《Dissonance》#0
(by 戯言士:皐月)

ザウエル「行くのですか?」
部屋から出ようとしていた青年…アルトに声をかける
アルト「はい。また暫らく空けますから…」
旅の荷物を肩に掛け直しながら返事をする
ザウエル「こちらの事は気にせずに。あの方に宜しく」
アルト「ありがとう。それでは」
と、そこへ憐が走ってきた
憐「アルト、出掛けるのか?暫し待っておれ妾も行く」
アルト「ごめん」
憐「…あそこ、か?」
行き先を察したのか言葉に勢いがなくなる
アルト「…ごめん」

―――アルトが去った後…
憐「ふん。あんなに神妙にされたら無理矢理付いて行けんではないか…」
ザウエル「彼、本当はずっとあそこに居たいのかも知れませんね」
憐「過ぎた事を云うても仕方ない。お主の判断は正しかった…そう思おう」

―――一方アルトは街外れの花屋に向かっていた。小さいが異国の珍しい植物を取り扱っている店である。…花屋の前には先客がいた。その手には丁度アルトが買おうとしていた花の花束がある
神無「まさか、私まで部外者扱いはしないでしょうね?」
アルトが反論するより早く言葉を重ねる
神無「歌劇団の食事はシルフィアさんにお願いしてきました」
…要するに異議は受け付けない、と言う事か…諦めてもう一つの疑問を投げ掛ける
アルト「どうしてターマラちゃんが?」
神無「自分の胸にお聞き下さい。彼女にも知る権利があると思いますけど」
声が少し怒っている。それを感じたのかターマラが口を開く
ターマラ「…ぁの…ご迷惑でしょうから…いい…です」
アルト「いや、神無さんの言う通りだね。一緒に行こう」
ターマラ「…ぁ…はい。でも…どちらに?」
アルト「僕が昔お世話になった人のところ…ターマラちゃんに聞いてほしい事があるから」
その声は少し淋しそうに聞こえた

―――街をでて西へ進み、幾つかの国境を越えて歩くこと数日…ヒンノムの谷へ差し掛かる。古来より幼児が生け贄として捧げられた場であり、後に汚物や動物、罪人の死骸の焼却場となった事から凄まじい瘴気の為に人間はおろか闇に属する生物すら近付くことが出来なくなった地域である。その死の気配は名立たる英雄たちですら近付けない(近付いた所で強力な魔物も瘴気を発する《モノ》もないので近付かない、と言った方が正確か…)
その谷の比較的瘴気の薄い地点を神無の結界に護られながら進む。…一瞬耳鳴りのような音がしたかと思うと結界を通して肌に感じていた悪寒が綺麗に消え失せる。さらに気付くと森の中を歩いていた
神無「遁甲結界はまだ機能しているみたいですね」
ターマラ「?」
疑問符を浮かべるターマラにアルトが答える
アルト「この森の周りには特殊な結界が張ってあってね、さっきの瘴気の谷ともう一つ、強力な魔物の徘徊する森からでないと入れなくなってるんだ。当然、瘴気や魔物は入ってこれないようにもできてる」
やがて視界が開けると、花壇と小さな一軒家が見えた。アルトを先頭に一軒家に入る
アルト「ただいま…」
今までターマラが聞いた中でいちばん優しい声でアルトは呟いた…

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