることだ…」
…無言の時が流れる。アルトの過去になにが?探し物とは!?
アルト「…タ-ゲットは」(突き立てていた短剣を懐に納める
極秘調査の甲斐無く手がかりすら得られていないアルトは、街に炎が降る日、執念を燃やす選択をしたのだ
そして、ウルの影との戦いに…魔導師「エア-トリッシュ(アルトのタ-ゲットで且つランが救護した黄緑色の少女)をめぐって、影と零が交差したか…ククク」
が、突如茂みの中から…
ロン「じじぃー、紙ー」
ギョッ!とする魔導師
突然の声に驚いたわけではない。人並みはずれた気配の消し方に恐れおじ、発せられた闘神のオ-ラに恐怖したのだ
魔導師「…暗殺者の中の暗殺者か…。ま、まさか!」
ロン「出物腫れ物所嫌わず!ってな♪」
魔導師「やはりおまえか。…手でふいたな」
この男の名はロン。エルフ族でも珍しい水の中でも呼吸することが可能なアクアティック・エルフだ。我流の戦闘スタイルを持つ王立歌劇団・秘密部隊ウル組「影の守護者」のひとりで、王劇の中でもっとも奔放苛烈で最強の男とされた人物である
相手に「お前ら、女はいるのか?」と尋ね、
女のいない野郎には容赦しない。最も愛深きお方…(?)
ロン「ぃよう。闇との戦い以来か」
魔導師「…わ、忘れたわ」
闘神の化身とも呼ぶべきロンを前にして、魔導師は己の死を覚悟するほかなかった。かつて闇の集団を一人で壊滅寸前までに追い込んだことで誰もが知っている人物だからだ。当時は影の守護者ではなく、ただ己の技を追い求める血に飢えた狼だったらしい
ロン「…そう死に急ぐな、じじぃ」(大笑
そう言い残し、呪術集団討伐の絶好の機会を尻目に、さっさと王劇に向かってしまうロンであった
歌劇団では歌舞伎を担当しており、篤い人望、広い人脈、そして高い知性を持ち自由気ままな性格。普段の格好及び行動は常人とはかけ離れているため傾奇者(かぶきもの)と呼ばれている。武勇に優れているだけでなくエルフ族きっての風流人である
魔導師「ククク…相変わらず喰えぬ奴よ。しかし少々うるさいのが帰ってきたの…しばらく魔宮に身を隠すとしよう」
丘の虹は消えても神像の力まで消滅したわけではないので魔導師の作り出した魔宮はまだ不完全だ。だが、身を隠すには絶好の場所となる異次元世界なのである
ところが、魔導師の意に反して、ねじれるように歪みはじめた魔宮!
魔導師「なんだ?…ば、ばかな!なぜ奴らがここにいる!?…いやまてよ、うまくすれば、うるさい影と厄介な零を一掃できるかもしれぬ…ククク。見物だな」
魔宮の中は、煮えたぎったタ-ルの池が湧き上がり、そこに呪術集団が生み出した魔物達が放り込まれていた。地獄の第八階層第五の壕にいるはずの堕天使が鉤ヅメ槍で魔物共を苦しめているのだ。かれらは魔宮をジェネレ-タにし、地獄より逆流してきた闇の悪魔だ
バルバリシア「ここを抜けなくては…」
そう言いながら、魔物を一匹ふん捕まえると魔宮の外側に向けてぶん投げた。すると、放電し一瞬で灰になる
神像の力だ!魔宮の外へは抜けられぬ結界が張られている!!
幸い、闇はまだ閉ざされている…
ルビカンテ「慌てるな。奴らをここへ導けばよい。奴らは必ずここへ来る…秘石と共に…」(不適な笑い
王劇宿舎にて…
ケイが神無のもとへ向かおうとしたその時、
〈ドドドドドッ!グワンッ!〉
地響きとともに大きな揺れが宿舎を襲った
ケイ「な、なに?!」
が、ケイには事の真相がすぐに理解できた
ケイ「この恐ろしい気…夢で感じたものと同じ。そ、そんな…」
急いで広場に出る。そこで目にするものは…
悪魔だ!大きくうねりのある角、耳元まで裂けた口…悪魔の姿を連想する時、誰もが思い描くであろう恐ろしい形相の悪魔が天を衝く巨大な姿で現れたのだ
鉤ヅメ槍を突き上げ身を包んでいたマントのような羽を一気にひろげ、真っ赤な皮膚をあらわにした
羽の風圧で木が薙ぎ倒され、建物が砕け散り、人々が吹き飛ぶ…
…空に巻き上げられ、なすすべを失った人々が地表に叩きつけられていく様は、まさに地獄!
ルビカンテ「我が名はルビカンテ。炎王ルビカンテ」
雷鳴のような声が響き渡る
ケイはとっさに空間飛躍(テレポ-ト)を数回繰り返すと、ルビカンテの額に渾身のエネルギ-ランスをぶち込む。が、様子がおかしい…
ケイ「…幻影!?」(手応えがない
次の瞬間、振りおろされたルビカンテの巨大な爪がケイを襲う
ケイ「アァァァ-」(かわせなかった
だがよく見ると、巨大な爪だけがケイの背中に深々と刺さっている
そう、それは神無が一撃で切断したルビカンテの爪…神無の攻撃がなければ、ケイの体はとっくに貫かれ無惨に引き裂かれていただろう
神無「急に飛び出すから…(吐血)」(神無推参!
いつもの動きなら刺さる前に防げたはず、だがケイとの戦いで受けた神無の傷はまだ癒えていなかった。手負の神無、ケイの窮地を救う
ルビカンテ「お前…」
ルビカンテの巨体が空に溶けるように消える…同時にケイに刺さっていた爪も消えた
神無「…守る…温かい…不思議な感覚…」
ケイのものとも神無のものとも区別しがたい鮮血が、神無の足を伝わりしたたり落ちる
神無は空中浮揚したまま、傷ついたケイを抱きかかえながら遠くの空を見つめるのだった
零との戦いでウル組は痛手を負う。忍び寄る不吉な魔の手にかかりケイまでも倒れた。国民の盾であり続けるウル組・影の守護者が危機に遭遇している。そしてこの美しいウルの街に再び闇が落ちようとしていた
今、遠くの地より王劇を目指す劇団員がいる。かれらが加われば守りの桁が上がる!
ロン、そして他にも…ひとりは近代文明とは異なる英知を併せ持つ者、もうひとりは正義感の強い情熱家、そしてもうひとりは世界を旅する者。かれらはいずれも王劇の劇団員。一流のレスキュ-部隊にして一騎当千のつわものだ!
ウルの街の命運を賭けた闘いに、王劇戦士・影の守護者が一堂に集う!!
<続く>
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